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3.生まれ育った場所

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 精霊の森、エルドー王国の近くにはそう呼ばれる森がある。
 そこは、自然に溢れた静かな場所だ。そののどかな森こそが、私が生まれ育った場所なのである。

「ミレイナ、おはよう」
「おはよう、シャルピード」

 私は、ゆっくりと切り株の上から体を起こした。
 大きな葉っぱの布団は、温もりに溢れている。そこから抜け出すのに少し億劫になりながらも、私はなんとか立ち上がる。

「よく眠れたかい?」
「うん、ぐっすり眠れたよ」
「そうかい。それなら、良かった」

 私の目の前には、一匹の白い狼がいる。
 その狼の名前は、シャルピード。彼は、私の家族のような存在だ。

 私が今起き上がった切り株には、かつて大樹が存在していた。
 その大樹の傍に、私はぽつりと置かれていたらしい。

 そんな私を拾ってくれたのが、シャルピードの両親だったのである。
 それから私は、彼の両親の元で育った。そのため、シャルピードとは兄弟のような関係性なのである。

「不思議なものだ。君がまた、ここにいるというのは……」
「そうだね。私も、そう思うよ……」

 私は、シャルピードとそんな会話を交わしていた。
 私も、今自分がここにいるという事実が少し不思議だった。もう二度と帰って来られない。ここから出る時は、そんなことを思っていたからだ。

 かつて私は、エルドー王国の人間によって、この森から連れ出された。
 森の中で遊んでいた私を兵士が見つけて、そのまま王国に連れて行かれたのだ。

 私は、森に戻りたいと何度も懇願した。
 だが、それは認められなかった。危険だから。そんな理由で、私はこの森に近づくことを禁じられていたのだ。

 エルドー王国で育っていく内に、それがどうしてなのかは理解できた。
 王国側からすれば、子供を森に返すなんて、世論を考えればできなかっただろう。

 増してや、私は多大な魔力を持っていた。
 その魔力が利用できる。王国には、そんな考えもあったのだろう。

「やっぱり、ここは私にとって特別な場所なんだろうね……なんだか、安心するんだ」
「そうかい……すまなかった。ここを守ることができなくて……」
「気にしないで。それは、仕方ないことだよ」

 私にとって、ここにあった大樹は特別なものだった。
 その傍に置かれていた。それだけの関係ではある。
 だが、私にはどうもそれだけには思えない。何か特別な繋がりを感じるのだ。

 そんな大樹は、今は切り株だけになってしまっている。
 それはどうやら、エルドー王国の人間によって伐採されたかららしい。
 この大樹は、魔力に溢れていた。その魔力をエルドー王国は狙ったのだろう。

「結局の所、私はあの国で生きていくことなんて、できなかったんだろうね……こんなひどいことをするんだもの」
「ミレイナ……」

 私は、ゆっくりと切り株を撫でた。
 エルドー王国を離れてから、しばらく経つが、改めて私は実感する。私は、ここで暮らすべき人間だったのだと。
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