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56.彼の主張
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「信じられないかもしれませんが、私は清廉潔白です」
私達の前にいる男性は、少し気まずそうにしながら言葉を発していた。
彼は、ナルーゼ・オーバル。オーバル子爵の息子であり、ネメルナ嬢の兄である人物だ。
ウォーラン殿下が話を聞きに行ったはずの彼は、現在王城にいる。なんでも、弁明のためにわざわざここまで来たそうだ。
「父上は確かに罪を犯していましたが、私はそれらの事実を知りませんでした。これでも一応、真面目に生きてきたつもりです。悪いことをしたことがないとは言いませんが……」
ナルーゼという人物のことを、私は計りかねている。彼の言っていることは、どこまで信じていいのだろうか。
もちろん、オーバル子爵が悪人だったからといって彼まで悪人だと考えるのは良くないことだ。個人は個人として、考えるべきだろう。
ただ別に、ナルーゼという人物を信じられる要素はない。その言葉から、真意をなんとか読み取らなければならない。
「メルーナ嬢の失踪に、私は関わっていません。何なら、屋敷を調べてもらっても構いませんよ。どうせこちらにはもう失うものなどありませんからね。父上のせいで、オーバル子爵家は終わりです」
少し投げやりになりながら、ナルーゼは言葉を発していた。
当然のことながら、オーバル子爵家は現在大変な状態である。まだ正式には決まっていないが、今後恐らく没落することになるだろう。
その状態で、メルーナ嬢に危害を加えるものだろうか。いや、投げやりになってそうするという可能性もある。
「もちろん、私にできることがあるならなんでもします。父上や妹の件は、私も危ない可能性がある。没落は仕方ないにしても、私まで捕まるなんてごめんです。少しでも心証を良くしておきたい」
ナルーゼの言葉には、切実なものがあった。
その様子は、演技とは思えない。心からそう思っているといった感じがする。
これは、信じても良いものなのではないだろうか。私は段々とそう思えてきた。
「もう一度言っておきますが、私は清廉潔白です。何もしていません。ほら、この通り」
そう言ってナルーゼは、両手を広げていた。
その様子は、少し滑稽に思えてしまう。彼は少し、天然なのかもしれない。
よく考えてみれば、オーバル子爵の思惑に関してはネメルナ嬢もまったく知らなかった。
それはまず間違いない事実だ。そこから考えると、彼が事実を知らなくても、おかしくはないのかもしれない。
その事実から、彼はメルーナ嬢を害した犯人ではないと考えるべきだろうか。
その可能性の方が高いと、私は思っている。まあ本人も言っている通り調査すれば、わかることだろうか。
私達の前にいる男性は、少し気まずそうにしながら言葉を発していた。
彼は、ナルーゼ・オーバル。オーバル子爵の息子であり、ネメルナ嬢の兄である人物だ。
ウォーラン殿下が話を聞きに行ったはずの彼は、現在王城にいる。なんでも、弁明のためにわざわざここまで来たそうだ。
「父上は確かに罪を犯していましたが、私はそれらの事実を知りませんでした。これでも一応、真面目に生きてきたつもりです。悪いことをしたことがないとは言いませんが……」
ナルーゼという人物のことを、私は計りかねている。彼の言っていることは、どこまで信じていいのだろうか。
もちろん、オーバル子爵が悪人だったからといって彼まで悪人だと考えるのは良くないことだ。個人は個人として、考えるべきだろう。
ただ別に、ナルーゼという人物を信じられる要素はない。その言葉から、真意をなんとか読み取らなければならない。
「メルーナ嬢の失踪に、私は関わっていません。何なら、屋敷を調べてもらっても構いませんよ。どうせこちらにはもう失うものなどありませんからね。父上のせいで、オーバル子爵家は終わりです」
少し投げやりになりながら、ナルーゼは言葉を発していた。
当然のことながら、オーバル子爵家は現在大変な状態である。まだ正式には決まっていないが、今後恐らく没落することになるだろう。
その状態で、メルーナ嬢に危害を加えるものだろうか。いや、投げやりになってそうするという可能性もある。
「もちろん、私にできることがあるならなんでもします。父上や妹の件は、私も危ない可能性がある。没落は仕方ないにしても、私まで捕まるなんてごめんです。少しでも心証を良くしておきたい」
ナルーゼの言葉には、切実なものがあった。
その様子は、演技とは思えない。心からそう思っているといった感じがする。
これは、信じても良いものなのではないだろうか。私は段々とそう思えてきた。
「もう一度言っておきますが、私は清廉潔白です。何もしていません。ほら、この通り」
そう言ってナルーゼは、両手を広げていた。
その様子は、少し滑稽に思えてしまう。彼は少し、天然なのかもしれない。
よく考えてみれば、オーバル子爵の思惑に関してはネメルナ嬢もまったく知らなかった。
それはまず間違いない事実だ。そこから考えると、彼が事実を知らなくても、おかしくはないのかもしれない。
その事実から、彼はメルーナ嬢を害した犯人ではないと考えるべきだろうか。
その可能性の方が高いと、私は思っている。まあ本人も言っている通り調査すれば、わかることだろうか。
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