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34.罪を認めず

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「さて、オーバル子爵、今回何故呼び出されたのか、君は理解しているか?」
「いいえ、皆目見当もつきません」

 玉座の間にて、国王様はオーバル子爵のことを冷たい視線で見つめていた。
 質問に対して、オーバル子爵は汗を流している。何故呼び出されたのか、理解していないという訳でもなさそうだ。
 それは当然のことだろう。モルダン男爵家とラウヴァット男爵家に対して謀殺を仕掛けて、その直後に呼び出されたとなれば、焦らない訳がない。

「オーバル子爵、何かしらやましいことがあるというなら、是非とも君の口から聞かせてもらいたいものだ。最後まで白を切るなどという考え方はやめておいた方がいい。それは君の立場を悪くするだけだ」
「……何を仰っているのか、私には理解できませんね。やましいことなど、何もありませんから」
「そうか」

 国王様は、オーバル子爵に対して最後の確認をしているようだった。
 といっても、今回の謀殺はまず死刑だ。罪を自ら告白しても、特に結果は変わらないだろう。
 それをわかっているからこそ、オーバル子爵はしらを切ったのだ。国王様が、何も把握していないことに彼は賭けているのだろう。

「それなら、私からお前の罪について話すとしよう」
「ぬなっ……!」

 先程にも増して冷たい目をする国王様に、オーバル子爵は怯えていた。
 もちろん、彼ももうわかっているだろう。国王様が全てを知っているということを。
 オーバル子爵の顔は、どんどんと青くなっていっている。そしてこの場にいるもう一人の当事者も、困ったような顔をしている。

「父上、少しよろしいでしょうか?」
「アヴェルド、どうかしたのか?」
「オーバル子爵の罪など、別によろしいではありませんか。私とネメルナ嬢の婚約のことをお忘れですか?」

 アヴェルド殿下は、割ととんでもないことを言い出した。
 自分の婚約者の父親だから罪を見逃せ、彼は暗にそう言っているのだ。
 もちろん、彼自身も無茶だということは理解しているはずである。なりふり構っていられないということだろうか。

「アヴェルド、今回のことはそれと密接に関係していることだ。それはお前自身が、一番よくわかっていることだろう」
「……何のことだか」
「お前も自身の罪を認めないつもりか? どうやら私は、育て方を間違えたようだな……」

 国王様は、どこか遠くを見つめていた。
 やはり息子であり王太子でもあるアヴェルド殿下の愚行に、心を痛めているのだろう。
 しかし国王様は、すぐに真剣な顔に戻った。既に決心は、ついているということだろう。
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