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9.暮らすべき場所

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 兵士達の会話を聞いてから、私はあることを理解することになった。
 それは、あの兵士達の考えは、そこまで珍しいものではないということである。

 今回の出来事によって、私の噂はあることないこと広まっていった。
 多くの人達が、私に対して陰口を叩く。そんな状況に、私は少し辟易としていた。

 私は、この国のために色々なことをしてきたつもりだ。それなのに、どうしてここまで色々と言われなければならないのだろうか。
 そんな疑問を抱えながら、私は毎日を過ごしているのだ。

「また近づいて来ている。でも、まだわからないんだよね……」

 私は、自室の窓から外の景色を眺めていた。
 夜空に輝く赤い星は、ゆっくりとこちらに近づいて来ている。
 その星を見ながら、私は思う。本当に、このままでいいのだろうかと。

 そもそもの話、私はこの国にほぼ強制的に連れて来られた。
 そのまま色々と事情があってこの国で暮らすことになったが、この国にこだわる理由があるという訳ではない。

 人間である私は、人間の世界で暮らすべきだ。
 この国に来てから話を聞いて、私はそう思うようになっていた。

 だが、今となっては考えてしまう。
 森で生まれ育った私は、森で暮らすべきなのではないだろうかと。

「私のことを……皆は受け入れてくれるかな?」

 森で暮らす者達が、私のことを受け入れてくれるかどうかは少し心配だった。
 ただ、皆は話せばわかってくれるように思える。ともに過ごした時間が、私にそう思わせてくれるのだ。

 思えば、そんな風に信頼できる人と私はこの国で出会えていない。
 それはもしかしたら、私がこの国の人々に、変な人だと思われていたからなのだろうか。

「もう私は、子供ではない……あの時のように力がない訳でもない」

 森に帰ろうと思えば、いつでも帰れる。
 私はもう昔とは違う。それができるだけの力も意思もあるのだ。

「よく考えてみれば、あの龍みたいにすればいいんだよね……」

 私は、ゆっくりと自らの体を魔力で包む。
 これで、私の体は人から見えなくなる。丁度、あの龍と同じ手だ。

「さてと……」

 私は、窓をゆっくりと開けて、そこから飛び出す。
 この国の人々には少し申し訳ないが、私は森に帰らせてもらうことにする。
 エルドー王国は、私が暮らすべき場所ではなかった。今回の出来事で、私は強くそう思ってしまった。 
 だから、私は帰るのだ。生まれ育った故郷の森に。

「さようなら、エルドー王国……」

 私は、一直線に森に向かう。
 久し振りの故郷に、私は心を躍らせるのだった。
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