わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

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 私とイルファー様は、王城のとある一室の前まで来ていた。
 その部屋は、客室であるらしい。

「客室なら、応対中なのですよね? そこにお邪魔したらまずいのではないでしょうか?」
「いや、問題はない。奴から許可は得ている。今日来ている客人は、問題ないそうだ」
「問題ない……そうですか」

 普通に考えると、お客さんが来ているのに私を紹介するというのはおかしな話だ。
 だが、それで第四王子が問題ないというなら、大丈夫なのだろう。その話から、客人が何者なのかは大体察することができる。
 私が来ても問題ないということは、王子にとって近しい人ということだろう。大方、親戚や婚約者などではないだろうか。

「さて……エルクル、私だ」
「あ、兄上。どうぞ、入ってください」
「ああ」

 イルファー様が戸を叩くと、中から男性の声が聞こえてきた。
 その声を聞いてから、イルファー様はゆっくりと戸を開ける。すると、中の様子が見えてくる。
 そこには、二人の人間がいた。一人は、男性である。恐らく、彼が第四王子のエルクル様だろう。
 もう一人は、女性である。その人物か何者かは、すぐにわかった。彼女は、エルクル様の婚約者である。王族の婚約者は把握しているので、顔を見てすぐに理解できたのだ。

「兄上、こちらにおかけください。お互いに、婚約者を紹介しましょう」
「ふっ……お前は、本当に話が早くて助かるな」

 エルクル様の言葉に、私はあることを理解した。
 エルクル様が、とても真面目な人であるということだ。私やイルファー様に対する態度が、とても丁寧である。
 しかも、彼はとても優しそうだ。単純にいい人でもあるのだろう。
 ウォーラス様の時と比べて、イルファー様も穏やかだ。どうやら、彼はできた弟であるらしい。

「さて、それではまずは僕の自己紹介からさせてもらいましょうか。僕は、コルディム王国の第四王子であるエルクルです」
「あ、私はイルファー様と婚約させてもらっているリルミア・フォルフィスです」
「兄上から話は聞いています。これから、よろしくお願いしますね」
「ええ、よろしくお願いします」

 私に対して、エルクル様は丁寧に挨拶してくれた。
 このやり取りでも、彼が真面目なことはわかる。あのウォーラス様とは、正反対の人間だといえるのではないだろうか。

 私の隣にいるイルファー様も、とても落ち着いている。
 比べてみてわかったが、ウォーラス様の時はとても気を張り詰めていたようだ。

 彼が落ち着ているので、私も安心できた。
 今回は、先程と違って落ち着いた話し合いになりそうである。
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