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13(アルシーナ視点)

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 私の元にその手紙が届いたのは、ほんの数日前のことである。
 その差出人が、ファルミリア・ロガルサという見覚えがある名前だったことから、私はそれがいい知らせではないことをすぐに悟った。
 手紙には、ロガルサ公爵家の現状が綴られていた。その現状は、悲惨である。

「バルガイン・ロガルサによって、公爵家の資産は使い尽くされた。現在、ロガルサ公爵家は資金難である」

 バルガインは、博打好きだ。その悪癖によって、公爵家の資産は使い尽くされているらしい。
 確か、お父様とお母様は、あの男を手放さないために、公爵家の財産を好きにしていいという誓約書を書いたはずだ。ということは、今のロガルサ公爵家には本当に何もないということになる。
 それは、私が大方予想していた結末だ。自業自得としか思えない。

「本来なら、それでいいはずだけど……」

 本来ならばそれだけ思うだけだっただろう。今更、公爵家に関わろうなんて思わなかったはずである。
 しかし、この手紙にはまだ続きがあった。それは、私に大いに関係することである。

「あなたが、アルシーナ・ウォングレイとなったことはわかっています。異国で大変成功しているあなたに、この公爵家の危機を救っていただきたいのです……何を勝手な」

 手紙には、私に公爵家を手助けして欲しいと旨が記されていた。
 私が商人として成功しているから、資金面で援助して欲しい。それは、なんとも図々しい願いである。
 私を追放した原因を作った妹夫婦に、私が援助をする訳がない。本来なら、そう一笑に伏したい所なのだが、そうできない理由もある。

「あなたが、この願いを退けるのは勝手ですが、そうした場合、あなたの経歴を全て暴露させていただきます……まあ、脅迫という訳ね」

 私の妹夫婦は、私を脅迫してきていた。
 支援しないと、私の過去を暴露する。なんとも、あの二人が考えそうなことだ。

「……当然、それを受け入れるという訳ではないだろうね?」
「クラール……」

 そんな私の元に、夫であるクラールがやって来た。
 彼には、この手紙のことは既に話してある。ただ、どうするかの判断はまだ待ってもらっているのだ。
 その結論を、そろそろ出さなければならない。忙しい彼を、いつまでも待たせている訳には、いかないからだ。

「私に力を貸してくれる?」
「もちろん」
「私の個人的なことで、あなたの手を煩わせるのは申し訳ないのだけれど……」
「私にとって、君より大切なものなどないよ。そんな君のために動くことを煩わしいなどと思うはずはない」
「……ありがとう」

 クラールは、私に協力してくれるつもりだった。
 そんな彼の思いが、私はとても嬉しい。そして、同時に思った。彼との生活を、忌々しい過去によって壊されてなるものかと。
 こうして、私はクラールとともに過去と戦うために動き出すのだった。
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