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39.それぞれの罪
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結局アヴェルド殿下は、助からなかった。
ネメルナ嬢は、急所をついていたようだ。衝動的な犯行であるようにも思えるが、その辺りの冷静さなどが少々妙ではある。
「とりあえず話は聞いているが、ネメルナ嬢は何も答えはしない。黙秘を貫いている」
「黙秘ですか……」
「喋るとは思えないな。まあ、どの道極刑にはなる訳だが……」
アヴェルド殿下を殺害したことによって、ネメルナ嬢にはまず極刑が下されることになる。
それは、まず覆らない事柄だ。いくらアヴェルド殿下に非があったとしても。
そもそもの話、ネメルナ嬢の現在の立場はとても悪い。父親であるオーバル子爵も、三人もの人間を殺害しているからだ。
「オーバル子爵の方も極刑になるのでしょうか?」
「ああ、それも覆りはしないだろうな。これに関しては、ネメルナ嬢以上にそうだといえる。何せ、三人も殺している。メルーナ嬢のことを考えると、未遂もある。あなたがラフェシア嬢に掛け合ってなかったら、彼女もまず間違いなく暗殺されていただろう」
イルドラ殿下の言葉に、私は息を呑んだ。
メルーナ嬢がもしも被害を受けていたらと思うと、心が苦しくなってくる。
彼女の方がどう思っているかはわからないが、私の方は既に友人だと思っている。友人を救えたことは、喜ぶべきことだろう。
「まあ何はともあれ、今回の事件に関わる者達には全員裁きを下せそうだ。兄上にも天誅が下ったということだろう。今まで好き勝手してきたツケを払ったともいえる」
「やはりネメルナ嬢も、薄々勘付いていたのでしょうか?」
「本人が口を開いてくれない以上、それがわかることもないのかもしれないな。まあどの道、兄上がひどいことをしていたことは事実だ。その点に関して、俺はネメルナ嬢に同情している。もちろん、浮気は許されることではないが……」
ネメルナ嬢は、色々な意味で愚かだったといえる。
ただ彼女の一番の間違いは、アヴェルド殿下に惚れてしまったことだろう。
彼など入れ込んでいなければ、もっと違う結果があったはずだ。大体、アヴェルド殿下のどこに魅力があったのか、今となっては疑問である。彼女は、浮気しているという自覚もあった訳ではあるし。
「結局の所、本心からアヴェルド殿下を慕っていたのは彼女だけだったのですね……」
「……言われてみれば、そういうことになるか」
「そんな人は滅多にいない訳ですから、きちんと受け止めてあげれば良かったと思うのですが」
「まあ、それができないから兄上は兄上だったのだろうさ」
私の言葉に、イルドラ殿下は苦笑いを浮かべていた。
アヴェルド殿下は、本当にどうしようもない人だったといえるだろう。
馬鹿は死ななきゃ治らないなんて言われることもあるが、彼の場合はどうなのだろうか。あの世では少しくらい、まともになってくれていると良いのだが。
ネメルナ嬢は、急所をついていたようだ。衝動的な犯行であるようにも思えるが、その辺りの冷静さなどが少々妙ではある。
「とりあえず話は聞いているが、ネメルナ嬢は何も答えはしない。黙秘を貫いている」
「黙秘ですか……」
「喋るとは思えないな。まあ、どの道極刑にはなる訳だが……」
アヴェルド殿下を殺害したことによって、ネメルナ嬢にはまず極刑が下されることになる。
それは、まず覆らない事柄だ。いくらアヴェルド殿下に非があったとしても。
そもそもの話、ネメルナ嬢の現在の立場はとても悪い。父親であるオーバル子爵も、三人もの人間を殺害しているからだ。
「オーバル子爵の方も極刑になるのでしょうか?」
「ああ、それも覆りはしないだろうな。これに関しては、ネメルナ嬢以上にそうだといえる。何せ、三人も殺している。メルーナ嬢のことを考えると、未遂もある。あなたがラフェシア嬢に掛け合ってなかったら、彼女もまず間違いなく暗殺されていただろう」
イルドラ殿下の言葉に、私は息を呑んだ。
メルーナ嬢がもしも被害を受けていたらと思うと、心が苦しくなってくる。
彼女の方がどう思っているかはわからないが、私の方は既に友人だと思っている。友人を救えたことは、喜ぶべきことだろう。
「まあ何はともあれ、今回の事件に関わる者達には全員裁きを下せそうだ。兄上にも天誅が下ったということだろう。今まで好き勝手してきたツケを払ったともいえる」
「やはりネメルナ嬢も、薄々勘付いていたのでしょうか?」
「本人が口を開いてくれない以上、それがわかることもないのかもしれないな。まあどの道、兄上がひどいことをしていたことは事実だ。その点に関して、俺はネメルナ嬢に同情している。もちろん、浮気は許されることではないが……」
ネメルナ嬢は、色々な意味で愚かだったといえる。
ただ彼女の一番の間違いは、アヴェルド殿下に惚れてしまったことだろう。
彼など入れ込んでいなければ、もっと違う結果があったはずだ。大体、アヴェルド殿下のどこに魅力があったのか、今となっては疑問である。彼女は、浮気しているという自覚もあった訳ではあるし。
「結局の所、本心からアヴェルド殿下を慕っていたのは彼女だけだったのですね……」
「……言われてみれば、そういうことになるか」
「そんな人は滅多にいない訳ですから、きちんと受け止めてあげれば良かったと思うのですが」
「まあ、それができないから兄上は兄上だったのだろうさ」
私の言葉に、イルドラ殿下は苦笑いを浮かべていた。
アヴェルド殿下は、本当にどうしようもない人だったといえるだろう。
馬鹿は死ななきゃ治らないなんて言われることもあるが、彼の場合はどうなのだろうか。あの世では少しくらい、まともになってくれていると良いのだが。
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