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67.許されないこと

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「何故、メルーナ嬢を監禁したのか、話してもらおうか?」
「……僕はアヴェルド殿下とのことを見て見ぬふりをしていた。それをお前達のように、関わっていたと考える者がいる。メルーナ嬢だって、そうだったかもしれない」
「彼女が事実を知っていると思ったのか?」
「ああ、そうだとも。そうでなければ、どうして彼女が僕の元を訪ねて来る? 他に理由なんてない。メルーナ嬢は、僕を脅しに来たんだ」

 イルドラ殿下の質問に、サジェードはすらすらと答えていた。
 先程のことも含めて、彼は嘘などをついているという訳でもなさそうだ。素直に話を応じるつもりは、あるらしい。

「メルーナ嬢の目的は、先程聞いておいた。彼女はお前の父親と妹を悼むためにここに来たんだ」
「……なんだって?」
「知らなかったのか? 思い込みが激し過ぎたようだな」

 イルドラ殿下の言葉に、サジェードは目を丸めていた。
 彼はメルーナ嬢と、あまり対話していないようだ。というか、ここを訪ねた彼女は事情くらい話すと思うのだが、どうして知らないのだろうか。
 もしかしたら彼の中では、メルーナ嬢が自分を脅しに来たという結論が固まっていたのかもしれない。他のことを聞いても、耳に入って来なかったのではないだろうか。

「要するに、お前は勘違いをしてメルーナ嬢を監禁していた訳か」
「そ、そんな馬鹿な、わざわざ父上とシャルメラを悼みに来るなんて……」
「彼女は優しい女性だったのさ。そのせいでこんなことになるなんて、あってはならないことだ」

 イルドラ殿下は、サジェードのことを睨みつけていた。
 私もウォーラン殿下も、気持ちは同じだ。サジェードは身勝手な理由で、メルーナ嬢にひどいことをした。それを私達は、許すつもりなどはない。

「……突然、訪ねて来る方が悪いんじゃないか」
「……何?」
「父上とシャルメラを悼みに来ただって、いきなりそんなことのために訪ねて来るなんて、無礼な話だ」

 イルドラ殿下の言葉を聞いたサジェードは、ゆっくりと言葉を呟き始めた。
 彼の目は据わっている。その表情に、私は息を呑む。どうやら彼は、追い詰められて少しおかしくなっているらしい。

「僕は悪くない!」
「サジェード、お前……」
「あの女が悪いんだ! 全てはあの女が僕を嵌めるために企てたことだ!」

 サジェードは激しい身振り手振りを交えて、叫び始めた。
 彼が追い詰められているということは、理解することができる。それでおかしくなったと、頭ではわかっている。
 だがそれでも、私はサジェードに対して激しい怒りを覚えていた。彼が発する言葉の内容は、身勝手極まりないものだ。一体どの口で、そんなことが言えるのだろうか。
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