わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
30 / 54

30

しおりを挟む

 イルファー様を見送った後、私はルヴィドと話すことになった。何か話したいことがあるらしいのだ。
 話す場所は、私の部屋になった。誰にも聞かれたくない話であるらしく、個室で話すことになったのだ。

「それで、ルヴィドは何を話したいの?」
「……これは、姉さん以外には話せないことだ。耳を貸し貰えるかい?」
「耳……わかったわ」

 ルヴィドは、私の傍に寄ってきた。
 どうやら、外に漏れないように小声で話すつもりらしい。
 それだけ聞かれたくないと思っているという事実から、ある程度内容は予測である。
 恐らく、彼はイルファー様の私兵だった時に関する話をしようとしているのだ。それは、他の人には絶対に聞かれてはいけないことである。この対応にも、頷けるものだ。

「実は、イルファー様のことで姉さんに頼みたいことがあるんだ」
「イルファー様のこと? 何かしら?」

 私の予想通り、ルヴィドは私兵だった時に関することを話し始めた。
 だが、その内容は少し意外である。彼に関する頼みごとは、一体どういうことなのだろうか。

「イルファー様は、とても聡明なお方だ。だけど、あの人にはある悩み……というか、コンプレックスというのだろうか。そういうものがあるんだ」
「……もしかして、お兄様とのこと?」
「ああ、知っていたんだね? それなら、話が早いかな?」

 ルヴィドの話は、先程イルファー様から聞いたことだった。
 兄との確執のようなもの。それを、ルヴィドは解決して欲しいのだろう。

「イルファー様は、自分を兄に劣る存在だと思っている。それ自体が、悪いことという訳ではないだろう。でも、本人とすれ違っていることは問題だと思うんだ」
「本人?」
「第一王子のアロード様さ。彼本人は、イルファー様との間にある壁に悩んでいるようなんだ」
「アロード様……」

 どうやら、イルファー様は兄であるアロード様とすれ違っているようだ。
 私は、アロード様が具体的にどのような人物かはあまり知らない。だが、弟の口振りからして、弟とわかり合いたいと思っているような人物であるようだ。
 優しい人なのだろうか。いや、弟思いな人なのかもしれない。よくわからないが、悪い人ではないことは確かだろう。

「とにかく、姉さんには二人の間にある確執をなんとかして欲しいんだ」
「なんとか? 私が?」
「ああ、このまま決定的にすれ違っていると、いいことにはならない。その前に、姉さんに止めてもらいたいんだ」

 ルヴィドの言葉に、私は少し悩む。
 もちろん、イルファー様にはお世話になったし、できる限りのことはしてあげたい。だが、そのようなおせっかいをしていいのだろうか。

「とりあえず、一度王城に行ってみたくれないかな? 婚約者である姉さんなら、あそこに普通に行ける。そこで、アロード様と会えば、色々と理解できると思うよ」
「え、ええ……」

 とりあえず、私は王城に行くことにした。
 弟に押し切られたというのもあるが、一旦様子を見てみようと思ったのだ。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。 両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。 だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって…… 覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして? 理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの? ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で… 嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい

木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」 私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。 アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。 これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。 だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。 もういい加減、妹から離れたい。 そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。 だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。

妹に婚約を押し付けられた辺境伯様は、正体を隠す王宮騎士様でした

新野乃花(大舟)
恋愛
妹であるクレアは、姉セレーナの事を自分よりも格下の男と婚約させようと画策した。そこでクレアは、かねてから評判の悪かった辺境伯をその婚約相手として突き付け、半ば強引にその関係を成立させる。これでセレーナの泣き顔が見られると確信していたクレアだったものの、辺境伯の正体は誰もが憧れる王宮騎士であり、かえって自分の方が格下の男との婚約を受け入れなければならない状況になってしまい…。

処理中です...