家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗

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23.兄の婚約者

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 私とウェリーナお姉様は、イルフェンお兄様の婚約者であるリフェルナ様と会うことになった。
 事前にお兄様から色々と聞いていたため、私もお姉様も結構緊張していた。ただ、彼女が私達に好意的であるということはわかっていたので、その点には安心感はあったのだが。

「初めまして、でよろしいのかしら? もしかしたらどこかで会っていたかもしれないけれど、お互いに面識が会ったとは言い難い訳だし……」
「そうですね、初めましてでいいと思います」
「それなら、改めて初めまして、お二人とも。私は、リフェルナ・ロナッセン。あなた達のお兄様、イルフェン様の婚約者となった者です」

 リフェルナ様は、私達にそのように挨拶してきた。
 その挨拶は、とても丁寧なものだった。まだイルフェンお兄様が言っていたような片鱗は見られない。
 やはり、あれはお兄様の勘違いだったのではないだろうか。大袈裟に言っていた。きっとそうなのだ。

「えっと……私は」
「あなたは、ウェリーナさんね?」
「え? ええ、そうですよ」
「イルフェン様から話は聞いているわ。少し口うるさい所もあるけれど、大切な妹だと……幼い頃は、自分にべったりついて来ていたけれど、最近は甘えられなくなって少し寂しいとも言っていたわね」
「……そ、そうですか」

 私は、自分の考えが間違っていたということを理解した。
 リフェルナ様は、すらすらとウェリーナお姉様のことを語り始めた。その様子は、明らかに普通ではない。

 というか、イルフェンお兄様はなんてことを彼女に話しているのだろうか。
 なんというか、そちらも少し気持ち悪かった。もう少し当たり障りのない話ができなかったものなのだろうか。

 多分、ウェリーナお姉様も二重に引いているのだろう。表情から、それはわかる。
 もっとも、リフェルナ様には悟られていないはずだ。流石に、客人の前でわかりやすく表情を歪めることはないのである。

「仰る通り、私はウェリーナ・サディードと申します。リフェルナ様、これからどうかよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。あなたとは、仲良くしたいと思っています。というのも、私は末っ子で……ずっと妹や弟が欲しいと思っていたのです」
「は、はい……」

 リフェルナ様は、ウェリーナお姉様としっかりと握手を交わした。
 それがかなり力強かったのだろう。お姉様の表情は、少し苦しそうだ。
 そして、それは他人事ではない。次は、ほぼ確実に私の番だ。
 とりあえず私は深呼吸して、息を整える。そもそも、お兄様の婚約者と会うということ自体緊張するものだったので、落ち着く必要があったのだ。
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