54 / 54
54
しおりを挟む
私は、イルファー様の元に来ていた。
今日の目的は、レルミアから謝られたことを伝えることだ。
彼女が更生できたのは、ルヴィドのおかげである。その弟が帰って来てくれたのは、イルファー様のおかげだ。
だから、彼女が更生できたのは彼のおかげといえるだろう。そのことについて、改めてお礼を言いたかったのだ。
「イルファー様のおかげで、レルミアは立ち直りました。これで、あの子もきちんとした貴族になってくれると思います。本当にありがとうございました」
「そうか……」
イルファー様は、私の言葉に少しだけ笑みを浮かべてくれた。
レルミアの更生に、彼も喜んでくれているようだ。
よく考えてみれば、イルファー様は妹が歪んでしまった原因を見抜いていた。そんな彼だから、色々と思う所があるのかもしれない。
「……ふむ、これでフォルフィス家も安泰という訳か」
「そうですね……そうなります」
「これで、お前と私の婚約に関する問題もなくなった。婚約者の家が、不安定なら私も困るからな……」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした……」
イルファー様の言葉に、私はとても苦しい気持ちになっていた。
確かに、私達フォルフィス家の人々は彼にとって悩みの種だっただろう。そのことに関しては、本当に申し訳ない。
「ふっ……冗談だ。別に、そのことで困ることはない」
「え?」
そこで、イルファー様は驚くべきことを言ってきた。
まさか、彼が冗談を言うとは思っていなかった。少し笑っているが、その表情も見たことがないものである。
「どうした? この私が冗談など言うはずがないとでも思っているのか?」
「え、ええ、言い辛いのですが、その通りです」
「そうか、そう思っていたか……」
イルファー様の笑みに、私は混乱していた。
この人が、このように笑うなど予想外である。あまり冷静な思考ができない。私は今、とても動揺している。
だが、考えてみれば、彼も最近色々と憑き物が落ちたのだ。こういう柔らかい笑みを浮かべても、おかしくはないのかもしれない。
「さて、それでは、これからもよろしく頼むぞ。私の誇り高き婚約者よ」
「……ええ、わかりました」
私に対して、イルファー様はそのように言ってくれた。
その言葉に、対して私は力強く頷いた。彼となら、きっといい未来を築き上げていけるだろう。
今日の目的は、レルミアから謝られたことを伝えることだ。
彼女が更生できたのは、ルヴィドのおかげである。その弟が帰って来てくれたのは、イルファー様のおかげだ。
だから、彼女が更生できたのは彼のおかげといえるだろう。そのことについて、改めてお礼を言いたかったのだ。
「イルファー様のおかげで、レルミアは立ち直りました。これで、あの子もきちんとした貴族になってくれると思います。本当にありがとうございました」
「そうか……」
イルファー様は、私の言葉に少しだけ笑みを浮かべてくれた。
レルミアの更生に、彼も喜んでくれているようだ。
よく考えてみれば、イルファー様は妹が歪んでしまった原因を見抜いていた。そんな彼だから、色々と思う所があるのかもしれない。
「……ふむ、これでフォルフィス家も安泰という訳か」
「そうですね……そうなります」
「これで、お前と私の婚約に関する問題もなくなった。婚約者の家が、不安定なら私も困るからな……」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした……」
イルファー様の言葉に、私はとても苦しい気持ちになっていた。
確かに、私達フォルフィス家の人々は彼にとって悩みの種だっただろう。そのことに関しては、本当に申し訳ない。
「ふっ……冗談だ。別に、そのことで困ることはない」
「え?」
そこで、イルファー様は驚くべきことを言ってきた。
まさか、彼が冗談を言うとは思っていなかった。少し笑っているが、その表情も見たことがないものである。
「どうした? この私が冗談など言うはずがないとでも思っているのか?」
「え、ええ、言い辛いのですが、その通りです」
「そうか、そう思っていたか……」
イルファー様の笑みに、私は混乱していた。
この人が、このように笑うなど予想外である。あまり冷静な思考ができない。私は今、とても動揺している。
だが、考えてみれば、彼も最近色々と憑き物が落ちたのだ。こういう柔らかい笑みを浮かべても、おかしくはないのかもしれない。
「さて、それでは、これからもよろしく頼むぞ。私の誇り高き婚約者よ」
「……ええ、わかりました」
私に対して、イルファー様はそのように言ってくれた。
その言葉に、対して私は力強く頷いた。彼となら、きっといい未来を築き上げていけるだろう。
21
お気に入りに追加
3,565
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(26件)
あなたにおすすめの小説

王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。
ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」
書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。
今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、
5年経っても帰ってくることはなかった。
そして、10年後…
「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。

【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。
まりぃべる
恋愛
私は公爵令嬢。
この国の高位貴族であるのだから身分に相応しい振る舞いをしないとね。
ちゃんと立場を理解できていない人には、私が教えて差し上げませんと。
え?口うるさい?婚約破棄!?
そうですか…では私は修道院に行って皆様から離れますからどうぞお幸せに。
☆
あくまでもまりぃべるの世界観です。王道のお話がお好みの方は、合わないかと思われますので、そこのところ理解いただき読んでいただけると幸いです。
☆★
全21話です。
出来上がってますので随時更新していきます。
途中、区切れず長い話もあってすみません。
読んで下さるとうれしいです。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……

お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~
マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。
その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。
しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。
貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。
そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
投げっぱなしというか、打ちきりが決まって急いでまとめました感が凄い
感想ありがとうございます。
そう思われたなら、申し訳ありません。
なかなか人物の心理突っ込んでますね。楽しく読んでますが、変換ミスかな
28話の終わりの方で「閑雅」って出てきた辞書で調べちゃったけど意味がつながらない。「考えもしなかった。」ではないでしょか?
ご指摘ありがとうございます。
修正させていただきます。
いくら思うところがあるとはいえ、初対面なのにひとりで会いにいかせるなんて非常識じゃないのかな?ともやもやしています。。
感想ありがとうございます。
確かに、そうかもしれません。