誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗

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19.圧倒的な力

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「お前の力は、確かに大したものだ。だが、それでこの我を止めることなどはできん!」

 龍は、こちらに向けてゆっくりと口を開いた。
 そこに魔力が集中して、炎が現れる。その炎は、素早く私の方に向かってくる。

「くっ……」

 私は、魔法によって自分の周りに障壁を作り出す。
 回避することも考えたが、防御することにした。なぜなら、その炎を私が躱せば、それが町に向かって行くからだ。

「……躱せ!」
「……え? あっ……」

 龍の叫びの直後、私の体が大きく後退していく。
 障壁は、私の体を守ってくれている。だが、その衝撃によって私はそのまま後退しているようだ。

 私は、この国で最も魔法の扱いに長けている。
 そんな私でも、いとも簡単に吹き飛ばされていく。それ程に、龍の魔力は凄まじいということなのだろう。
 それは同時に、私が倒れてしまえば、この国に彼を止められる者はいないことを示している。私が倒れたら、この国は滅亡の一途を辿るだろう。

「うぐっ……」

 私は障壁ごと地面に叩きつけられた。
 なんとか火球を消し去ることはできたが、それでもこちらの被害は大きい。魔力を多大に消費してしまったのだ。
 この一瞬だけで、ここまで魔力を消耗する。それがどれ程の実力差を表しているのか。その事実に、私は思わず震えてしまう。

「言ったはずだ。お前では、我を止められないと……所詮、お前は人間の域を出ていない。その程度の力で我に立ち向かおうなどというのは、無謀の極みだ」
「人間の域……」

 龍は、再びゆっくりと口を開いた。
 今度は、その口に泡のようなものができあがる。それは恐らく、安全なものなのだろう。それは、なんとなく察することができる。

「お前を傷つけるつもりはない。しばらくは、その中でじっとしていろ」

 私に向かって、その泡がゆっくりと向かって来た。
 それに対して、私は炎の球を作り出して攻撃する。
 しかし、それはいとも簡単に弾かれる。圧倒的な魔力の差があるようだ。

「私は、人間……なの?」

 その様子に、私はあることを考えていた。
 果たして、私は人間なのだろうか。あの大樹と龍から生まれた私の力が、その領域に収まっているのだろうか。
 そんなはずはない。彼の体にあれ程の魔力が宿っているというなら、私の体にもそれと同等の魔力があるはずだ。

「目覚めて……私の体に宿っている力!」

 私は、再度炎の球を作り出した。
 そこに、私の体に残っている全ての魔力を集中させる。
 龍に対抗するためには、私も人間の域から出なければならない。そのために私は、限界を越えるのだ。
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