虐げられてきた妾の子は、生真面目な侯爵に溺愛されています。~嫁いだ先の訳あり侯爵は、実は王家の血を引いていました~

木山楽斗

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12.訪問の成果

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「ランベルト侯爵家は、俺の来訪にかなり焦っていたようだった」
「焦る、ですか?」
「ああ、彼は俺が挨拶に出向くと言っても、頑なに断っていたからな。気遣いは不要であると突っぱねていたが、今思えばあれはやましいことがあったからなのだろう」

 ルバイトは、ランベルト侯爵家であったことを話し始めた。
 それをアリシアは、静かに聞く。

 彼女の婚約に関わることではあるが、アリシアにとってルバイトの話は初耳だった。
 というよりも、アリシアは婚約にまつわる話などほとんど耳にしていない。ランベルト侯爵は、何も教えてくれなかったのである。

「とりあえず俺は、ランベルト侯爵に君のことを色々と訪ねてみた。ランベルト侯爵の反応は、それなりに面白いものだったといえるか。かなり動揺していたからな」
「そうなのですか? 意外です。てっきり私の扱いなんて、当たり前くらいに言うのかと思っていましたが……」
「流石に外部の人間には隠しておきたいだろう。君の扱いは、どう考えても不当なものだからな」

 ルバイトの発言には、幾分かの怒りが含まれているようだった。
 その言葉に、アリシアは少し驚いていた。自分の扱いに怒っているのは、ルバイトが真面目なだけで、他の貴族はそうではないのだとばかり思っていたからだ。

 それによって、アリシアは少しだけ考えを改めることになった。
 貴族の世界も、ランベルト侯爵家のような人達ばかりではない。それはアリシアにとって、とても安心することができる情報であった。

「でも、それなら私を結婚させるなんて、かなり大胆なことをしましたね。私が、嫁いだ先で喋ってしまうかもしれないのに……」
「その辺りに関しては、喋っても問題ないと思われていたのだろう。俺の立場が立場だからな。もっとも、今回の動きは予想外だったようだが」
「ああ、なるほど……」

 ランベルト侯爵は、ルバイトのことをかなり馬鹿にしていたのだろう。
 話を聞いて、アリシアはそのようなことを思った。

 一応父親であるため、アリシアも侯爵のことはそれなりによく理解している。
 ルバイトを侮っていたであろうことは、アリシアには容易に想像できていた。ランベルト侯爵は、そういう人なのである。

「まあ、ランベルト侯爵も今回の件で、こちらのことを警戒しただろう。滅多なことはしてこないはずだ」
「つまり、ルバイト様の訪問は牽制だったということでしょうか?」
「ああ、その意図もあった。それから、君の母親のこともある」
「お母さんのことですか? もしかして、お墓の場所を……」
「ああ、聞いておいた。それに関しては、特に渋りもしなかったな。まあ、教えない方が不自然であることだが」

 ルバイトからの報告に、アリシアは涙を流しそうになっていた。
 母親の所在というものは、彼女にとってそれ程に重要なものだったのだ。

 これでやっと、母に別れの言葉を言うことができる。
 悲しいことながらも、アリシアはそうできることを喜んでいた。それは彼女にとって、心残りだったのだ。

「機を見て、お墓参りに行くとしよう。俺も君の母親には挨拶しておきたいからな……」
「……はい!」

 ルバイトの言葉に、アリシアは笑顔を浮かべていた。
 こうして彼女は、最も知りたかったことを知ることができたのである。
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