11 / 54
11
しおりを挟む
王子との婚約の話は、どんどんと進んで行った。
親同士も話し合い、概ねこの婚約は上手くいきそうである。
レルミアにとって、その結果は嬉しいものではないだろう。だが、いくら抗議しても、お父様もお母様も聞き入れなかった。
最近は色々と問題ばかりだったが、あの二人は元々、厳しい貴族だった。
息子を失ったから、甘やかすようになっただけで、その前までは物事をきちんと判断できる貴族だったのである。
今回に関しては、その二人が戻って来ていた。妹のわがままよりも、家のことを考えて、それを却下できる両親になっているのだ。
「さて、それではどのような話をするとしようか」
「はい……」
今日は、フォルフィス家の屋敷にイルファー様が訪れていた。
婚約者となる私に、会いに来てくれたらしい。だが、それは言葉通りに受け取るべきことではないだろう。
これは恐らく、形式的なものであるはずだ。私と婚約者として親しくしている。それを証明するために、来ただけに過ぎないだろう。
「その……ここで聞いていいかはわかりませんが、私としてはあなたの傍にいるあの子のことについて、少し知りたいのですけど……」
「む?」
イルファー様の質問に対して、私は明確な答えを持っていた。
私は、彼に聞きたいことがあったのだ。ルヴィドのことは、先日再会してから、ずっと気になっていたことである。
婚約の話を進めている時は、それを聞く暇もなかった。二人きりで話せるこの場だからこそ、そのことが聞けるのだ。
「奴のことを話すことは構わん。だが、人に聞かれていい話という訳でもない。故に、私は曖昧なことしか話さないだろう。それでも、構わないか?」
「ええ、それで構いません」
ルヴィドのことが、話しにくいことであることは私も理解していた。
彼は、イルファー様の私兵なのだ。それは、人に聞かれていい立場ではない。
だから、曖昧なことしか話すことができないのだ。彼を特定するようなことは、言ってはならないのである。
「奴について、何が知りたい?」
「あの子と……あなたの出会いなどを聞かせてもらえますか?」
「ほう?」
「それが、あの子の道筋を示すものだと、私は思っています。それを知ることで、私はあの子を理解できるのではないかと思うのです」
私は、ルヴィドが家を出てから、どうしていたのかを知りたかった。
それを知るには、まず弟とイルファー様の出会いが聞きたかった。
家を出て、第二王子と出会う。それは、弟の道筋を知るために、一番重要な部分である。
「いいだろう。それでは、奴との出会いを教えてやる」
「ええ、お願いします……」
イルファー様は、すぐに頷いてくれた。
こうして、私は二人の出会いを教えてもらうことになったのである。
親同士も話し合い、概ねこの婚約は上手くいきそうである。
レルミアにとって、その結果は嬉しいものではないだろう。だが、いくら抗議しても、お父様もお母様も聞き入れなかった。
最近は色々と問題ばかりだったが、あの二人は元々、厳しい貴族だった。
息子を失ったから、甘やかすようになっただけで、その前までは物事をきちんと判断できる貴族だったのである。
今回に関しては、その二人が戻って来ていた。妹のわがままよりも、家のことを考えて、それを却下できる両親になっているのだ。
「さて、それではどのような話をするとしようか」
「はい……」
今日は、フォルフィス家の屋敷にイルファー様が訪れていた。
婚約者となる私に、会いに来てくれたらしい。だが、それは言葉通りに受け取るべきことではないだろう。
これは恐らく、形式的なものであるはずだ。私と婚約者として親しくしている。それを証明するために、来ただけに過ぎないだろう。
「その……ここで聞いていいかはわかりませんが、私としてはあなたの傍にいるあの子のことについて、少し知りたいのですけど……」
「む?」
イルファー様の質問に対して、私は明確な答えを持っていた。
私は、彼に聞きたいことがあったのだ。ルヴィドのことは、先日再会してから、ずっと気になっていたことである。
婚約の話を進めている時は、それを聞く暇もなかった。二人きりで話せるこの場だからこそ、そのことが聞けるのだ。
「奴のことを話すことは構わん。だが、人に聞かれていい話という訳でもない。故に、私は曖昧なことしか話さないだろう。それでも、構わないか?」
「ええ、それで構いません」
ルヴィドのことが、話しにくいことであることは私も理解していた。
彼は、イルファー様の私兵なのだ。それは、人に聞かれていい立場ではない。
だから、曖昧なことしか話すことができないのだ。彼を特定するようなことは、言ってはならないのである。
「奴について、何が知りたい?」
「あの子と……あなたの出会いなどを聞かせてもらえますか?」
「ほう?」
「それが、あの子の道筋を示すものだと、私は思っています。それを知ることで、私はあの子を理解できるのではないかと思うのです」
私は、ルヴィドが家を出てから、どうしていたのかを知りたかった。
それを知るには、まず弟とイルファー様の出会いが聞きたかった。
家を出て、第二王子と出会う。それは、弟の道筋を知るために、一番重要な部分である。
「いいだろう。それでは、奴との出会いを教えてやる」
「ええ、お願いします……」
イルファー様は、すぐに頷いてくれた。
こうして、私は二人の出会いを教えてもらうことになったのである。
22
お気に入りに追加
3,565
あなたにおすすめの小説
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
婚約破棄を、あなたのために
月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

貴族の爵位って面倒ね。
しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。
両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。
だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって……
覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして?
理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの?
ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で…
嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる