「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

７７．爆発する肉体

「こ、これは一体……」
「どうやら、グーゼス様が爆発したようです」
「爆発、ですか……」

　私もマルギアスさんも、突然のことにとても驚いていた。
　まさか、彼が爆発するなんて思っていなかった。もし気づいていなかったら、大変なことになっていた所である。

「し、しかし、これで彼は倒すことができたということですね？」
「え？　ああ、確かにそうですね……」

　マルギアスさんの指摘に、私は気付いた。
　確かに、これでグーゼス様は倒れたということになる。あまりに突然のことで、実感は湧いてこないが、彼は跡形もなく消え去ったのだ。
　色々とあったが、これでやっと彼も解放されたといえるだろうか。恨みはあるが、それは良かったと思う。これ以上、ルミーネによって弄ばれるのは、いくらなんでも悲惨すぎるからだ。

「でも、まだ首謀者のルミーネは捕まっていません。彼女が、また何かしてくる可能性はあるでしょう」
「……あら、そんな風に言わなくてもいいではありませんか」
「……え？」

　そんな風に思っていた私の耳に、とある女性の声が聞こえてきた。
　その声はよく覚えている。ルミーネの声だ。
　私は、ゆっくりと後ろを振り向いた。そこには、確かに彼女がいる。

「なっ……！」
「こ、これは……」
「おっと、どうかしましたか？」

　だが、私の意識はすぐにルミーネ以外のものに向けられることになった。
　彼女の後ろに、とある人物がいるのだ。いや、とある人物達とでもいうべきだろうか。

「久し振りだなあ、ルルメア！」
「会いたかったぜぇ！」
「この積年の恨みを晴らしてやるぜぇ！」

　彼女の後ろには、グーゼス様がいた。先程と同じように巨体の彼がいるのだ。
　しかも、その数は一人ではない。複数いるのだ。同じ顔をした男達は、全員私への恨みを述べている。
　私は、訳がわからなくなっていた。グーゼス様が爆発で消滅していなかっただけなら、まだわかる。だが、どうして同じ顔をした男が、複数いるのだろうか。

「ああ、実験の成果に驚いているんですね？」
「じ、実験？」
「ええ、すごいでしょう？　一人の人間から、こんな風に同一人物を増やせるんです。まあ、最もこんな屑を増やしても意味はないんでしょうが……」

　ルミーネは、笑みを浮かべていた。それは、心底楽しそうな笑みである。
　私は、その笑みに恐怖を感じていた。こんなことをして笑っていられる彼女に対して、私は怒り以上に怖いという感想を抱いていたのだ。
　彼女は、思っていた以上に人の道を踏み外していたようである。