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8.あの場所に来た理由
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私は、スライグさんとセレリアさんとともに大型の乗合馬車に乗っていた。
自己紹介をしてからすぐに馬車が来たのだ。そのため、私はまだ動揺が収まっていない。
「二人は、本当にあのナルキアス商会の……?」
「ええ、そうですよ。というか、兄さんはどうして自己紹介していなかったの? 名刺の一つでも見せれば良かったのに」
「それは、確かにそうなんだが……少しタイミングがなかったんだ」
二人は、アルヴェルド王国でもそれなりに有名な商人一家の人間だったようだ。
まさか、そんな人達がこのズウェール王国に来ているなんて思っていなかった。だから、かなり動揺してしまったのである。
「二人は、どうしてズウェール王国へ?」
「まあ、敵情視察も兼ねた旅行のようなものです」
「旅行ですか……兄妹で旅行なんて、仲が良いんですね」
「いえ、そんなことはありませんよ」
私の言葉に、セレリアさんは首を振って否定した。やはり、兄と仲が良いと言われても、素直に認められないものなのだろうか。
「あ、その顔は私が恥ずかしがっているとか、思っていますね? でも、私がこの旅行について来たのは、必要があったからなんですよ? ちゃんと理由があって、ついて来たのです」
「理由?」
「はい。実は兄さん、方向音痴なんです」
「方向音痴?」
セレリアさんの言葉に、私は驚いた。方向音痴、それは驚くべき理由である。
私は、スライグさんの方を見てみた。すると、彼は少し顔を赤くしている。どうやら、それは本当のことであるようだ。
「セレリア、それは言わない約束だろう?」
「そんな約束をした覚えはないわ……色々と立て込んでいて言わなかったけど、さっきも兄さんが勝手にどこかに行って大変だったんだから」
「え? もしかして……」
「ええ、兄さんがあなたと会ったのは、私とはぐれて迷子になっていたからなんです。馬車に乗らなければならないということだけは覚えていて、なんとかあそこまで辿り着いたようですけど……」
「そ、そうだったんですか?」
「……ええ、まあ」
スライグさんがあそこに現れた事情に、私は少し笑いそうになってしまった。
ということは、あの時私にした質問は、とても重要だったということだろうか。
確かに思い返してみれば、彼はかなり焦っていたような気がする。あれが迷子になっていて不安に溢れていた態度と言われれば、それなりにしっくりくる。
「わ、笑わないでくださいよ」
「い、いえ……その、ごめんなさい」
「いいんですよ、ルルメアさん。存分に笑ってください」
なんというか、スレイグさんは思っていたよりも抜けている所があるようだ。
それは、なんというか微笑ましい。そう思うのは、失礼なのかもしれないが。
自己紹介をしてからすぐに馬車が来たのだ。そのため、私はまだ動揺が収まっていない。
「二人は、本当にあのナルキアス商会の……?」
「ええ、そうですよ。というか、兄さんはどうして自己紹介していなかったの? 名刺の一つでも見せれば良かったのに」
「それは、確かにそうなんだが……少しタイミングがなかったんだ」
二人は、アルヴェルド王国でもそれなりに有名な商人一家の人間だったようだ。
まさか、そんな人達がこのズウェール王国に来ているなんて思っていなかった。だから、かなり動揺してしまったのである。
「二人は、どうしてズウェール王国へ?」
「まあ、敵情視察も兼ねた旅行のようなものです」
「旅行ですか……兄妹で旅行なんて、仲が良いんですね」
「いえ、そんなことはありませんよ」
私の言葉に、セレリアさんは首を振って否定した。やはり、兄と仲が良いと言われても、素直に認められないものなのだろうか。
「あ、その顔は私が恥ずかしがっているとか、思っていますね? でも、私がこの旅行について来たのは、必要があったからなんですよ? ちゃんと理由があって、ついて来たのです」
「理由?」
「はい。実は兄さん、方向音痴なんです」
「方向音痴?」
セレリアさんの言葉に、私は驚いた。方向音痴、それは驚くべき理由である。
私は、スライグさんの方を見てみた。すると、彼は少し顔を赤くしている。どうやら、それは本当のことであるようだ。
「セレリア、それは言わない約束だろう?」
「そんな約束をした覚えはないわ……色々と立て込んでいて言わなかったけど、さっきも兄さんが勝手にどこかに行って大変だったんだから」
「え? もしかして……」
「ええ、兄さんがあなたと会ったのは、私とはぐれて迷子になっていたからなんです。馬車に乗らなければならないということだけは覚えていて、なんとかあそこまで辿り着いたようですけど……」
「そ、そうだったんですか?」
「……ええ、まあ」
スライグさんがあそこに現れた事情に、私は少し笑いそうになってしまった。
ということは、あの時私にした質問は、とても重要だったということだろうか。
確かに思い返してみれば、彼はかなり焦っていたような気がする。あれが迷子になっていて不安に溢れていた態度と言われれば、それなりにしっくりくる。
「わ、笑わないでくださいよ」
「い、いえ……その、ごめんなさい」
「いいんですよ、ルルメアさん。存分に笑ってください」
なんというか、スレイグさんは思っていたよりも抜けている所があるようだ。
それは、なんというか微笑ましい。そう思うのは、失礼なのかもしれないが。
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