わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

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 ルヴィドに言われてから数日後、私は王城を訪ねていた。
 イルファー様は、私がここに来ることを簡単に了承してくれた。婚約者が訪ねて来るというのは、普通のことなので、それは当然のことである。
 ただ、聡明な彼なら何か予測くらいはしているかもしれない。私が急に王城に行きたいと言った裏には何かある。そういう風に思っているのではないだろうか。

「奴の差し金か?」
「え?」

 客室で会ったイルファー様が最初に言ってきたのは、私に疑いをかける言葉だった。
 奴というのが、誰を指すのかなど言うまでもない。やはり、彼は私がここに来た意味を予測していたようだ。

「……はい。実は、そうなのです」
「やはりか……」

 私は、素直に頷くことにした。
 別に、隠す必要がないと思ったからだ。
 彼本人が、どう思っているのか。それを知るためには、素直に話すのが一番だろう。

「奴に伝えておけ。この私にもう二度と関わるなと。無論、今の奴として関わることは問題ではない。だが、過去の奴として関わることは許されないことだ」
「わかりました。伝えておきます」
「ふん……」

 イルファー様は、少し怒っていた。
 しかし、それは私がここに来たから怒っている訳ではないだろう。多分、ルヴィドがおせっかいをしたこと自体を怒っている訳でもない。
 恐らく、彼はルヴィドが私兵の時に得たものを使っていることに怒っているのだろう。それは、存在しない記憶である。それを使うことは、イルファー様に私兵がいたという事実を裏付けるものだ。

 彼にとって、それは死活問題だろう。王国に秘密にしている兵のことなど、知られたらまずいに決まっている。
 これは、帰って来てから、ルヴィドによく言い聞かせた方がいいのかもしれない。最も、あの弟も既にそれはわかっているだろう。今回が特別だっただけで、二度目はないはずである。

「それで、お前は奴に何を言われてきた?」
「あなたとあなたのお兄様に関する問題を、解決して欲しいと言われてきました」
「兄上との問題……ふん、そんなことはお前達に言われなくてもわかっている。それは、私自身が解決する問題だ」

 私の言葉に、イルファー様は少し語気を荒げていた。
 やはり、彼にとって、それはとても複雑な問題なのだろう。それに踏み込んでもらいたくないという気持ちはわからない訳ではない。

「でも、彼はきっとこう思っているはずです。あなたのおかげで、自分の兄弟に対する確執はなくなった。それなら、あなた自身の確執も解決するべきだと……」
「む……」

 そこで、イルファー様は言葉を詰まらせた。
 私が予測したルヴィドの心に対して、色々と思う所があったのだろう。
 普段は冷たいような態度の時もあるが、彼はルヴィドに対して色々と思っている。色々と話している内にそれがわかってきた。
 だから、弟を持ち出すのは有効的だと思った。少し意地悪だとも思うが。
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