わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

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 私は、イルファー様とともに書庫に来ていた。
 そこで、第三王子のウォーラス様と出会ったのである。

「兄貴は、説教臭いよな? あんたもそう思わないか?」
「え? 私ですか?」

 イルファー様に注意された後、ウォーラス様は私に話しかけてきた。
 その言葉に、私は困惑してしまう。急にこんなことを言わるとは、思っていなかったからだ。

「色々と注意してくるだろう? あんたも大変なんじゃないか?」
「い、いえ、別にそんなことはありませんよ」
「そうなのか? 意外だな……」

 私は、別にイルファー様のことを説教臭いと思ったことはない。
 確かに、色々なことを言っているが、それはとてもためになることである。それに対して、別に不平や不満がある訳でない。
 だが、兄弟であるウォーラス様にとっては、不満なのだろう。兄弟と婚約者では立場が違うので、そう感じるのも仕方ないのかもしれない。

「ウォーラス、あまり私の婚約者を困らせるな……」
「別に困らせてはいないだろう?」
「いや……まあ、いい」

 ウォーラス様に対して、イルファー様は少し呆れていた。
 そんな彼も、中々珍しいものである。兄弟と接している時は、彼も意外に普通の人であるようだ。

「それにしても、兄貴が婚約者を決めてくれて、本当に良かったぜ。俺やエルクルだけが決まっていて、兄貴達が決まっていないというのも変な話だからな」
「え?」
「いや、俺が最初に婚約が決まって、その後にエルクルが決まったんだよ。それで、兄貴達は決まっていなくて、なんだか変な感じだったのさ」
「ああ、そういえば……」

 ウォーラス様の話で、私は思い出していた。
 そういえば、この国の王子達は中々婚約者が決まらなかったのだ。
 国王様が、婚約者は自分で見極めるべきという方針であったためか、それなりに時間がかかっていたようである。
 それで、イルファー様は三番目に婚約者が決まったのだ。弟達より遅かったというのは、色々と心配なことだっただろう。

「……考えてみれば、アロード様には婚約者がいないのですね?」
「む? ああ、まあ、兄上は次期国王筆頭だ。恐らく、婚約者についてもかなり悩んでいるのだろう」
「でも、おかしな話ですね。第一王子の婚約者が決まっていないなんて……」

 そこで、私は違和感を覚えていた。
 第一王子の婚約者が決まっていないなど、とてもおかしな話である。
 アロード様は完璧な人間ではない。だが、優秀な人間ではある。そんな彼が、婚約者を決めていないのは、少しおかしく思えたのだ。
 だが、イルファー様の言う通り、王妃となる人物であるため、悩んでいるのかもしれない。きっと、私の考え過ぎなのだろう。
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