わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
10 / 54

10

しおりを挟む
 私は、レルミアと話していた。
 王族との婚約が、とても大きなものだと理解したのか、妹の表情は先程に増して曇っている。
 そんなに、私の婚約が気に入らないのだろうか。わがままな妹ではあるが、ここまで落ち込むのは正直意外である。

 今まで、私は彼女がわがままなだけだと思っていた。しかし、この反応を見ると、彼女が私に対して敵意を持っているように見える。
 私のことを嫌っていたとは、少し驚きだ。だが、理解することはできる。お父様やお母様と違って従順ではない私のことを嫌いになるのは、この妹に関しては納得できることだ。

「……もう何も言うことがないなら、私は行くけど、構わないわね?」
「くっ……」
「別に、あなたが何を思っていてもいいけど、もうこれ以上、私に迷惑をかけないでもらえるかしら? お互いに関わらない方が、気分が良くなるとは思わない?」

 そんな妹に対して、私はあることを持ち掛けた。
 お互いに関わらない。それが、今の私達にとって、一番いいことではないだろうか。

 私は、妹に関わっているととても不快になる。それは、レルミアも同じだろう。思い通りにならない私に、不快になるのだ。
 それなら、お互いに関わらなければいい。そうする方が、絶対にいいはずである。無駄に負の感情を燃やさなくていいのだから、心情的にとても楽になるはずだ。

「それは……私に勝ったとでも思っているということですか?」
「は?」
「今回のことだけで、勝ち誇らないでもらいたいものです。私は、必ずあなたより優位に立たせてもらいます。例え、今は負けていても、これから勝たせてもらいます」
「……何を言っているの?」

 レルミアの言葉が、私にはまったく理解できなかった。
 何故、この妹は勝ち負けなどという話を持ち出しているのだろうか。
 今回の件、といよりも、私達の関係に勝ち負けなどある訳がない。どこまで行っても、私達は仲が悪い姉妹というだけだろう。

 まさか、王族と婚約したから勝ちとでも言いたいのだろうか。
 それなら、それは大きな勘違いである。誰と婚約しようとも、それは家のためのことだ。侯爵家であろうと、王族であろうと、家の利益になることは変わらない。
 そこに優劣などはないはずだ。地位が上でも下でも、それは家のためになる。どちらも必要なことだろう。

 もしかして、この妹は単に地位だけを見ているのだろうか。
 王族という地位を持った人と婚約したから勝ち。そのような勝利など、誇れるものではない。それで勝ち誇るなど、私は恥ずかしいことであると思う。
 だが、この妹は違うのかもしれない。そういう風にしか、物事が考えられないのだろうか。
 それは、とても哀れなことである。やはり、レルミアを甘やかすべきではなかっただろう。わがままで視野の狭い妹になってしまったことを、私は悲しく思うのだった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。 二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。 それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。 しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。 調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。

まりぃべる
恋愛
私は公爵令嬢。 この国の高位貴族であるのだから身分に相応しい振る舞いをしないとね。 ちゃんと立場を理解できていない人には、私が教えて差し上げませんと。 え?口うるさい?婚約破棄!? そうですか…では私は修道院に行って皆様から離れますからどうぞお幸せに。 ☆ あくまでもまりぃべるの世界観です。王道のお話がお好みの方は、合わないかと思われますので、そこのところ理解いただき読んでいただけると幸いです。 ☆★ 全21話です。 出来上がってますので随時更新していきます。 途中、区切れず長い話もあってすみません。 読んで下さるとうれしいです。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?

satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません! ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。 憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。 お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。 しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。 お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。 婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。 そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。 いきなりビックネーム過ぎませんか?

処理中です...