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第16話 まだある疑い
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「確かに、まだ可能性なのよね。大丈夫、落ち着くわ」
「……そんな姉さんに告げるのはどうかと思うけど、まだデルケルが怪しいと思える要素があるんだ」
「え? まだあるの?」
デルケルに対しての怒りを鎮めようと思っていた私に、アルスはそんなことを言ってきた。
まさか、まだデルケルに疑う余地があるとは驚きだ。これだけ疑念があると、デルケルが黒幕なのはかなり濃厚なのではないだろうか。
「最近、兵士達がとある人物を探しているんだ」
「とある人物?」
「ああ、女性を探しているらしい。その女性は、顔を包帯で覆っていたり、隠していたりする可能性が高いらしい」
「顔を隠す……」
アルスの言葉に、私は考える。
兵士達が、顔を隠した女性を探している。その情報は、なんだか怪しい。
顔を隠している女性は、私と同じ顔をしているのではないだろうか。
「なんでも、顔に火傷や傷があるから、顔を隠しているらしいよ」
「あ、そうなのね……」
しかし、私の予想はすぐに外れることになった。
なぜなら、顔を隠している理由が火傷や傷だったからだ。
だが、それでも怪しいことには変わりない。例えば、私に似ている顔を潰すために火傷させているという場合もある。
とにかく、その人が実行犯であり、デルケルが追っているということをアルスは言いたいのだろう。
「デルケルが命令して、実行犯の女性を探している?」
「そう考えられると思わないかな?」
「でも、実行犯は国外にでも逃がした方が早いんじゃない? そもそも、どうして逃げているのかしら?」
しかし、私は疑問を感じていた。
どうして、デルケルがその実行犯を始末しようと思ったのだろうか。国外に逃がす方が、早いし簡単なはずだ。
「それは、始末する理由があるからじゃないかな?」
「始末する理由? 口封じのため?」
「それもあるかもしれないけど、僕の考えは少し違う。実行犯は、カルレアを刺す際にやり過ぎて、デルケルの怒りを買ったんだと思うんだ」
「やり過ぎた……もしかして」
アルスの言葉で、私はだんだんとわかってきた。
そういえば、サルミールから気になる証言があったのだ。カルレアが、刺される前に何かを言ったという証言が。
「カルレアが何かを言った結果、実行犯はカルレアを刺さざるを得なかった。例えば、正体がばれたとかかな? だけど、それがデルケルの怒りを買った。彼は、カルレアを愛しているからね。今のように眠られたら、その愛も実らないかもしれない」
「確かに、それなら流れとしてわかりやすいわね……」
私は、アルスの言葉にゆっくりと頷いた。
確かに、アルスの言う通りの流れなら、あり得るだろう。
それが、かなり現実的であるのは、色々な状況から予測できる。
「でも、火傷はなんなのかしら?」
「恐らく、報告しに行ったら、攻撃されて、逃亡したというところかな?」
「なるほど……」
私の疑問に、アルスはそう答えてくれた。
なんだか、実行犯の女性も可哀そうに思えてきた。
命令に従って、カルレアを刺した結果、兵士達に追われるなど、悲惨ではないだろうか。
いや、そもそも、刺す命令を受けて断らなかった時点で、悪ともいえるかもしれない。ただ、実行犯がデルケルの命令を断れなかった可能性もある。
デルケルの地位的に、そういうこともできるのだ。もしそうだとしたら、可哀そうだと思うのである。
「……とりあえず、僕達もその女性のことは探すとしよう。そして、その女性の正体も探らなければならない」
「正体ね……例えば、貴族とかもあるわよね?」
「その可能性もあるね。デルケルが攻撃したところからも、暗殺者である可能性より、高いかもしれない」
「それなら、ここ数日、行方がわからなくなっている貴族の子がいるかを探るべきよね? もし暗殺者なら、その時は素性なんてわかる訳ないから、仕方ないし……」
「ああ、それがいいだろうね」
私達も、デルケルが探している女性を探した方がいいだろう。
その女性を先に見つければ、私の無罪を晴らす証言をしてくれるかもしれない。逃げていることから、その人が私達側についてくれる可能性は高いだろう。
「とりあえず、僕達が得ている情報はこれだけだね。明日から、また頑張ろう」
「ええ」
こうして、私達の情報整理は終わるのだった。
「……そんな姉さんに告げるのはどうかと思うけど、まだデルケルが怪しいと思える要素があるんだ」
「え? まだあるの?」
デルケルに対しての怒りを鎮めようと思っていた私に、アルスはそんなことを言ってきた。
まさか、まだデルケルに疑う余地があるとは驚きだ。これだけ疑念があると、デルケルが黒幕なのはかなり濃厚なのではないだろうか。
「最近、兵士達がとある人物を探しているんだ」
「とある人物?」
「ああ、女性を探しているらしい。その女性は、顔を包帯で覆っていたり、隠していたりする可能性が高いらしい」
「顔を隠す……」
アルスの言葉に、私は考える。
兵士達が、顔を隠した女性を探している。その情報は、なんだか怪しい。
顔を隠している女性は、私と同じ顔をしているのではないだろうか。
「なんでも、顔に火傷や傷があるから、顔を隠しているらしいよ」
「あ、そうなのね……」
しかし、私の予想はすぐに外れることになった。
なぜなら、顔を隠している理由が火傷や傷だったからだ。
だが、それでも怪しいことには変わりない。例えば、私に似ている顔を潰すために火傷させているという場合もある。
とにかく、その人が実行犯であり、デルケルが追っているということをアルスは言いたいのだろう。
「デルケルが命令して、実行犯の女性を探している?」
「そう考えられると思わないかな?」
「でも、実行犯は国外にでも逃がした方が早いんじゃない? そもそも、どうして逃げているのかしら?」
しかし、私は疑問を感じていた。
どうして、デルケルがその実行犯を始末しようと思ったのだろうか。国外に逃がす方が、早いし簡単なはずだ。
「それは、始末する理由があるからじゃないかな?」
「始末する理由? 口封じのため?」
「それもあるかもしれないけど、僕の考えは少し違う。実行犯は、カルレアを刺す際にやり過ぎて、デルケルの怒りを買ったんだと思うんだ」
「やり過ぎた……もしかして」
アルスの言葉で、私はだんだんとわかってきた。
そういえば、サルミールから気になる証言があったのだ。カルレアが、刺される前に何かを言ったという証言が。
「カルレアが何かを言った結果、実行犯はカルレアを刺さざるを得なかった。例えば、正体がばれたとかかな? だけど、それがデルケルの怒りを買った。彼は、カルレアを愛しているからね。今のように眠られたら、その愛も実らないかもしれない」
「確かに、それなら流れとしてわかりやすいわね……」
私は、アルスの言葉にゆっくりと頷いた。
確かに、アルスの言う通りの流れなら、あり得るだろう。
それが、かなり現実的であるのは、色々な状況から予測できる。
「でも、火傷はなんなのかしら?」
「恐らく、報告しに行ったら、攻撃されて、逃亡したというところかな?」
「なるほど……」
私の疑問に、アルスはそう答えてくれた。
なんだか、実行犯の女性も可哀そうに思えてきた。
命令に従って、カルレアを刺した結果、兵士達に追われるなど、悲惨ではないだろうか。
いや、そもそも、刺す命令を受けて断らなかった時点で、悪ともいえるかもしれない。ただ、実行犯がデルケルの命令を断れなかった可能性もある。
デルケルの地位的に、そういうこともできるのだ。もしそうだとしたら、可哀そうだと思うのである。
「……とりあえず、僕達もその女性のことは探すとしよう。そして、その女性の正体も探らなければならない」
「正体ね……例えば、貴族とかもあるわよね?」
「その可能性もあるね。デルケルが攻撃したところからも、暗殺者である可能性より、高いかもしれない」
「それなら、ここ数日、行方がわからなくなっている貴族の子がいるかを探るべきよね? もし暗殺者なら、その時は素性なんてわかる訳ないから、仕方ないし……」
「ああ、それがいいだろうね」
私達も、デルケルが探している女性を探した方がいいだろう。
その女性を先に見つければ、私の無罪を晴らす証言をしてくれるかもしれない。逃げていることから、その人が私達側についてくれる可能性は高いだろう。
「とりあえず、僕達が得ている情報はこれだけだね。明日から、また頑張ろう」
「ええ」
こうして、私達の情報整理は終わるのだった。
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