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21.大変ながらも
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「それで、どうですか? 父上の秘書は」
「お陰様で、楽しくやらせてもらっていますよ。まあ、忙しくはありますが……」
「父上は、助かっていると言っていましたよ」
ミルドレッド男爵の秘書という仕事は、思っていたよりもずっと大変な仕事であった。
貴族としての姿勢をミルドレッド男爵に教える、という部分については問題ないのだが、雑務の方が大変だったのだ。とにかく書類との格闘で、骨が折れる。
「本来であれば、母上が手伝うべきものではあるのですが、昔から病気がちだった故に、父上がなんとかしていたのです。僕も手伝ってはいましたが、こちらはこちらでやらなければならないことが出て来てしまって……」
「実働する人がいりますからね……」
家で書類を処理するミルドレッド男爵の代わりに、マレイド様は動かなければならない問題に対処している。それはそれで、重要な役目だ。彼も次期男爵家の当主として、しっかりと務めているのだ。
しかしその結果にして、ミルドレッド男爵に負担がかかってしまっていた。どうやら私は、それをある程度解消できているらしい。
「でも仕事に関しては、私に任せて良いことなのかと、思ったりするのですけれどね……ミルドレッド男爵家の内情もわかってしまいますし」
「それでも良いと父上は思っているということですよ。何せあなたは、大叔母様と深い関係にありましたからね。信頼できるのだと思います」
「そういうものなのでしょうか?」
「ええ、父上は大叔母様のことをかなり慕っていましたからね。まあ、そういうものでしょう。僕も叔父上や伯母上には両親に話せないことなどを相談することができます」
「そういったことは、私にはよくわかりませんね……いいものですね、家族の繋がりというのは」
マレイド様の言葉に、私は少し悲しい気持ちになっていた。
考えてみれば、お父様の兄弟やお母様の兄弟などのことを、私はほとんど知らない。どうやら私の身内は、繋がりが薄かったようである。それは今まで、意識してこなかったことだ。
「僕達の繋がりだって、きっと家族の繋がりですよ」
「え?」
「マリーサさんは、きっとネセリア嬢のことを娘か孫のように思っていたはずです。失礼だと思って、口には出さなかったのでしょうが……」
「それは……」
マレイド様の言葉に、私は固まっていた。
だが、すぐに笑顔を浮かべることになった。彼のその言葉が、とても嬉しかったのだ。私もマリーサさんのことは、母親や祖母のように思っていたから。
「お陰様で、楽しくやらせてもらっていますよ。まあ、忙しくはありますが……」
「父上は、助かっていると言っていましたよ」
ミルドレッド男爵の秘書という仕事は、思っていたよりもずっと大変な仕事であった。
貴族としての姿勢をミルドレッド男爵に教える、という部分については問題ないのだが、雑務の方が大変だったのだ。とにかく書類との格闘で、骨が折れる。
「本来であれば、母上が手伝うべきものではあるのですが、昔から病気がちだった故に、父上がなんとかしていたのです。僕も手伝ってはいましたが、こちらはこちらでやらなければならないことが出て来てしまって……」
「実働する人がいりますからね……」
家で書類を処理するミルドレッド男爵の代わりに、マレイド様は動かなければならない問題に対処している。それはそれで、重要な役目だ。彼も次期男爵家の当主として、しっかりと務めているのだ。
しかしその結果にして、ミルドレッド男爵に負担がかかってしまっていた。どうやら私は、それをある程度解消できているらしい。
「でも仕事に関しては、私に任せて良いことなのかと、思ったりするのですけれどね……ミルドレッド男爵家の内情もわかってしまいますし」
「それでも良いと父上は思っているということですよ。何せあなたは、大叔母様と深い関係にありましたからね。信頼できるのだと思います」
「そういうものなのでしょうか?」
「ええ、父上は大叔母様のことをかなり慕っていましたからね。まあ、そういうものでしょう。僕も叔父上や伯母上には両親に話せないことなどを相談することができます」
「そういったことは、私にはよくわかりませんね……いいものですね、家族の繋がりというのは」
マレイド様の言葉に、私は少し悲しい気持ちになっていた。
考えてみれば、お父様の兄弟やお母様の兄弟などのことを、私はほとんど知らない。どうやら私の身内は、繋がりが薄かったようである。それは今まで、意識してこなかったことだ。
「僕達の繋がりだって、きっと家族の繋がりですよ」
「え?」
「マリーサさんは、きっとネセリア嬢のことを娘か孫のように思っていたはずです。失礼だと思って、口には出さなかったのでしょうが……」
「それは……」
マレイド様の言葉に、私は固まっていた。
だが、すぐに笑顔を浮かべることになった。彼のその言葉が、とても嬉しかったのだ。私もマリーサさんのことは、母親や祖母のように思っていたから。
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