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13.夢の中で

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 私は、真っ暗な空間にぽつりと立っていた。
 ここは、どこなのだろう。そんな風な感想を抱きながら、私はゆっくりと歩き始めた。
 それがなんだかおかしくて、私は自分が夢の中にいると悟った。しかし、目が覚める気配はない。

 精霊の森に戻って来てから、私はあの夢を見なくなっていた。
 それですっかり安心しきっていたが、また変な夢を見てしまっているようだ。

『そこにいるのは誰だ?』
「……え?」

 そこで、私の頭の中に声が響いて来た。
 その野太い男性の声は、私を威嚇している。怒りや憎悪といった感情が、その声ににじみ出ているのだ。

「あなたは、一体……」
『むう……?』

 しかし、私が呼びかけると、その怒りに満ちた声は勢いを失っていた。
 その反応が、少しよくわからない。どうして、私の声だけでその勢いが削がれるのだろうか。

『何故、お前がここにいる?』
「……ここは、一体どこなの?」
『……無意識の内に、迷い込んで来たのか』
「え?」

 男性の言葉に、私は少し混乱した。
 彼が何を言っているのか、まったく理解できなかったからだ。

 だが直後に、ここが夢の中であるということを思い出す。
 夢というものには、訳がわからないものも多い。これも、そういったものなのだろうか。

『まあ、いい。お前がここにいるというのは、好都合だ。お前に告げておく、すぐにエルドー王国を立ち去れ』
「エルドー王国……その国から、私はもう抜け出しているよ」
『何? そうか……』

 私の返答に対して、男性は少し驚いたような声をあげていた。
 ただ、それはどこか嬉しそうにも聞こえる。私がエルドー王国にいない。その事実が、どうして彼にとって嬉しいものなのだろうか。

『ならば、いい……どうやら、我が魔法にはそれなりに効果があったようだな』
「魔法? どういうこと?」
『それは、お前が知らなくてもいいことだ……』

 男性の言葉によって、私の頭の中にはある考えが過っていた。
 私がエルドー王国から出て行くことになった原因。そこに他人が介入する余地があったとすれば、それはあの夢なのではないだろうか。

 魔法によって、夢を見せる。それは、不可能ではないはずだ。
 もしかしたら、この男性は、私に未来の光景を夢として見せていたのだろうか。

 しかし、それをする意図がわからない。
 どうして、私にあんな夢を見せるのか。また、それによって私がエルドー王国を抜け出したのを喜ぶのか。わからない部分が色々とある。

「……あなたは、誰なの?」
『それも、お前は知らなくていいことだ』
「……もしかして、あの龍とか?」
『む……?』

 私は、はっきりと理解していた。
 ここが、ただの夢の中ではないということを。
 恐らく、ここはあの龍の意識の中なのだろう。状況と会話から、私はそんな推測をしたのである。
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