わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
32 / 54

32

しおりを挟む
 私は、王城の客室でイルファー様と話していた。
 彼は、自身と兄との確執を放っておいて欲しいと思っているようだ。
 だが、それではきっと解決しないだろう。自分で解決しようと思っていることなら、彼は既に解決しているはずだからだ。
 だから、私は手を貸したいと思った。おせっかいかもしれないが、兄弟ですれ違っているというのは悲しすぎるからだ。

「イルファー様、私はあなたとアロード様の間に何があったのか、よく知りません」
「ああ……」
「そもそも、私はアロード様という人をよくわかっていません。だから、まずは彼と話させてもらえませんか?」
「何?」

 とりあえず、私はアロード様と話をしてみたかった。
 イルファー様のことは、最近付き合って、ある程度知っている。しかし、私はアロード様のことをほとんど知らないのだ。
 だから、まずはそちらを知りたかった。彼の人なりを知ることができれば、ある程度問題を理解することができるはずだ。

「弟の婚約者を紹介するという形なら、問題なく会えるはずです。思えば、私は国王様などとは既に面識がありますが、あなたの兄弟とは会っていません。そもそも、それは解決しておくべき問題ですよね?」
「……確かに、お前の言う通りだな。私の兄弟と、お前が会っておくことは必要なことだ」

 私が述べた論に、イルファー様は納得してくれた。
 私達が結婚するにあたって、必要なことだから、了承してくれたのだろう。
 これで、アロード様と会うことができる。イルファー様は、本当に話が早くて助かる。

「それなら、構いませんね?」
「ああ……だが、兄上と会いたいというなら、その時を待つ必要はない」
「え?」
「すぐに会えるからだ。お前は運がいい。この日のこの時間を選んだお前は、とてもいい選択をしたといえる」

 しかし、イルファー様は驚くべきことを言ってきた。
 どうやら、今は丁度、アロード様に会える時だったようだ。 
 確かに、それは幸運だろう。事情はよくわからないが、事前に予定を合わせることなく第一王子に会えるなど、まずあり得ないことである。

「兵に案内してもらい、この王城の屋上に行くがいい」
「屋上ですか?」
「ああ、この日のこの時間なら、兄上はそこにいる。そこで、話してくるがいい。私もお前達に対して、無理やり手を差し伸べた。それを返すというなら、私も受け取らない訳にはいかないからな……」
「イルファー様……ありがとうございます」

 私は、イルファー様に頭を下げた。
 私達に恩返しをさせてくれる彼に対して、お礼を言わなければならないと思ったからだ。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

妹に婚約を押し付けられた辺境伯様は、正体を隠す王宮騎士様でした

新野乃花(大舟)
恋愛
妹であるクレアは、姉セレーナの事を自分よりも格下の男と婚約させようと画策した。そこでクレアは、かねてから評判の悪かった辺境伯をその婚約相手として突き付け、半ば強引にその関係を成立させる。これでセレーナの泣き顔が見られると確信していたクレアだったものの、辺境伯の正体は誰もが憧れる王宮騎士であり、かえって自分の方が格下の男との婚約を受け入れなければならない状況になってしまい…。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...