わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

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 お父様とお母様と話していると、ルヴィドが入ってきた。
 その訪問者に、お父様もお母様も驚いている。家を出た息子が帰って来たのだ。それは、当然の反応である。
 私も、形式的に驚いておく。彼と再会していた事実は、私と彼とイルファー様の中に留めておかなければならないことだ。二人の前で、私は久し振りに再会したように振る舞わなければならないのである。

「お前は……ルヴィド? ルヴィドなのか?」
「ええ、僕はルヴィドです。お父様、お母様、長い間家を空けて、本当に申し訳ありませんでした」
「帰って来てくれたのね……」

 お父様もお母様も、段々と驚きが歓喜に変わっていった。
 それも、当然の感情である。二人のその過程は、私も味わったものなので、よくわかる。

「……風の噂で、このフォルフィス家の現状を知りました。その間違いの発端である僕が、いつまでも他国で静かに暮らしている場合ではない。そう思い、ここに戻ってきたのです」
「他国に……?」
「まさか、国を出ていたというのか」

 ルヴィドは、他国で暮らしていた。
 それは、彼の今までの経歴を隠すための嘘である。
 恐らく、その嘘は綿密に組まれているのだろう。イルファー様の私兵だったなど、誰にも知られてはならないことである。生半可な嘘ではないだろう。

「し、しかし、戻って来て早々、一体何を言い出しているのだ? お前に間違いがあった訳ではない。全ては、我々の不出来が原因で……」
「いえ、違います。僕にも間違いはありました。僕が弱かったから、教育に耐えられなかったのです」
「それは、我々が厳しすぎたからで……」
「それに、あの時、僕が誰かに相談していれば、あのような選択は取らなかったはずです。僕は極端な選択をしました。それは間違いだったと思っています」
「しかし……」
「お父様、今はルヴィドの言葉を聞いてください。その平行線の議論は、意味がありません」

 ルヴィドの言葉を否定しようとするお父様を、私は止めていた。
 このまま、その話をするのは無駄だと思ったからだ。そういう感情論は決着がつかない。今は、もっと有意義に時間を使うべきだ。


「ルヴィド、あなたは何をしようと思っているの?」
「レルミアの道を正すのは、僕の役目だ。僕でなければならない。彼女を正せるというなら、それはお父様でもお姉様でもない。この僕だ」
「ええ……きっと、そうなのよね」

 私は、ルヴィドの言葉に頷いた。
 あのレルミアを変えられるとしたら、この弟だけだろう。
 この家にいなかった彼だからこそ、彼女を変えられるはずなのだ。
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