わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
52 / 54

52

しおりを挟む
 私は、ルヴィドとの話を終えて、ベッドで寝転がっていた。
 彼と話したおかげで、私の目は少し覚めていた。だが、ベッドに寝転がると段々と眠気が襲ってくる。
 それなら、ベッドに寝転がらなければいいのだろう。しかし、私はその誘惑に負けていた。
 なぜなら、とても疲れているからだ。正直、もう座っていたくもないのだ。

「本当に、色々なことがあったわね……」

 本当に色々なことがあったが、やっとゆっくり休める。
 やはり、慣れ親しんだ自分の部屋のベッドはとてもいい。ここでなければ、本当の意味で体を休めることなどできないだろう。

「もう眠ろうかしら……」

 そうしていると、自然と瞼が落ちてきた。
 どうやら、そろそろ限界であるようだ。

「失礼します……」
「え?」

 そう思っていた私は、戸を叩く音とある声で瞬時に目を覚ました。
 その声が、私の部屋を訪ねて来る。その事実は、とても驚くべきことだったのだ。
 状況が呑み込めないが、対応しなければならないだろう。これは、絶対に向き合わなければならないことである。

「今、開けるわ」

 戸の傍まで行って、私は一度深呼吸をした。 
 その後、ゆっくりと戸を開けていく。すると、見知った少女の顔が見えてくる。

「……レルミア、どうかしたの?」
「お姉様と、話したいことがあります……」
「そうなのね、入って」

 私の部屋を訪ねて来たのは、妹のレルミアだった。
 この妹と話すのは、随分と久し振りである。なんというか、彼女の印象は随分と違う。前までと比べて、とても穏やかなのである。
 彼女のことは、ルヴィドに任せていたが、その経過は聞いていた。そのため、彼女がとても穏やかになったことは知っている。
 だが、実際に接してみるととても驚いてしまった。短期間で、ここまで人は変わる。その事実に、私はかなり動揺している。

「……」
「……」

 向き合って座ってから、レルミアは何も言わなくなった。
 恐らく、何から切り出すか迷っているのだろう。それは、私も同じだった。彼女になんと声をかけていいのか、まったくわからないのである。
 彼女と私の関係は、あまりいいものではなかった。そのため、簡単に何かを言うことはできないのである。

「あの……」
「あの……」

 だが、このままではいけない。そう思って言葉を出したのだが、レルミアと被ってしまった。
 彼女も同じようなことを考えたのだろう。なんというか、私達はかなり似た者同士だったようだ。
 しかし、考えてみれば、それは正しいことなのかもしれない。私達は姉妹なのだ。本来なら、似ていて当たり前なのである。
 こうして、私と妹の少し気まずい話し合いが始まるのだった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

妹に婚約を押し付けられた辺境伯様は、正体を隠す王宮騎士様でした

新野乃花(大舟)
恋愛
妹であるクレアは、姉セレーナの事を自分よりも格下の男と婚約させようと画策した。そこでクレアは、かねてから評判の悪かった辺境伯をその婚約相手として突き付け、半ば強引にその関係を成立させる。これでセレーナの泣き顔が見られると確信していたクレアだったものの、辺境伯の正体は誰もが憧れる王宮騎士であり、かえって自分の方が格下の男との婚約を受け入れなければならない状況になってしまい…。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...