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58.一つの可能性
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私とイルドラ殿下は、メルーナ嬢のことについて話し合っていた。
オルテッド殿下からの情報から考えて、彼女は前モルダン男爵とシャルメラ嬢のお墓参りに行ったと思われる。
そこで彼女は、何かしらによって害された。それにオーバル子爵家ナーゼルの関与は、恐らくない。それが今わかっていることだ。
「……イルドラ殿下、ある一つの可能性があると思うんです」
「可能性?」
「メルーナ嬢は、モルダン男爵家のお墓参りに行った訳ですよね? その場合、やはりモルダン男爵家の屋敷を訪ねることになるのではないでしょうか? こっそり行くとも、考えにくいですし、話は通すはずです」
「まあ、それはそうかもしれないな……」
私は、ある一つの可能性に思い至っていた。
アヴェルド殿下の事件に関わっていたもう一つの家、モルダン男爵家のことだ。
私は、その男爵家のことをそこまで知っている訳ではない。モルダン男爵やシャルメラ嬢と、顔を合わせたこともないくらいだ。
「アヴェルド殿下の事件の始まりは、そもそもシャルメラ嬢です。彼女が関係を持ったことから、全てが始まりました。それには、モルダン男爵も関わっていた。というよりも、彼が首謀者ともいえなくはありません」
「ああ、そういうことらしいな」
「モルダン男爵家には、男子もいるはずですよね? シャルメラ嬢がマルシド様に嫁ぐという話でしたから、家を継ぐ男子がいると思うのですが……」
「確かに、モルダン男爵家には男子がいる。サジェードという男だ。何れモルダン男爵を継ぐはずだ」
「その方は事実を知らなかったのでしょうか?」
私の言葉に、イルドラ殿下は目を丸めた。
その表情は、すぐに強張る。私が何を考えているのか、わかったのだろう。そのことについて、考え始めたようだ。
「……なるほど、サジェードについては確かによくわかっていない。言われてみれば、知っていたという可能性もあるな」
「ええ、オーバル子爵は、単純にそのことを知らなかったのかもしれません。ただ、そんな彼の元に事件の関係者であるメルーナ嬢が訪ねたとしたら」
「そうか。サジェードからしてみれば、メルーナ嬢が自分のことを糾弾――いや、脅しに来たとさえ思うかもしれないか」
「その可能性もあると思うんです」
メルーナ嬢を害したのは、モルダン男爵家のサジェードである。
私とイルドラ殿下は、そのような予測を立てた。それが当たっているかどうかはわからない。
ただ、今はともかく行動するべき時だ。モルダン男爵家を調べてみるとしよう。
オルテッド殿下からの情報から考えて、彼女は前モルダン男爵とシャルメラ嬢のお墓参りに行ったと思われる。
そこで彼女は、何かしらによって害された。それにオーバル子爵家ナーゼルの関与は、恐らくない。それが今わかっていることだ。
「……イルドラ殿下、ある一つの可能性があると思うんです」
「可能性?」
「メルーナ嬢は、モルダン男爵家のお墓参りに行った訳ですよね? その場合、やはりモルダン男爵家の屋敷を訪ねることになるのではないでしょうか? こっそり行くとも、考えにくいですし、話は通すはずです」
「まあ、それはそうかもしれないな……」
私は、ある一つの可能性に思い至っていた。
アヴェルド殿下の事件に関わっていたもう一つの家、モルダン男爵家のことだ。
私は、その男爵家のことをそこまで知っている訳ではない。モルダン男爵やシャルメラ嬢と、顔を合わせたこともないくらいだ。
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「ああ、そういうことらしいな」
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「確かに、モルダン男爵家には男子がいる。サジェードという男だ。何れモルダン男爵を継ぐはずだ」
「その方は事実を知らなかったのでしょうか?」
私の言葉に、イルドラ殿下は目を丸めた。
その表情は、すぐに強張る。私が何を考えているのか、わかったのだろう。そのことについて、考え始めたようだ。
「……なるほど、サジェードについては確かによくわかっていない。言われてみれば、知っていたという可能性もあるな」
「ええ、オーバル子爵は、単純にそのことを知らなかったのかもしれません。ただ、そんな彼の元に事件の関係者であるメルーナ嬢が訪ねたとしたら」
「そうか。サジェードからしてみれば、メルーナ嬢が自分のことを糾弾――いや、脅しに来たとさえ思うかもしれないか」
「その可能性もあると思うんです」
メルーナ嬢を害したのは、モルダン男爵家のサジェードである。
私とイルドラ殿下は、そのような予測を立てた。それが当たっているかどうかはわからない。
ただ、今はともかく行動するべき時だ。モルダン男爵家を調べてみるとしよう。
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