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私は、イルファー様と話していた。
彼の気持ちは、理解できた。だから、私は家に帰ってから、ルヴィドに何も言わないつもりだ。
ただ、態度で示すくらいは許されるだろう。明るい態度でいれば、弟も察してくれるはずである。
「……いい機会だ。お前に、俺の兄弟を紹介しておくか」
「え?」
「兄上だけではなく、俺には弟もいる。丁度今日は、予定が空いているはずだ」
「あ、そうなのですね……」
イルファー様の言葉に、私は少し驚いた。
随分と急なことだったからだ。まさか、今日王子全員と対面するなど、夢にも思っていなかったことである。
「えっと、事前に言っていた方が良かったのではありませんか?」
「問題はない。お前が来るとわかっていたから、弟達にはもしかしたら紹介するかもしれないと言ってあるからだ」
「え? そうだったのですか?」
「そのつもりはあまりなかったが、兄上と会ったからには、全員と会わせておいた方がいいだろう。兄上にだけ紹介して、弟達に紹介しないというのも変な話だろう」
イルファー様は、事前に紹介するかもしれないと、弟達に言っていたらしい。
それなら、私にも言ってくれれば良かったのに。そう思ったが、それは仕方ないことなのだろう。彼も、本当に紹介するつもりはあまりなかったのである。
こんなことになったのは、私がアロード様と会ったからなのだ。本来なら、イルファー様は紹介しないで終わるつもりだった。だが、私が一人会ってしまったから、そうすることになったのだろう。
考えてみれば、王城の廊下ですれ違ったりすれば、紹介せざるを得なくなる。そういう時のために、彼は事前に伝えていたのだろう。
「わかりました。それなら、会わせてもらいます」
「む……緊張しているのか?」
「ええ、緊張しています。急に王子と会わされるとなって、緊張しない人などいないのではないでしょうか?」
「ふん……まあ、そういうものか」
イルファー様は、私を見て少し笑っていた。
その笑顔が、私は少し意外だった。彼が、このように柔らかい表情を見せると思っていなかったからだ。
どうやら、アロード様と和解したことで、彼は少し変わったようである。以前なら、こんな表情は絶対にしなかっただろう。
「……どうかしたのか?」
「あ、いえ、なんでもありません」
「まあ、いい。それでは行くか」
そのことが、私は嬉しかった。
彼が、兄との確執を気にしなくなったなら、それはとても喜ばしいことである。
そんなことを思いながら、私はイルファー様について行くのだった。
彼の気持ちは、理解できた。だから、私は家に帰ってから、ルヴィドに何も言わないつもりだ。
ただ、態度で示すくらいは許されるだろう。明るい態度でいれば、弟も察してくれるはずである。
「……いい機会だ。お前に、俺の兄弟を紹介しておくか」
「え?」
「兄上だけではなく、俺には弟もいる。丁度今日は、予定が空いているはずだ」
「あ、そうなのですね……」
イルファー様の言葉に、私は少し驚いた。
随分と急なことだったからだ。まさか、今日王子全員と対面するなど、夢にも思っていなかったことである。
「えっと、事前に言っていた方が良かったのではありませんか?」
「問題はない。お前が来るとわかっていたから、弟達にはもしかしたら紹介するかもしれないと言ってあるからだ」
「え? そうだったのですか?」
「そのつもりはあまりなかったが、兄上と会ったからには、全員と会わせておいた方がいいだろう。兄上にだけ紹介して、弟達に紹介しないというのも変な話だろう」
イルファー様は、事前に紹介するかもしれないと、弟達に言っていたらしい。
それなら、私にも言ってくれれば良かったのに。そう思ったが、それは仕方ないことなのだろう。彼も、本当に紹介するつもりはあまりなかったのである。
こんなことになったのは、私がアロード様と会ったからなのだ。本来なら、イルファー様は紹介しないで終わるつもりだった。だが、私が一人会ってしまったから、そうすることになったのだろう。
考えてみれば、王城の廊下ですれ違ったりすれば、紹介せざるを得なくなる。そういう時のために、彼は事前に伝えていたのだろう。
「わかりました。それなら、会わせてもらいます」
「む……緊張しているのか?」
「ええ、緊張しています。急に王子と会わされるとなって、緊張しない人などいないのではないでしょうか?」
「ふん……まあ、そういうものか」
イルファー様は、私を見て少し笑っていた。
その笑顔が、私は少し意外だった。彼が、このように柔らかい表情を見せると思っていなかったからだ。
どうやら、アロード様と和解したことで、彼は少し変わったようである。以前なら、こんな表情は絶対にしなかっただろう。
「……どうかしたのか?」
「あ、いえ、なんでもありません」
「まあ、いい。それでは行くか」
そのことが、私は嬉しかった。
彼が、兄との確執を気にしなくなったなら、それはとても喜ばしいことである。
そんなことを思いながら、私はイルファー様について行くのだった。
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