誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗

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18.龍との対峙

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 私は、エルドー王国の王都の上空まで来ていた。
 すぐ目の前には、件の龍がいる。その龍は、その二つの眼をこちらに向けてくる。

「……何故、ここに来たのだ?」

 龍は、私にゆっくりとそう呟いた。
 その瞳は、怒りに満ちている。その怒りに身を任せて、彼は暴れているのだろう。

「あなたを止めに来たの」
「何?」

 私は、それを止めなければならない。
 これ以上、彼の八つ当たりを許してはならないだろう。それは、彼自身にとってもいいことではないのだから。

「お前もわかっているはずだ。この国は、あの大樹をあんな姿にしたのだぞ?」
「わかっている……」
「ならば、何故この国を守ろうとする。あの大樹は、お前の母なのだぞ?」

 龍は大きく口を開き、私を威嚇してきた。
 彼の怒りは、とても大きなものであるようだ。その叫びから、それが伝わってくる。

 もしも私が赤の他人であったなら、彼は襲ってきたかもしれない。
 怒りを覚えながらも威嚇で済ませているのは、まだ情が残っているからなのだろう。

「あなたの怒りは理解している……確かに、この国のしたことは許せない」
「ならば、何故だ?」
「でも、あなたが今襲っている人達は何もしていない……あなたは今、罪もない人達を襲っているだけに過ぎない!」
「何……!」

 龍はその顔を歪めていた。それは、私の言葉がある程度理解できているからだろう。
 だが、それに納得はしていない。だからこそ、そんな表情になるのではないだろうか。

「何も知らなかったから、なんだというのだ? このエルドー王国の罪は、ここに暮らしている者達も償うべきことだ」
「違う……それは、八つ当たりでしかない」

 龍の言葉に、私はゆっくりと首を振った。
 彼は今、その怒りに任せて八つ当たりをしているだけだ。それは、復讐ですらない。
 そんなことをしても、彼は傷つくだけだ。それを私は止めなければならないのだ。

「私の魔力で……」
「ぬうっ……?」

 私は、魔力を集中させて一気に解き放つ。
 すると、辺りに雨が降り始めた。その雨が、燃え盛る町の火の勢いを鎮めていく。

「馬鹿な……これ程の魔力が? やはり、彼女の力を受け継いでいるのか……?」

 龍は、私の魔法に驚いているようだった。
 確かに、そうかもしれない。これ程の魔力を持つ者は、そういないだろう。
 だが、私は知っている。龍が、私を越える魔力を持っているということを。

「私は、あなたを止める……」
「ぬうっ……」

 しかし、それでも私は龍に立ち向かう。
 彼自身のために、私は龍と戦うのである。
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