家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗

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26.現れる兄

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 私とウェリーナお姉様は、しばらくの間リフェルナ様と話した。
 彼女は時々暴走する片鱗を見せつつも、色々な話をしてくれた。
 話によってわかったのは、彼女が本当に兄や姉を愛しているということだ。
 その人達のことを語る時の彼女は、とても楽しそうだった。妹や弟が欲しいと思ったのは、そういった人達から受けた愛を、自分も誰かに与えたいと思ったのだろう。

「……失礼する」

 そんな話が落ち着いた時、部屋の戸を叩く音が聞こえてきた。
 ともに聞こえていた声は、イルフェンお兄様の声だ。結構時間が経ったため、様子を見に来たのだろう。

「イルフェン様、もしかして、そろそろ時間でしょうか?」
「ああ、そうだ。妹達とは話せたか?」
「ええ、お陰様で……」
「そうか。それなら、よかった」

 リフェルナ様が戸を開けると、イルフェンお兄様の顔が見えた。
 二人は、とても穏やかな顔で会話をしている。その様子に、私は思わず笑ってしまう。

「……どうやら、二人とも順調なみたいね」
「ええ、そうみたいですね……」

 私とウェリーナお姉様は、小声でそんな会話をしていた。
 イルフェンお兄様とリフェルナ様の相性は、案外悪くないのだろう。二人が実際に言葉を交わす様子を見ていると、そう思えるのだ。

 初めは、この婚約がどうなるのか心配だった。
 しかし、今は安心しかない。きっと二人は、上手くやっていけるだろう。

「……二人とも、リフェルナ嬢に迷惑をかけてはいないだろうな?」
「ええ、もちろんですよ、お兄様。私達のことを信頼していなかったのですか?」
「別にそういう訳ではない」

 イルフェンお兄様は、私達に話しかけてきた。
 その様子は、いつもと少し違う。流石に、婚約者の前では彼もいつも通りとはいかないようだ。
 それに対して、ウェリーナお姉様は笑みを浮かべている。申し訳ないことではあるが、確かにお兄様のこの様子は少しおかしいものだ。

「イルフェン様、お二人はとてもできた人達でしたよ」
「そうなのか?」
「ええ、楽しくお喋りさせていただきました。イルフェン様のことも、色々と聞かせていただきましたよ」
「……余計なことを言っていないといいのだが」

 お兄様は、硬い表情でそう呟いた。
 冷静なように振る舞っているが、彼は今焦っている。私達が変なことを言っていないか、心配なのだろう。
 だが、基本的に私達はお兄様のことを褒めていた。もちろん、欠点も話したが、そんなに変なことは言っていないはずだ。もっとも、それは私達の基準であり、お兄様の基準からは外れているかもしれないが。
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