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44.第四王子との対話

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 私は、書庫にいるエルヴァン殿下の元に来ていた。
 オルテッド殿下もそうであったが、彼も微妙な表情をしている。それは私と婚約したくないとか、そういった旨の話だったら、地味にショックなのだが。

「リルティア嬢、わざわざ僕の所になんか来なくても良かったのに」
「いえ、そういう訳にはいきません。私には、次期国王を見定める義務がありますから」
「義務ですか? 父上の無理難題のせいですみませんね」

 エルヴァン殿下の言葉に、私は苦笑いを浮かべる。
 オルテッド殿下といい、皆国王様の判断には呆れているようだ。それはそうだろう。国の命運を私なんかに握らせるなんて、どうかしている。
 私も一応は受け入れているのだが、今からでも覆してもらいたいくらいだ。とはいえ、国王様は頑なだったし、多分それは無理だろう。

「ですが、僕は王位には相応しくありませんから、お気になさらないでください」
「王位に相応しくない、ですか?」
「ええ、こんな所で本を読むために入り浸っている僕が、王に相応しいと思いますか? というよりも、王なんかになったら本を読む時間が減ります。僕はそれを望んではいません」

 エルヴァン殿下も、弟と同じように王位を望んでいない。その事実に、私は少し頭を抱えることになった。
 もしかして、この兄弟は誰も次期国王になりたいと思っていないのだろうか。それはそれで、問題であるような気がする。まあ、エルヴァン殿下も第四王子である訳だし、自分が王になんて思ってもいなかったということなのだろうか。

「とはいえ、別に王位に興味がないという訳でもありませんよ。父上は一応、平等にチャンスを与えてくれると言っていましたから、それを目指そうと思った時もありました」
「え? そうなのですか?」
「ええ、ただ兄上達には敵わないと思い知らされました。特にイルドラ兄上やウォーラン兄上にはね。アヴェルド兄上が選ばれたのは正直不本意ではありました。まあこれは、後からなんとでも言えるというだけですが」

 エルヴァン殿下の苦笑いに、私はなんとも言えない気持ちになっていた。
 彼は彼で、兄との差に色々と悩んでいたということだろうか。それは少し、辛いことである。
 ただ、それについて私が何かを言うべきではないだろう。それはきっと、エルヴァン殿下の中では既に片付いていることなのだから。

「……でも私は」
「うん?」
「私はエルヴァン殿下も、王に相応しい方だと思いますよ。今回の件でも、色々と助けていただきました。感謝しています。本当にありがとうございました」
「……いえ」

 私のお礼に、エルヴァン殿下は少し照れていた。
 そんな彼に対して、私は思わず笑顔を浮かべてしまうのだった。
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