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50.国王への報告

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「なるほど、そうなったか」

 私はイルドラ殿下とともに、国王様の前に立っていた。
 誰を選んだか、報告するためである。
 国王様は、私の結論に何か考えるような表情を見せた。何か、不満などがあるのだろうか。

「父上、何か不満ですか?」
「ああいや、そういう訳ではない。イルドラ、私も最初にお前に王位を継がせることを考えた」
「そうなのですか?」
「お前は王位に相応しい男だ。それは間違いない」

 イルドラ殿下も、私と同じような思いを抱いていたようだった。
 ただ、彼の質問に国王様は首を振っている。その表情に、嘘偽りなどはなさそうだ。本当に、イルドラ殿下を王に据えることに異論はないのだろう。
 それなら一体、何を考えていたというのだろうか。それが気になって、私とイルドラ殿下は顔を見合わせることになった。

「それなら父上は、一体何について考えていたのですか?」
「いや、お前のこれからについて考えていたのだ。王位を継ぐからには、これまで以上に学ぶべきことが多くなる。アヴェルドに注いでいたものを改めてお前に注がなければならない」
「なるほど……それは確かに、由々しき問題なのかもしれませんね」

 国王様の言葉に、イルドラ殿下は少し嫌そうな顔をした。
 王になるための教育なんて、どう考えても大変なものだ。その気持ちはよくわかる。私だって、他人事という訳ではないからだ。
 王妃になるために、これから私は色々なことを学ばなければならないだろう。気が引けることではあるが、こればかりは仕方ない。むしろ気を引き締めて、臨むべきことだ。

「さてと、リルティア嬢、エリトン侯爵家に対して既に文書は出してあるが、やはり君も直接報告したいだろう」
「あ、ええ、そうですね」
「馬車の手配などは、既にこちらでしておいた。いつでも出発することはできる。もっとも、今日はやめておいた方が良いだろう。今から出ると、すぐに日が暮れてしまう」
「わかりました。明朝に出発しようと思います」

 今回の件は、お父様には事後報告になってしまう。それ自体は、申し訳ないと思っている。
 とはいえ、反対されることはない。次期王妃となることに反対する貴族など、まずいないだろう。例え一度それで失敗していたとしても、断る理由はない。

「今日の所は、もう休むといい。部屋も用意してある」
「ありがとうございます」

 私は、国王様の言葉にゆっくりと頷いた。
 正直、今日は結構疲れている。色々とあったし、早く休みたい所だ。お言葉に甘えさせてもらうとしよう。
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