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7.気が合う人

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「えっと、それで契約書を作るんですよね?」
「ええ、そのつもりです」
「今から取り掛かりますか?」
「あ、いえ、一度ラルード様のご両親に相談してください。それで了承が得られたら、お互いの家できちんと話し合って、納得がいく契約書を作成しましょう」
「わかりました」

 ラルード様は、とてもいい笑顔で頷いてくれていた。
 彼は、本当にいい人なのだろう。それが表情から伝わってくる。
 しかしよく考えてみれば、私は彼のことをまだそんなに知っている訳ではない。今後のためにも、彼について聞いておいた方がいいのではないだろうか。

「だから今日は、お互いのことを話し合いませんか?」
「お互いのこと、ですか?」
「ええ、結婚するのですから、お互いの好きなものであるとかそういうことは知っておいた方がいいでしょう?」
「なるほど、確かにそれはその通りですね。わかりました。しかし、何から話しましょうか?」

 ラルード様に言われて、私は少し考えることになった。
 確かに、こういう時に何から話すべきかはよくわからない。好きな食べ物とか、言い合えばいいのだろうか。
 ガラルト様は、彼が勝手に自慢話を始めるので、特に私は何も考えていなかった。故に結構、悩んでしまう。

「ご趣味は?」
「趣味ですか……」

 最終的に絞り出せたのは、とても月並みな質問だけだった。
 だが、これは悪い質問ではないだろう。趣味というのは、比較的話も広げやすい話題だ。同じ趣味なら意気投合できるし、知らない趣味なら質問ができる。

「強いて言うなら、読書でしょうか?」
「読書ですか。それは素晴らしい趣味ですね。私も本はそれなりに読みますよ? 恋愛小説なんかを少々……」
「なるほど、僕は推理小説などをよく読みますね」
「ああ、そういうジャンルもいいですね。よろしかったら、おすすめなどを聞かせてもらっても?」
「ええ、もちろんです。それなら僕もいいですか」
「え? それなら、今から持ってきましょうか?」
「……」
「……」

 しばらく会話をしてから、私とラルード様は顔を見合わせていた。
 思っていた以上に、彼との会話が弾んだからだ。
 それは話の内容というだけではない。言葉の速度であるとか、それを話す時の態度であるとか、そういうものが噛み合っているような気がするのだ。

「ふふ、案外気が合うのかもしれませんね。私達は……」
「おやおや、僕は最初からそう思っていましたよ」

 私の言葉に、ラルード様は笑顔を浮かべてくれた。
 気が合うというのは、きっとこういうことをいうのだろう。なんとなくではあるが、彼とはうまくやっていけるような気がする。
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