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11.寄り添いながら
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「ネメルナ嬢は、アヴェルド殿下とお付き合いしているのですよね? それは、他の誰にも伝えていないということでよろしいのでしょうか?」
「ええ、そうですけれど」
「明かすことができない理由は……やはり地位でしょうか?」
「……まあ」
ネメルナ嬢は、私に対する警戒を少し解いているようだった。
突然の涙と謝罪は、彼女の心を解す効果があったということだろう。アヴェルド殿下を奪った敵という認識は、既に薄れていると考えても良さそうだ。
話が早いため、それはこちらとしてはとても助かる。彼女が余計なことを考える前に、畳みかけておくことにしよう。
「お辛いことですよね。地位の差というものは……」
「……あなたなんかに、そのようなことを言われたくはありません」
「いいえ、私もわからない訳ではありません。どちらかというと、アヴェルド殿下側の気持ちということになるでしょうか。覚えがあります」
「それは……」
当然のことながら、私は自分より下の地位の人と恋愛的な関係にあったなどということはない。それ所か生まれてからこれまで、恋などしたことがないくらいだ。
ただ、ネメルナ嬢には適当に話を合わせておく方がいいと思った。事実として、彼女は私に対して少し同情的な目を向けている。効果はあったということだろう。
「だからこそ、アヴェルド殿下やネメルナ嬢には私達のようになって欲しくないと思っているのです」
「え? それって……」
「お二人のために、身を引くという言い方は、少々上から目線過ぎるかもしれませんね。ですが、私は私個人の判断として、アヴェルド殿下との婚約を破棄したいと考えています」
私の言葉に、ネメルナ嬢はその目を丸めていた。
こんなことを言われるなんて、考えてもいなかったようだ。かなり動揺しているのが、その表情から見て取れる。
とりあえず私は、ネメルナ嬢の言葉を待つことにする。彼女にはきちんと、話を聞いてもらわなければならないからだ。
「こ、婚約破棄なんて、正気ですか?」
「ええ、正気ですよ。私は本気でそう言っています」
「王族……それも王太子との婚約を破棄するなんて、あなたはそれで良いというのですか?」
「良いと思っているからこそ、そう言っているのではありませんか。逆に考えてみてください。冗談でこのようなことを言うと思いますか。あなたの元をわざわざ訪ねて、それで私に何のメリットがあるというのでしょう?」
ネメルナ嬢は、顎に手を当てて考え始めていた。
当然、私の言葉を吟味しているのだろう。
ここであり得ないと思われてしまったら、今回の計画は破綻することになる。そういうことならそういうことでも構わないのだが、できればネメルナ嬢には信じてもらいたい所だ。
「ええ、そうですけれど」
「明かすことができない理由は……やはり地位でしょうか?」
「……まあ」
ネメルナ嬢は、私に対する警戒を少し解いているようだった。
突然の涙と謝罪は、彼女の心を解す効果があったということだろう。アヴェルド殿下を奪った敵という認識は、既に薄れていると考えても良さそうだ。
話が早いため、それはこちらとしてはとても助かる。彼女が余計なことを考える前に、畳みかけておくことにしよう。
「お辛いことですよね。地位の差というものは……」
「……あなたなんかに、そのようなことを言われたくはありません」
「いいえ、私もわからない訳ではありません。どちらかというと、アヴェルド殿下側の気持ちということになるでしょうか。覚えがあります」
「それは……」
当然のことながら、私は自分より下の地位の人と恋愛的な関係にあったなどということはない。それ所か生まれてからこれまで、恋などしたことがないくらいだ。
ただ、ネメルナ嬢には適当に話を合わせておく方がいいと思った。事実として、彼女は私に対して少し同情的な目を向けている。効果はあったということだろう。
「だからこそ、アヴェルド殿下やネメルナ嬢には私達のようになって欲しくないと思っているのです」
「え? それって……」
「お二人のために、身を引くという言い方は、少々上から目線過ぎるかもしれませんね。ですが、私は私個人の判断として、アヴェルド殿下との婚約を破棄したいと考えています」
私の言葉に、ネメルナ嬢はその目を丸めていた。
こんなことを言われるなんて、考えてもいなかったようだ。かなり動揺しているのが、その表情から見て取れる。
とりあえず私は、ネメルナ嬢の言葉を待つことにする。彼女にはきちんと、話を聞いてもらわなければならないからだ。
「こ、婚約破棄なんて、正気ですか?」
「ええ、正気ですよ。私は本気でそう言っています」
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「良いと思っているからこそ、そう言っているのではありませんか。逆に考えてみてください。冗談でこのようなことを言うと思いますか。あなたの元をわざわざ訪ねて、それで私に何のメリットがあるというのでしょう?」
ネメルナ嬢は、顎に手を当てて考え始めていた。
当然、私の言葉を吟味しているのだろう。
ここであり得ないと思われてしまったら、今回の計画は破綻することになる。そういうことならそういうことでも構わないのだが、できればネメルナ嬢には信じてもらいたい所だ。
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