86 / 120
86.つけてくる者(モブ視点)
しおりを挟む
元ズウェール王国内にて、エルーシャは忙しい日々を送っていた。
現在、ズウェール王国はラヴェイスト公爵が新たなる王となり、ラヴェイスト王国へと生まれ変わろうとしている。
そんな激動の中で、エルーシャは新しい仕事を探していた。もう国の中枢に関わるような仕事をしようとは、彼女も思っていない。もっと穏やかな生活を送ろうと思っているのだ。
「……あら?」
そこで、エルーシャはあることに気づいた。何か、視線を感じるのだ。
恐らく、自分をつけてきている者がいる。そう思ったエルーシャは、周囲の様子を見渡した。
しかし、目に入る範囲に人は見つからない。どうやら、相手はかなりきちんと尾行をしてきているようだ。
「……ただのストーカーにしては、尾行が上手すぎるような気がするわね」
エルーシャは、相手がただの人間ではないと思った。それにしては、尾行が上手すぎるからだ。
ということは、相手は何かしらのプロということになる。そんな人間が、どうして自分を尾行するのか、エルーシャは考える。
考えて出た結論は、自分がかつてズウェール王国の中枢にいたという事実から来るものだった。ラヴェイスト王国辺りが、差し向けてきているのだろうか。エルーシャは、そのように考えたのだ。
「さて、どうなるのかしら?」
「……どうかしたのか?」
そんなことを考えながら、エルーシャは目的地に辿り着いていた。
そこにいたレイオスは、彼女の様子に質問をしてきた。彼からすれば、彼女がどうしてこんな様子なのか、まったくわからないのだ。
「レイオス、どうやら私は誰かにつけられているみたいなの? あなたの方は、何かなかった?」
「……いや、特にはない」
エルーシャは、ラヴェイスト王国が自分のことを調べているのなら、レイオスにも同じことが起こっているのではないかと考えていた。
しかし、彼には何も起こっていない。そのことに、エルーシャは改めて考えることになった。それなら、一体誰がどうして自分をつけているのかを。
「普通のストーカーにしては、すごいのよね……」
「……なるほど」
エルーシャの言葉を聞いて、レイオスは彼女を庇うように立った。
視線を感じる方向はわかっている。そのため、レイオスは相手を挑発することにしたのだ。
「……何者かは知らんが、こそこそしないで出てきたらどうだ?」
「……」
レイオスの呼びかけに、一人の男性が二人の目の前に現れた。
意外にも素直に応えてきたため、二人は少し驚いた。呼びかけて出てくるとは、二人も思っていなかったのだ。
「……お前は、一体何者だ?」
「私は、アルヴェルド王国の者です」
「……何?」
男性の言葉に、二人はさらに驚くことになった。
隣国のアルヴェルド王国の者が、エルーシャをつけていた。その意味を、二人は考える。
しかし、結論はすぐには出てこない。想像できる理由はあるが、確信を持てるようなものではないのだ。
こうして、二人はアルヴェルド王国の男性と出会うのだった。
現在、ズウェール王国はラヴェイスト公爵が新たなる王となり、ラヴェイスト王国へと生まれ変わろうとしている。
そんな激動の中で、エルーシャは新しい仕事を探していた。もう国の中枢に関わるような仕事をしようとは、彼女も思っていない。もっと穏やかな生活を送ろうと思っているのだ。
「……あら?」
そこで、エルーシャはあることに気づいた。何か、視線を感じるのだ。
恐らく、自分をつけてきている者がいる。そう思ったエルーシャは、周囲の様子を見渡した。
しかし、目に入る範囲に人は見つからない。どうやら、相手はかなりきちんと尾行をしてきているようだ。
「……ただのストーカーにしては、尾行が上手すぎるような気がするわね」
エルーシャは、相手がただの人間ではないと思った。それにしては、尾行が上手すぎるからだ。
ということは、相手は何かしらのプロということになる。そんな人間が、どうして自分を尾行するのか、エルーシャは考える。
考えて出た結論は、自分がかつてズウェール王国の中枢にいたという事実から来るものだった。ラヴェイスト王国辺りが、差し向けてきているのだろうか。エルーシャは、そのように考えたのだ。
「さて、どうなるのかしら?」
「……どうかしたのか?」
そんなことを考えながら、エルーシャは目的地に辿り着いていた。
そこにいたレイオスは、彼女の様子に質問をしてきた。彼からすれば、彼女がどうしてこんな様子なのか、まったくわからないのだ。
「レイオス、どうやら私は誰かにつけられているみたいなの? あなたの方は、何かなかった?」
「……いや、特にはない」
エルーシャは、ラヴェイスト王国が自分のことを調べているのなら、レイオスにも同じことが起こっているのではないかと考えていた。
しかし、彼には何も起こっていない。そのことに、エルーシャは改めて考えることになった。それなら、一体誰がどうして自分をつけているのかを。
「普通のストーカーにしては、すごいのよね……」
「……なるほど」
エルーシャの言葉を聞いて、レイオスは彼女を庇うように立った。
視線を感じる方向はわかっている。そのため、レイオスは相手を挑発することにしたのだ。
「……何者かは知らんが、こそこそしないで出てきたらどうだ?」
「……」
レイオスの呼びかけに、一人の男性が二人の目の前に現れた。
意外にも素直に応えてきたため、二人は少し驚いた。呼びかけて出てくるとは、二人も思っていなかったのだ。
「……お前は、一体何者だ?」
「私は、アルヴェルド王国の者です」
「……何?」
男性の言葉に、二人はさらに驚くことになった。
隣国のアルヴェルド王国の者が、エルーシャをつけていた。その意味を、二人は考える。
しかし、結論はすぐには出てこない。想像できる理由はあるが、確信を持てるようなものではないのだ。
こうして、二人はアルヴェルド王国の男性と出会うのだった。
0
お気に入りに追加
2,453
あなたにおすすめの小説
戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜
黄舞
ファンタジー
侯爵令嬢である主人公フローラは、次の聖女として王太子妃となる予定だった。しかし婚約者であるはずの王太子、ルチル王子から、聖女を偽ったとして婚約破棄され、激しい戦闘が繰り広げられている戦場に送られてしまう。ルチル王子はさらに自分の気に入った女性であるマリーゴールドこそが聖女であると言い出した。
一方のフローラは幼少から、王侯貴族のみが回復魔法の益を受けることに疑問を抱き、自ら強い奉仕の心で戦場で傷付いた兵士たちを治療したいと前々から思っていた。強い意志を秘めたまま衛生兵として部隊に所属したフローラは、そこで様々な苦難を乗り越えながら、あまねく人々を癒し、兵士たちに聖女と呼ばれていく。
配属初日に助けた瀕死の青年クロムや、フローラの指導のおかげで後にフローラに次ぐ回復魔法の使い手へと育つデイジー、他にも主人公を慕う衛生兵たちに囲まれ、フローラ個人だけではなく、衛生兵部隊として徐々に成長していく。
一方、フローラを陥れようとした王子たちや、配属先の上官たちは、自らの行いによって、その身を落としていく。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜
津ヶ谷
恋愛
ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。
次期公爵との婚約も決まっていた。
しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。
次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。
そう、妹に婚約者を奪われたのである。
そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。
そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。
次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。
これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。
悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜
見丘ユタ
恋愛
意地悪な双子の姉に聖女迫害の罪をなすりつけられた伯爵令嬢リーゼロッテは、罰として追放同然の扱いを受け、偏屈な辺境伯ユリウスの家事使用人として過ごすことになる。
ユリウスに仕えた使用人は、十日もたずに次々と辞めさせられるという噂に、家族や婚約者に捨てられ他に行き場のない彼女は戦々恐々とするが……彼女を出迎えたのは自称当主の少年だった。
想像とは全く違う毎日にリーゼロッテは戸惑う。「なんだか大切にされていませんか……?」と。
ふしだらな悪役令嬢として公開処刑される直前に聖女覚醒、婚約破棄の破棄?ご冗談でしょ(笑)
青の雀
恋愛
病弱な公爵令嬢ビクトリアは、卒業式の日にロバート王太子殿下から婚約破棄されてしまう。病弱なためあまり学園に行っていなかったことを男と浮気していたせいだ。おまけに王太子の浮気相手の令嬢を虐めていたとさえも、と勝手に冤罪を吹っかけられ、断罪されてしまいます。
父のストロベリー公爵は、王家に冤罪だと掛け合うものの、公開処刑の日時が決まる。
断頭台に引きずり出されたビクトリアは、最後に神に祈りを捧げます。
ビクトリアの身体から突然、黄金色の光が放たれ、苛立っていた観衆は穏やかな気持ちに変わっていく。
慌てた王家は、処刑を取りやめにするが……という話にする予定です。
お気づきになられている方もいらっしゃるかと存じますが
この小説は、同じ世界観で
1.みなしごだからと婚約破棄された聖女は実は女神の化身だった件について
2.婚約破棄された悪役令嬢は女神様!? 開国の祖を追放した国は滅びの道まっしぐら
3.転生者のヒロインを虐めた悪役令嬢は聖女様!? 国外追放の罪を許してやるからと言っても後の祭りです。
全部、話として続いています。ひとつずつ読んでいただいても、わかるようにはしています。
続編というのか?スピンオフというのかは、わかりません。
本来は、章として区切るべきだったとは、思います。
コンテンツを分けずに章として連載することにしました。
悪役令嬢のお姉様が、今日追放されます。ざまぁ――え? 追放されるのは、あたし?
柚木ゆず
恋愛
猫かぶり姉さんの悪事がバレて、ついに追放されることになりました。
これでやっと――え。レビン王太子が姉さんを気に入って、あたしに罪を擦り付けた!?
突然、追放される羽目になったあたし。だけどその時、仮面をつけた男の人が颯爽と助けてくれたの。
優しく助けてくれた、素敵な人。この方は、一体誰なんだろう――え。
仮面の人は……。恋をしちゃった相手は、あたしが苦手なユリオス先輩!?
※4月17日 本編完結いたしました。明日より、番外編を数話投稿いたします。
「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。
木山楽斗
恋愛
平民であるフェルーナは、類稀なる魔法使いとしての才を持っており、聖女に就任することになった。
しかしそんな彼女に待っていたのは、冷遇の日々だった。平民が聖女になることを許せない者達によって、彼女は虐げられていたのだ。
さらにフェルーナには、本来聖女が受け取るはずの報酬がほとんど与えられていなかった。
聖女としての忙しさと責任に見合わないような給与には、流石のフェルーナも抗議せざるを得なかった。
しかし抗議に対しては、「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」といった心無い言葉が返ってくるだけだった。
それを受けて、フェルーナは聖女をやめることにした。元々歓迎されていなかった彼女を止める者はおらず、それは受け入れられたのだった。
だがその後、王国は大きく傾くことになった。
フェルーナが優秀な聖女であったため、その代わりが務まる者はいなかったのだ。
さらにはフェルーナへの仕打ちも流出して、結果として多くの国民から反感を招く状況になっていた。
これを重く見た王族達は、フェルーナに再び聖女に就任するように頼み込んだ。
しかしフェルーナは、それを受け入れなかった。これまでひどい仕打ちをしてきた者達を助ける気には、ならなかったのである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる