わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

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 王子との婚約の話は、どんどんと進んで行った。
 親同士も話し合い、概ねこの婚約は上手くいきそうである。
 レルミアにとって、その結果は嬉しいものではないだろう。だが、いくら抗議しても、お父様もお母様も聞き入れなかった。

 最近は色々と問題ばかりだったが、あの二人は元々、厳しい貴族だった。
 息子を失ったから、甘やかすようになっただけで、その前までは物事をきちんと判断できる貴族だったのである。
 今回に関しては、その二人が戻って来ていた。妹のわがままよりも、家のことを考えて、それを却下できる両親になっているのだ。

「さて、それではどのような話をするとしようか」
「はい……」

 今日は、フォルフィス家の屋敷にイルファー様が訪れていた。
 婚約者となる私に、会いに来てくれたらしい。だが、それは言葉通りに受け取るべきことではないだろう。
 これは恐らく、形式的なものであるはずだ。私と婚約者として親しくしている。それを証明するために、来ただけに過ぎないだろう。

「その……ここで聞いていいかはわかりませんが、私としてはあなたの傍にいるあの子のことについて、少し知りたいのですけど……」
「む?」

 イルファー様の質問に対して、私は明確な答えを持っていた。
 私は、彼に聞きたいことがあったのだ。ルヴィドのことは、先日再会してから、ずっと気になっていたことである。
 婚約の話を進めている時は、それを聞く暇もなかった。二人きりで話せるこの場だからこそ、そのことが聞けるのだ。

「奴のことを話すことは構わん。だが、人に聞かれていい話という訳でもない。故に、私は曖昧なことしか話さないだろう。それでも、構わないか?」
「ええ、それで構いません」

 ルヴィドのことが、話しにくいことであることは私も理解していた。
 彼は、イルファー様の私兵なのだ。それは、人に聞かれていい立場ではない。
 だから、曖昧なことしか話すことができないのだ。彼を特定するようなことは、言ってはならないのである。

「奴について、何が知りたい?」
「あの子と……あなたの出会いなどを聞かせてもらえますか?」
「ほう?」
「それが、あの子の道筋を示すものだと、私は思っています。それを知ることで、私はあの子を理解できるのではないかと思うのです」

 私は、ルヴィドが家を出てから、どうしていたのかを知りたかった。
 それを知るには、まず弟とイルファー様の出会いが聞きたかった。
 家を出て、第二王子と出会う。それは、弟の道筋を知るために、一番重要な部分である。

「いいだろう。それでは、奴との出会いを教えてやる」
「ええ、お願いします……」

 イルファー様は、すぐに頷いてくれた。
 こうして、私は二人の出会いを教えてもらうことになったのである。
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