わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

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 イルファー様の言葉によって、グランダ様は去って行った。
 その後ろ姿は、かなり情けないものだった。イルファー様に色々と言われて、とても落ち込んでいるのが見て取れる。

「まったく、あのような者がこの国を支える次世代の人間であるとは、反吐が出る」
「イルファー様」

 グランダ様が去って行った方向を見ながら、イルファー様は忌々しそうに呟いていた。
 その表情には、最早怒りはない。悲しみや侮蔑といった感情の方が大きいのだろう。
 グランダ様は、これからこの国を支えていく人材の一人だ。その人材が腐っていることが、イルファー様は悲しいのだろう。

「でも、イルファー様の言葉で、彼が変わってくれるかもしれませんよ?」
「そうであって欲しいものだ。奴が腐ったままなら、この国に対して大きな損害となる。貴族としての自覚を持ち、少しはましな人間になってもらわなければ、困るのは我々王族だからな」
「そうですね……彼に、それができるのでしょうか?」

 イルファー様が、グランダ様に対してあそこまで真摯に接していたのは、自身にも影響があるからだったようだ。
 確かに、貴族が腐っていれば、その影響はその貴族が管理する領地にも及んでいく。そうなると、困るのはこの国をまとめている王族だろう。
 そう考えると、グランダ様が立ち直ることはかなり重要なことである。しっかりと反省して、立ち直ってもらいたいものだ。

「奴は、まだ期待できる方だ」
「え? そうなのですか?」
「私も、色々な貴族を見てきた。その中にいた悪しき者達のことを思えば、奴はまだましだ。甘ったれているだけだからな。本当に腐っている者は、奴のようにわかりやすい態度ではない。もっと邪悪な者達がこのようには存在しているのだ」
「グランダ様がましですか……でも、なんとなくわかる気はします」

 意外にも、イルファー様はグランダ様に対して期待していた。
 初めは驚いたが、話を聞くと、それはとても納得できるものだった。
 グランダ様は、目に見えてどうしようもない人間だ。だが、そういう人間はまだ目に見えるからいいのである。
 本当に腐っている人間は、表面上はいいように見せて、裏で色々とやっている人間なのだ。そういう貴族のことを思えば、グランダ様など可愛いものなのだろう。

 最も、彼が悪い人間であることは、紛れもない事実である。実際、私は被害を受けているし、擁護することはできない。
 だが、まだやり直せる人間なのだ。本当に、彼にはなんとか更生してもらいものである。
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