わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

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 私は、イルファー様とルヴィドにこの家の事情を話していた。
 全てを聞き終えてから、イルファー様はゆっくりとルヴィドに目を向ける。その視線は、少し厳しいものだ。

「ルヴィド、お前がした行為が、どういうものに繋がったかは理解できたか?」
「はい……理解できました」
「今まで目を逸らし続けてきたことを実感して、お前は何を思っている?」
「僕は……」

 イルファー様がやることができたと言っていた理由が、私は今やっとわかった。
 彼がやるべきこととは、この弟との話だったのだ。
 恐らく、ルヴィドはずっと私達についていたのだろう。だから、あの妹の現状を目撃してしまった。それが、イルファー様が戻ってきたきっかけだったのだ。

「私は、お前がこの家の現状を知ろうとしないことに対して、特に何か言うつもりはなかった。お前は優秀な部下でしかなかったからだ。成果を持って来れば、それ以外のことなどお前に求めるつもりはなかった。そもそも、私には関わりがないことだからな」
「はい……」
「だが、今回、お前はそれを知ってしまった。この俺の傍を離れないという任を守ったために、お前はこの家の現状を知ることになった。それにより、お前が何を考えたかは聞いておかなければならないだろう」
「……わかっています」

 イルファー様の言葉を聞いて、私は自分の考えに確信を持った。
 今回、偶然妹がやって来なければ、彼は普通に帰っていたのだろう。特にルヴィドのことを気にすることもなく、過ごしていたはずである。
 イルファー様は、割り切っていているのだ。ルヴィドは、ただの部下。その個人的な考えに踏み込むつもりはないし、興味もない。そのように考える人なのだろう。
 だが、それを知ったからには、きちんと対応する。ただ、それだけのことだったのだろう。

「この家に戻りたいか?」
「それは……戻れるものなら、戻りたいと思っています。しかし、今の僕は取り返しがつかないようなことを……」
「それが、どうしたというのだ?」
「え?」

 イルファー様の問いかけに、弟は動揺していた。
 彼の心情は理解できる。色々と人に言えないことをしてしまったため、この家に帰って来られない。そう考えることは、別におかしいことではないだろう。
 しかし、それが本当の理由なのかということは、私も疑問に思っていたことだ。今の弟を見ていると、それが本当の理由であるとはどうしても思えないのである。

「結局、お前はそれを言い訳にしているだけだ。単純に、この家に帰ってくるのが怖いのだろう? それを隠すために、その言葉を述べているのだ。それを、お前は恥だとは思わないのか?」
「それは……」

 私の考えていることの答えを、イルファー様が言ってくれた。
 ルヴィドは、言い訳を作っていただけなのである。自分の恐怖心を隠すために、都合がいい言い訳に頼っていたのだ。
 それを、イルファー様はわかっていた。弟の弱い部分は、主にしっかりと見抜かれていたのである。
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