5 / 120
5.誘いの理由
しおりを挟む
「セレリア、僕は別にナンパをしている訳じゃあ……」
「旅先で出会った女性に、一緒に旅をしようなんて、ナンパ以外の何物でもないと思うけど?」
「いや、それは……確かに」
セレリアと呼ばれた女性の言葉に、男性は頭を抱えていた。どうやら、彼は自分がしていることがナンパだとはまったく思っていなかったようだ。
ということは、下心なくあの提案をしていたということだろうか。それはそれで、なんというか少し複雑なような気もする。
「す、すみませんでした……いや、別にナンパをしようと思っていた訳では、ないのです。僕はただ、少し気になることがあったというだけで……」
「兄さん、見苦しいわよ?」
「そ、そんなことを言わないでくれ……」
男性は、私に対して平謝りしてきた。それに対して、セレリアさんは呆れたような顔をしている。兄のあまりの態度に、そんな表情になってしまったのだろう。
「すみません。情けない兄で……」
「い、いえ……」
「まあ、こんな人ですけど、一応辛うじて悪い人ではないというか、悪気はなかったというか……」
「あ、はい。それは、理解しています」
セレリアさんも、私に謝ってきた。彼女も、兄のことが嫌いという訳ではないのだろう。その謝罪から、それが読み取れる。
私も、彼のことはだんだんと理解できてきた。彼女の言う通り、悪い人という訳ではないのだろう。
「……というか、ナンパではないなら、どうして私を誘ったのですか?」
「え?」
「旅は道連れというようなことですか?」
「あ、その……」
私の質問に、男性は目をそらした。よくわからないが、それはあまり言いたくない理由であるようだ。
「……失礼かもしれませんが、少し思ったのです。このままあなたを一人にしておくと、いいことが起きないと」
「どういうことですか?」
「あなたは、とても落ち込んでいる。そうではありませんか?」
「それは……」
男性の言葉に、私は少し驚いていた。それを言い当てられるとは思っていなかったからだ。
しかし、考えてみれば、それは当然のことかもしれない。自分でも、そんなに元気ではないことはわかっているからだ。
「もしかしたら、あなたが大変なことをするかもしれない。そのように思ってしまったのです」
「そうですか……」
彼の言う大変なことが何かは理解できた。確かに、落ち込んでいる女性が国を移り住むと言っているという状況を考えると、そのように考えるのもそこまでおかしくないような気がする。
それで心配して、一緒に旅しないか誘った。そんな感じだったようだ。
「旅先で出会った女性に、一緒に旅をしようなんて、ナンパ以外の何物でもないと思うけど?」
「いや、それは……確かに」
セレリアと呼ばれた女性の言葉に、男性は頭を抱えていた。どうやら、彼は自分がしていることがナンパだとはまったく思っていなかったようだ。
ということは、下心なくあの提案をしていたということだろうか。それはそれで、なんというか少し複雑なような気もする。
「す、すみませんでした……いや、別にナンパをしようと思っていた訳では、ないのです。僕はただ、少し気になることがあったというだけで……」
「兄さん、見苦しいわよ?」
「そ、そんなことを言わないでくれ……」
男性は、私に対して平謝りしてきた。それに対して、セレリアさんは呆れたような顔をしている。兄のあまりの態度に、そんな表情になってしまったのだろう。
「すみません。情けない兄で……」
「い、いえ……」
「まあ、こんな人ですけど、一応辛うじて悪い人ではないというか、悪気はなかったというか……」
「あ、はい。それは、理解しています」
セレリアさんも、私に謝ってきた。彼女も、兄のことが嫌いという訳ではないのだろう。その謝罪から、それが読み取れる。
私も、彼のことはだんだんと理解できてきた。彼女の言う通り、悪い人という訳ではないのだろう。
「……というか、ナンパではないなら、どうして私を誘ったのですか?」
「え?」
「旅は道連れというようなことですか?」
「あ、その……」
私の質問に、男性は目をそらした。よくわからないが、それはあまり言いたくない理由であるようだ。
「……失礼かもしれませんが、少し思ったのです。このままあなたを一人にしておくと、いいことが起きないと」
「どういうことですか?」
「あなたは、とても落ち込んでいる。そうではありませんか?」
「それは……」
男性の言葉に、私は少し驚いていた。それを言い当てられるとは思っていなかったからだ。
しかし、考えてみれば、それは当然のことかもしれない。自分でも、そんなに元気ではないことはわかっているからだ。
「もしかしたら、あなたが大変なことをするかもしれない。そのように思ってしまったのです」
「そうですか……」
彼の言う大変なことが何かは理解できた。確かに、落ち込んでいる女性が国を移り住むと言っているという状況を考えると、そのように考えるのもそこまでおかしくないような気がする。
それで心配して、一緒に旅しないか誘った。そんな感じだったようだ。
2
お気に入りに追加
2,456
あなたにおすすめの小説
【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・
婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!
ユウ
恋愛
辺境伯爵次男のユーリには婚約者がいた。
侯爵令嬢の次女アイリスは才女と謡われる努力家で可愛い幼馴染であり、幼少の頃に婚約する事が決まっていた。
そんなある日、長女の婚約話が破談となり、そこで婚約者の入れ替えを命じられてしまうのだったが、婚約お披露目の場で姉との婚約破棄宣言をして、実家からも勘当され国外追放の身となる。
「国外追放となってもアイリス以外は要りません」
国王両陛下がいる中で堂々と婚約破棄宣言をして、アイリスを抱き寄せる。
両家から勘当された二人はそのまま国外追放となりながらも二人は真実の愛を貫き駆け落ちした二人だったが、その背後には意外な人物がいた
「僕より強い奴は気に入らない」と殿下に言われて力を抑えていたら婚約破棄されました。そろそろ本気出してもよろしいですよね?
今川幸乃
恋愛
ライツ王国の聖女イレーネは「もっといい聖女を見つけた」と言われ、王太子のボルグに聖女を解任されて婚約も破棄されてしまう。
しかしイレーネの力が弱かったのは依然王子が「僕より強い奴は気に入らない」と言ったせいで力を抑えていたせいであった。
その後賊に襲われたイレーネは辺境伯の嫡子オーウェンに助けられ、辺境伯の館に迎えられて伯爵一族並みの厚遇を受ける。
一方ボルグは当初は新しく迎えた聖女レイシャとしばらくは楽しく過ごすが、イレーネの加護を失った王国には綻びが出始め、隣国オーランド帝国の影が忍び寄るのであった。
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
妹に婚約者を奪われ、聖女の座まで譲れと言ってきたので潔く譲る事にしました。〜あなたに聖女が務まるといいですね?〜
雪島 由
恋愛
聖女として国を守ってきたマリア。
だが、突然妹ミアとともに現れた婚約者である第一王子に婚約を破棄され、ミアに聖女の座まで譲れと言われてしまう。
国を頑張って守ってきたことが馬鹿馬鹿しくなったマリアは潔くミアに聖女の座を譲って国を離れることを決意した。
「あ、そういえばミアの魔力量じゃ国を守護するの難しそうだけど……まぁなんとかするよね、きっと」
*この作品はなろうでも連載しています。
妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています
今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。
それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。
そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。
当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。
一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる