わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

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 私は、イルファー様と客室で待機していた。
 ルヴィドとレルミアの話が終わるのを待っているのだ。

「……そういえば、イルファー様はどうして、ここまでしてくれるのですか?」
「何?」
「なんだか、イルファー様らしくないというか……こういうと失礼かもしれませんが、あなたは他の家の問題に、積極的に関わる人間ではないと思っていたので……」

 そこで、私は一つ疑問に思ったことを聞いてみた。
 イルファー様は、このフォルフィス家の問題を解決することに、とても協力してくれている。それは、とてもありがたいことだ。
 だが、どうしてそこまでしてくれるのか。それは、少しだけ疑問に思っていたことだ。

 今まで接してきて、イルファー様のことは色々と理解できたと思っている。そんな彼から考えると、今回の行動は少し特殊なように思えてしまうのだ。
 普通なら、彼は他の家の問題にここまで足を踏み込まないだろう。それが例え婚約者の家であっても、変わらないはずだ。

 事実として、彼はレルミアと話すまで、ルヴィドをこのフォルフィス家に帰そうとしていなかった。彼が自ら進言したなら別かもしれないが、何も言わなかったのである。
 そんな彼が、ここまでこの家のことに踏み込んできたのは意外だった。そこまでする理由が、少し気になってしまったのだ。

「私は、基本的に間違いを犯している者がいれば、それを正すつもりでいる。あのグランダの時と同じだ。あくまで、この国の未来を背負う者を……」
「いえ、そういうことではないのです」
「……ほう?」

 イルファー様の言葉を、私は否定した。
 確かに、彼は他者の間違いを正すことはするだろう。だが、それは今回とは少し異なる気がするのだ。

「感覚的な問題かもしれませんが、グランダ様の時のあなたは一歩引いていたような気がするのです。でも、私達の問題にはしっかりと踏み込んできました。まるで、自分の問題であるかのような態度に思えてしまったのです」
「ほう……」
「親身……といえば正しいのでしょうか? そういう風に、私は受け取りました。そういう風な人ではないと思ったので、少し意外に思ったのです」

 私がイルファー様に感じたのは、とても曖昧なものだった。
 しかし、彼の表情から考えると、それは間違っていなかったように思える。とても珍しく、彼が少し暗いような表情をしているのだ。

「……なるほど、確かにそうかもしれないな……」
「もしかして……自覚がなかったのですか?」
「それは、私にもわからない。自覚していて見ないようにしていたのか、自覚していなかったのか。自分でも曖昧なものだ」

 イルファー様は、今まで見たことがない態度をしていた。
 自信に満ち溢れていた彼が、少しだけ遠い目をしているのだ。
 彼にとって、私達に親身になっていたというのは、それ程特別なことだったようだ。
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