34 / 80
34.罪を認めず
しおりを挟む
「さて、オーバル子爵、今回何故呼び出されたのか、君は理解しているか?」
「いいえ、皆目見当もつきません」
玉座の間にて、国王様はオーバル子爵のことを冷たい視線で見つめていた。
質問に対して、オーバル子爵は汗を流している。何故呼び出されたのか、理解していないという訳でもなさそうだ。
それは当然のことだろう。モルダン男爵家とラウヴァット男爵家に対して謀殺を仕掛けて、その直後に呼び出されたとなれば、焦らない訳がない。
「オーバル子爵、何かしらやましいことがあるというなら、是非とも君の口から聞かせてもらいたいものだ。最後まで白を切るなどという考え方はやめておいた方がいい。それは君の立場を悪くするだけだ」
「……何を仰っているのか、私には理解できませんね。やましいことなど、何もありませんから」
「そうか」
国王様は、オーバル子爵に対して最後の確認をしているようだった。
といっても、今回の謀殺はまず死刑だ。罪を自ら告白しても、特に結果は変わらないだろう。
それをわかっているからこそ、オーバル子爵はしらを切ったのだ。国王様が、何も把握していないことに彼は賭けているのだろう。
「それなら、私からお前の罪について話すとしよう」
「ぬなっ……!」
先程にも増して冷たい目をする国王様に、オーバル子爵は怯えていた。
もちろん、彼ももうわかっているだろう。国王様が全てを知っているということを。
オーバル子爵の顔は、どんどんと青くなっていっている。そしてこの場にいるもう一人の当事者も、困ったような顔をしている。
「父上、少しよろしいでしょうか?」
「アヴェルド、どうかしたのか?」
「オーバル子爵の罪など、別によろしいではありませんか。私とネメルナ嬢の婚約のことをお忘れですか?」
アヴェルド殿下は、割ととんでもないことを言い出した。
自分の婚約者の父親だから罪を見逃せ、彼は暗にそう言っているのだ。
もちろん、彼自身も無茶だということは理解しているはずである。なりふり構っていられないということだろうか。
「アヴェルド、今回のことはそれと密接に関係していることだ。それはお前自身が、一番よくわかっていることだろう」
「……何のことだか」
「お前も自身の罪を認めないつもりか? どうやら私は、育て方を間違えたようだな……」
国王様は、どこか遠くを見つめていた。
やはり息子であり王太子でもあるアヴェルド殿下の愚行に、心を痛めているのだろう。
しかし国王様は、すぐに真剣な顔に戻った。既に決心は、ついているということだろう。
「いいえ、皆目見当もつきません」
玉座の間にて、国王様はオーバル子爵のことを冷たい視線で見つめていた。
質問に対して、オーバル子爵は汗を流している。何故呼び出されたのか、理解していないという訳でもなさそうだ。
それは当然のことだろう。モルダン男爵家とラウヴァット男爵家に対して謀殺を仕掛けて、その直後に呼び出されたとなれば、焦らない訳がない。
「オーバル子爵、何かしらやましいことがあるというなら、是非とも君の口から聞かせてもらいたいものだ。最後まで白を切るなどという考え方はやめておいた方がいい。それは君の立場を悪くするだけだ」
「……何を仰っているのか、私には理解できませんね。やましいことなど、何もありませんから」
「そうか」
国王様は、オーバル子爵に対して最後の確認をしているようだった。
といっても、今回の謀殺はまず死刑だ。罪を自ら告白しても、特に結果は変わらないだろう。
それをわかっているからこそ、オーバル子爵はしらを切ったのだ。国王様が、何も把握していないことに彼は賭けているのだろう。
「それなら、私からお前の罪について話すとしよう」
「ぬなっ……!」
先程にも増して冷たい目をする国王様に、オーバル子爵は怯えていた。
もちろん、彼ももうわかっているだろう。国王様が全てを知っているということを。
オーバル子爵の顔は、どんどんと青くなっていっている。そしてこの場にいるもう一人の当事者も、困ったような顔をしている。
「父上、少しよろしいでしょうか?」
「アヴェルド、どうかしたのか?」
「オーバル子爵の罪など、別によろしいではありませんか。私とネメルナ嬢の婚約のことをお忘れですか?」
アヴェルド殿下は、割ととんでもないことを言い出した。
自分の婚約者の父親だから罪を見逃せ、彼は暗にそう言っているのだ。
もちろん、彼自身も無茶だということは理解しているはずである。なりふり構っていられないということだろうか。
「アヴェルド、今回のことはそれと密接に関係していることだ。それはお前自身が、一番よくわかっていることだろう」
「……何のことだか」
「お前も自身の罪を認めないつもりか? どうやら私は、育て方を間違えたようだな……」
国王様は、どこか遠くを見つめていた。
やはり息子であり王太子でもあるアヴェルド殿下の愚行に、心を痛めているのだろう。
しかし国王様は、すぐに真剣な顔に戻った。既に決心は、ついているということだろう。
961
お気に入りに追加
2,103
あなたにおすすめの小説
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
聖獣がなつくのは私だけですよ?
新野乃花(大舟)
恋愛
3姉妹の3女であるエリッサは、生まれた時から不吉な存在だというレッテルを張られ、家族はもちろん周囲の人々からも冷たい扱いを受けていた。そんなある日の事、エリッサが消えることが自分たちの幸せにつながると信じてやまない彼女の家族は、エリッサに強引に家出を強いる形で、自分たちの手を汚すことなく彼女を追い出すことに成功する。…行く当てのないエリッサは死さえ覚悟し、誰も立ち入らない荒れ果てた大地に足を踏み入れる。死神に出会うことを覚悟していたエリッサだったものの、そんな彼女の前に現れたのは、絶大な力をその身に宿す聖獣だった…!
10年前にわたしを陥れた元家族が、わたしだと気付かずに泣き付いてきました
柚木ゆず
恋愛
今から10年前――わたしが12歳の頃、子爵令嬢のルナだった頃のことです。わたしは双子の姉イヴェットが犯した罪を背負わされ、ルナの名を捨てて隣国にある農園で第二の人生を送ることになりました。
わたしを迎え入れてくれた農園の人達は、優しく温かい人ばかり。わたしは新しい家族や大切な人に囲まれて10年間を楽しく過ごし、現在は副園長として充実した毎日を送っていました。
ですが――。そんなわたしの前に突然、かつて父、母、双子の姉だった人が現れたのです。
「「「お願い致します! どうか、こちらで働かせてください!」」」
元家族たちはわたしに気付いておらず、やけに必死になって『住み込みで働かせて欲しい』と言っています。
貴族だった人達が護衛もつけずに、隣の国でこんなことをしているだなんて。
なにがあったのでしょうか……?
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
魔がさしたから浮気したと言うのなら、私に魔がさしても文句を言わないでくださいね?
新野乃花(大舟)
恋愛
しきりに魔がさしたという言葉を使い、自分の浮気を正当化していた騎士のリルド。そんな彼の婚約者だったクレアはある日、その言葉をそのままリルドに対してお返ししてみようと考えたのだった。
私が公爵の本当の娘ではないことを知った婚約者は、騙されたと激怒し婚約破棄を告げました。
Mayoi
恋愛
ウェスリーは婚約者のオリビアの出自を調べ、公爵の実の娘ではないことを知った。
そのようなことは婚約前に伝えられておらず、騙されたと激怒しオリビアに婚約破棄を告げた。
二人の婚約は大公が認めたものであり、一方的に非難し婚約破棄したウェスリーが無事でいられるはずがない。
自分の正しさを信じて疑わないウェスリーは自滅の道を歩む。
俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。
役立たずの追放聖女は、可愛い神聖獣たちになつかれる唯一の存在でした
新野乃花(大舟)
恋愛
聖女の血を引くという特別な存在であることが示された少女、アリシラ。そんな彼女に目を付けたノラン第一王子は、その力を独り占めして自分のために利用してやろうと考え、アリシラの事を自身の婚約者として招き入れた。しかし彼女の力が自分の思い描いたものではなかったことに逆上したノランは、そのまま一方的にアリシラの事を婚約破棄の上で追放してしまう。すべてはアリシラの自業自得であるという事にし、深くは考えていなかったノランだったものの、この後判明するアリシラの特別な力を耳にしたとき、彼は心の底から自分の行いを後悔することとなるのであった…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる