甘やかされて育った妹が何故婚約破棄されたかなんて、わかりきったことではありませんか。

木山楽斗

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19.起こった問題

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「一体、何があったのですか?」
「舞踏会にて、プレリア嬢が癇癪を起したと」
「癇癪、ですか……」

 屋敷に戻って来た私は、マレイド様から何があったのかを聞いていた。
 妹が癇癪を起した。それを聞いても、私の心は特に動かない。あり得そうなことだと、思ったのだ。

「どうやら、ある令嬢と口論になったらしく、そこでかなり悪辣な言葉を口にしたようです」
「それでリヴェルト伯爵家は、叩かれているということですか?」
「ええ、詳しくはわかりませんが、プレリア嬢の方に非があったようですから」
「まあ、わがままな妹らしいことではありますね……」

 プレリアの身勝手さというものは、今まで外部に対しては抑えられていた。
 恐らくそれは、マリーサさんという人がいたからだ。彼女の言葉はプレリアの芯にまでは届いていなくとも、ある程度の抑止力があったのだろう。

 それがなくなって、プレリアもお父様と同じようにたがが外れたということかもしれない。彼女は基本的に自分の行いを正しいと考えているため、それによって騒ぎを起こしたといった所だろうか。

「とはいえ、これでリヴェルト伯爵家が大打撃を受けるという訳でもないのでしょうね……まあ、私はもう関係がないことですが」
「……確かに、これくらいならまだ問題はないと言えます。ただ、それが積み重なっていくと、どうなるかはわかりません」
「確実にそうなると思います。プレリアもアドミラ様もお父様も、自らを省みることはないでしょうからね……」
「それはなんとも……」

 私の言葉に対して、マレイド様は言葉を途切れさせた。
 彼が何を言おうとしたかは、予想することはできる。多分、どうしようもない人達だと言いたかったのだろう。

 それは別に、言っても良いことである。言葉を止める所からは、マレイド様の人の良さが伝わってくる。
 それとは対照的に、リヴェルト伯爵家の三人には良心というものはない。彼らはきっと、これからも自分勝手に生きていくだろう。その報いは、いつか必ず受けることになるはずだ。

「知らせてくださり、ありがとうございます」
「ああいえ、その、邪魔をしてしまいましたね。大叔母様と話されていたのでしょう?」
「ええ、これからどうしようかと悩んでいた所です」
「そのことについては、父上から話があるそうです。なんでも、何か任せたいことがあるらしく……」
「そうなのですか?」

 私がお墓で話していたことを伝えると、マレイド様からは意外な言葉が返ってきた。
 どうやら、ミルドレッド男爵は既に私のこれからのことを考えてくださっていたらしい。それはありがたい話だ。早速話を伺ってみることにしよう。
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