13 / 23
13(アルシーナ視点)
しおりを挟む
私の元にその手紙が届いたのは、ほんの数日前のことである。
その差出人が、ファルミリア・ロガルサという見覚えがある名前だったことから、私はそれがいい知らせではないことをすぐに悟った。
手紙には、ロガルサ公爵家の現状が綴られていた。その現状は、悲惨である。
「バルガイン・ロガルサによって、公爵家の資産は使い尽くされた。現在、ロガルサ公爵家は資金難である」
バルガインは、博打好きだ。その悪癖によって、公爵家の資産は使い尽くされているらしい。
確か、お父様とお母様は、あの男を手放さないために、公爵家の財産を好きにしていいという誓約書を書いたはずだ。ということは、今のロガルサ公爵家には本当に何もないということになる。
それは、私が大方予想していた結末だ。自業自得としか思えない。
「本来なら、それでいいはずだけど……」
本来ならばそれだけ思うだけだっただろう。今更、公爵家に関わろうなんて思わなかったはずである。
しかし、この手紙にはまだ続きがあった。それは、私に大いに関係することである。
「あなたが、アルシーナ・ウォングレイとなったことはわかっています。異国で大変成功しているあなたに、この公爵家の危機を救っていただきたいのです……何を勝手な」
手紙には、私に公爵家を手助けして欲しいと旨が記されていた。
私が商人として成功しているから、資金面で援助して欲しい。それは、なんとも図々しい願いである。
私を追放した原因を作った妹夫婦に、私が援助をする訳がない。本来なら、そう一笑に伏したい所なのだが、そうできない理由もある。
「あなたが、この願いを退けるのは勝手ですが、そうした場合、あなたの経歴を全て暴露させていただきます……まあ、脅迫という訳ね」
私の妹夫婦は、私を脅迫してきていた。
支援しないと、私の過去を暴露する。なんとも、あの二人が考えそうなことだ。
「……当然、それを受け入れるという訳ではないだろうね?」
「クラール……」
そんな私の元に、夫であるクラールがやって来た。
彼には、この手紙のことは既に話してある。ただ、どうするかの判断はまだ待ってもらっているのだ。
その結論を、そろそろ出さなければならない。忙しい彼を、いつまでも待たせている訳には、いかないからだ。
「私に力を貸してくれる?」
「もちろん」
「私の個人的なことで、あなたの手を煩わせるのは申し訳ないのだけれど……」
「私にとって、君より大切なものなどないよ。そんな君のために動くことを煩わしいなどと思うはずはない」
「……ありがとう」
クラールは、私に協力してくれるつもりだった。
そんな彼の思いが、私はとても嬉しい。そして、同時に思った。彼との生活を、忌々しい過去によって壊されてなるものかと。
こうして、私はクラールとともに過去と戦うために動き出すのだった。
その差出人が、ファルミリア・ロガルサという見覚えがある名前だったことから、私はそれがいい知らせではないことをすぐに悟った。
手紙には、ロガルサ公爵家の現状が綴られていた。その現状は、悲惨である。
「バルガイン・ロガルサによって、公爵家の資産は使い尽くされた。現在、ロガルサ公爵家は資金難である」
バルガインは、博打好きだ。その悪癖によって、公爵家の資産は使い尽くされているらしい。
確か、お父様とお母様は、あの男を手放さないために、公爵家の財産を好きにしていいという誓約書を書いたはずだ。ということは、今のロガルサ公爵家には本当に何もないということになる。
それは、私が大方予想していた結末だ。自業自得としか思えない。
「本来なら、それでいいはずだけど……」
本来ならばそれだけ思うだけだっただろう。今更、公爵家に関わろうなんて思わなかったはずである。
しかし、この手紙にはまだ続きがあった。それは、私に大いに関係することである。
「あなたが、アルシーナ・ウォングレイとなったことはわかっています。異国で大変成功しているあなたに、この公爵家の危機を救っていただきたいのです……何を勝手な」
手紙には、私に公爵家を手助けして欲しいと旨が記されていた。
私が商人として成功しているから、資金面で援助して欲しい。それは、なんとも図々しい願いである。
私を追放した原因を作った妹夫婦に、私が援助をする訳がない。本来なら、そう一笑に伏したい所なのだが、そうできない理由もある。
「あなたが、この願いを退けるのは勝手ですが、そうした場合、あなたの経歴を全て暴露させていただきます……まあ、脅迫という訳ね」
私の妹夫婦は、私を脅迫してきていた。
支援しないと、私の過去を暴露する。なんとも、あの二人が考えそうなことだ。
「……当然、それを受け入れるという訳ではないだろうね?」
「クラール……」
そんな私の元に、夫であるクラールがやって来た。
彼には、この手紙のことは既に話してある。ただ、どうするかの判断はまだ待ってもらっているのだ。
その結論を、そろそろ出さなければならない。忙しい彼を、いつまでも待たせている訳には、いかないからだ。
「私に力を貸してくれる?」
「もちろん」
「私の個人的なことで、あなたの手を煩わせるのは申し訳ないのだけれど……」
「私にとって、君より大切なものなどないよ。そんな君のために動くことを煩わしいなどと思うはずはない」
「……ありがとう」
クラールは、私に協力してくれるつもりだった。
そんな彼の思いが、私はとても嬉しい。そして、同時に思った。彼との生活を、忌々しい過去によって壊されてなるものかと。
こうして、私はクラールとともに過去と戦うために動き出すのだった。
8
お気に入りに追加
3,012
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた私が幸せになるまで
風見ゆうみ
恋愛
私、レティアは5歳の時に拉致され、私と似た公爵家の令嬢の身代わりをさせられる事になった。
身代わりの理由は公爵令嬢の婚約者が魔道士の息子だったから。
魔道士を嫌う公爵家は私を身代わりにし、大魔道士の息子、レイブンと会わせた。
私と彼は年を重ねるにつれ、婚約者だからではなく、お互いに恋心を持つ様になっていき、順調にいけば、私は彼と結婚して自由になれるはずだった。
そんなある日、本物の令嬢、レティシア様がレイブンを見たいと言い出した。
そして、入れ替わるはずだったはずの夜会に本人が出席する事になり、その夜会で、レティシア様はレイブンを好きになってしまう。
レイブンと結婚したいというレティシア様と、それを拒む公爵夫妻。
このままではレイブンと結婚できないと、私が邪魔になったレティシア様は、公爵夫妻に内緒で、私を治安の悪い貧民街に捨てた。
※身代わりのレティアが自由を勝ち取り、レイブンと幸せになるまでのお話です。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※話が合わない場合は、コメントは残さずに閉じてくださいませ。
無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後
柚木ゆず
恋愛
※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。
聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。
ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。
そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。
ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――
孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます
天宮有
恋愛
聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。
それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。
公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。
島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。
その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。
私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。
精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた
向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。
聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。
暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!?
一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
私を追い出したことを今になって後悔するなんて、ざまぁないですね♪
新野乃花(大舟)
恋愛
伯爵としての立場を有しているノレッドは、自身の婚約者として同じく貴族令嬢であるセシリアの事を迎え入れた。しかし、ノレッドはその関係を築いていながらルリアという女性に夢中になってしまい、セシリアに適当な理由を突き付けてその婚約を破棄してしまう。自分は貴族の中でも高い地位を持っているため、誰も自分に逆らうことはできない。これで自分の計画通りになったと言うノレッドであったが、セシリアの後ろには貴族会の統括であるフォーリッドがおり、二人は実の親子のような深い絆で結ばれているという事に気づかなかった。本気を出したフォーリッドの前にノレッドは一方的に立場を失っていくこととなり、婚約破棄を後悔した時にはすべてが手遅れなのだった…。
第一夫人が何もしないので、第二夫人候補の私は逃げ出したい
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のリドリー・アップルは、ソドム・ゴーリキー公爵と婚約することになった。彼との結婚が成立すれば、第二夫人という立場になる。
しかし、第一夫人であるミリアーヌは子作りもしなければ、夫人としての仕事はメイド達に押し付けていた。あまりにも何もせず、我が儘だけは通し、リドリーにも被害が及んでしまう。
ソドムもミリアーヌを叱責することはしなかった為に、リドリーは婚約破棄をしてほしいと申し出る。だが、そんなことは許されるはずもなく……リドリーの婚約破棄に向けた活動は続いていく。
そんな時、リドリーの前には救世主とも呼べる相手が現れることになり……。
冷遇された王女は隣国で力を発揮する
高瀬ゆみ
恋愛
セシリアは王女でありながら離宮に隔離されている。
父以外の家族にはいないものとして扱われ、唯一顔を見せる妹には好き放題言われて馬鹿にされている。
そんな中、公爵家の子息から求婚され、幸せになれると思ったのも束の間――それを知った妹に相手を奪われてしまう。
今までの鬱憤が爆発したセシリアは、自国での幸せを諦めて、凶帝と恐れられる隣国の皇帝に嫁ぐことを決意する。
自分に正直に生きることを決めたセシリアは、思いがけず隣国で才能が開花する。
一方、セシリアがいなくなった国では様々な異変が起こり始めて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる