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17.広い部屋
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ミルドレッド男爵家が用意してくれた部屋は、随分と広いものだった。
私なんかには、勿体ない程の部屋だ。こんな部屋を与えてもらっても、本当に良いのだろうか。
「……あの、どうかされましたか?」
「え? あ、いえ、部屋が広すぎると思ってしまって……」
「そうですか? そこまで大きな部屋という訳ではありませんが……」
私の言葉に対して、マレイド様は目を丸めていた。
彼としては、私の反応の方が驚くべきことであったようだ。
「ネセリア嬢は伯爵令嬢である訳ですし、もっと大きな部屋で暮らしていたのではありませんか?」
「いえ、私はこの部屋の……そうですね、四分の一くらいの広さの部屋で暮らしていました」
「それは……」
「ええ、冷遇されていたということですね」
マレイド様が驚いた理由に、私はすぐに思い至ることはできなかった。
ただ、少し考えたらそれはわかることだったといえる。彼は私が、どこまで冷遇されていたのかをそこまで詳しく知っている訳ではない。
それなら驚くのも無理はないだろう。かつての私は、まともな状態ではなかった。驚かれるものだと、覚えておいた方が良い。
「ひどい話ですね……」
「そうですね……でも、正直な所わからないんですよね。継母と妹については、ある程度理解することはできます。実の娘ではありませんし、腹違いの姉ですから。でも、お父様がどうして私をそこまで冷遇していたのかは不明です」
「そうなのですか……」
私は思わず、疑問を口にしていた。
傍から離れたことで、口が軽くなっているのだろうか。今まではそこまで深く考えていなかった問題が、次々と頭の中に過ってくる。
「まあ、私の実のお母様との仲はあまり良くなかったようですから、その辺りが関係しているのかもしれませんが……」
「それを引きずっているということですか……しかしそれは、父親として最低の考え方ですね」
私の言葉に、マレイド様は辛辣なことを言っていた。
彼の言う通り、私にとってお父様は最低の父親だ。プレリアに関しても、良い父親であるとは言い難い。お父様は妹を甘やかし過ぎだ。
貴族としての才能も父親としての才能もない。それが私のお父様だ。そういえば、良い点というものが思い付かない。お父様には何ができるのだろうか。
「何はともあれ、ありがとうございます。このような部屋を与えてもらえて、感謝しています」
「いいえ、お気になさらず。どうかごゆるりとお過ごしください」
私がお礼を言うと、マレイド様は一礼してから部屋から出て行った。
それから私は、ゆっくりと伸びをする。お言葉に甘えて、ゆっくりと休ませてもらうとしよう。バルーガ様と話すためにベレイン伯爵家の屋敷に行ってから動きっぱなしだ。正直、かなり疲れている。
私なんかには、勿体ない程の部屋だ。こんな部屋を与えてもらっても、本当に良いのだろうか。
「……あの、どうかされましたか?」
「え? あ、いえ、部屋が広すぎると思ってしまって……」
「そうですか? そこまで大きな部屋という訳ではありませんが……」
私の言葉に対して、マレイド様は目を丸めていた。
彼としては、私の反応の方が驚くべきことであったようだ。
「ネセリア嬢は伯爵令嬢である訳ですし、もっと大きな部屋で暮らしていたのではありませんか?」
「いえ、私はこの部屋の……そうですね、四分の一くらいの広さの部屋で暮らしていました」
「それは……」
「ええ、冷遇されていたということですね」
マレイド様が驚いた理由に、私はすぐに思い至ることはできなかった。
ただ、少し考えたらそれはわかることだったといえる。彼は私が、どこまで冷遇されていたのかをそこまで詳しく知っている訳ではない。
それなら驚くのも無理はないだろう。かつての私は、まともな状態ではなかった。驚かれるものだと、覚えておいた方が良い。
「ひどい話ですね……」
「そうですね……でも、正直な所わからないんですよね。継母と妹については、ある程度理解することはできます。実の娘ではありませんし、腹違いの姉ですから。でも、お父様がどうして私をそこまで冷遇していたのかは不明です」
「そうなのですか……」
私は思わず、疑問を口にしていた。
傍から離れたことで、口が軽くなっているのだろうか。今まではそこまで深く考えていなかった問題が、次々と頭の中に過ってくる。
「まあ、私の実のお母様との仲はあまり良くなかったようですから、その辺りが関係しているのかもしれませんが……」
「それを引きずっているということですか……しかしそれは、父親として最低の考え方ですね」
私の言葉に、マレイド様は辛辣なことを言っていた。
彼の言う通り、私にとってお父様は最低の父親だ。プレリアに関しても、良い父親であるとは言い難い。お父様は妹を甘やかし過ぎだ。
貴族としての才能も父親としての才能もない。それが私のお父様だ。そういえば、良い点というものが思い付かない。お父様には何ができるのだろうか。
「何はともあれ、ありがとうございます。このような部屋を与えてもらえて、感謝しています」
「いいえ、お気になさらず。どうかごゆるりとお過ごしください」
私がお礼を言うと、マレイド様は一礼してから部屋から出て行った。
それから私は、ゆっくりと伸びをする。お言葉に甘えて、ゆっくりと休ませてもらうとしよう。バルーガ様と話すためにベレイン伯爵家の屋敷に行ってから動きっぱなしだ。正直、かなり疲れている。
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