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110.違和感がある態度

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「……あら? 今日は、随分とお客様が来ているようですね」

 起き上がったルミーネは、周囲を見渡しながらそう呟いた。
 彼女は、この状況に特に驚いていない。まるで私達が来ることがわかっていたかのような冷静な対応だ。
 いや、実際にわかっていたのかもしれない。彼女は、スライグさんに忠告していた。それはある程度自分のことが調べられていると知っていたからだろう。

「そんなに怖い顔をしてどうされたのですか? ああ、私を捕まえようとしている訳ですか……」

 ルミーネは、この状況でも笑っていた。相変わらず、余裕そうである。
 だが、流石に彼女でも、この数の騎士を相手にするのは難しいはずだ。いくらなんでも、無理があるだろう。

「おや、聖女様も一緒ですか……おっと、それにレイオスさんにエルーシャさんまで」

 そこで、ルミーネは私達の方に目を向けてきた。
 私はともかく、レイオスさんやエルーシャさんがいるのは予想外だったのか、彼女は珍しく驚いているようだ。

「ルミーネ、あなたは随分と変わってしまったようね……」
「エルーシャさん、そんなことを言わないでくださいよ。私は、そんなに変わっていないつもりですよ?」
「元々、こういう人間で、ズウェール王国でのあなたは演技だったということかしら?」
「……まあ、そう取ってもらっても構いませんよ」

 ルミーネは、エルーシャさんとそのような会話を交わした。
 彼女達は、部下と上司の関係だ。そのため、お互いに色々と思う所があるのだろう。

「ふふ、それにしても皆さん、寄ってたかってか弱い女性を虐めようなんてひどいではありませんか」
「あなたがか弱い女性であるとは思えないけど……」
「そういわないでくださいよ……」

 ルミーネの返答に、私は少し違和感を覚えた。
 彼女は、先程からずっと笑っている。ただ、今の笑みには、少しだけ苦しさが滲んでいる気がするのだ。

「……ここで一体、何をしていたの?」
「それを私が素直に答えるとでも思っているのですか?」
「グーゼス様を作っていたの?」
「さて、どうでしょうか?」

 私の質問を、ルミーネははぐらかしてきた。
 素直に答えるはずはない。彼女のその主張は、間違っていないだろう。普通に考えて、計画をわざわざ答えたりはしないはずだ。
 だが、いつかの彼女は自分の実験を嬉々として語っていた。そんな彼女の性質から考えると、今の答えはおかしい気がする。
 恐らく、彼女には何かあったのだろう。この部屋の状況とルミーネの態度も合わせて、私はそれを確信する。
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