わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
6 / 54

しおりを挟む
 イルファー様との話の最中、部屋の奥から弟が現れた。
 失踪していたはずの弟が急に現れて、私は混乱している。
 だが、一つわかることがあった。イルファー様の賭けの相手が、弟であるということだ。
 もしかしたら、今回のこの騒動自体が、弟によって引き起こされたのかもしれない。
 そのような考えが過ったが、結局結論は出ないだろう。事情を知っている二人に、聞いてみるしかないのである。

「どうして、ルヴィドがここに……?」
「簡単な話だ。そこにいるルヴィドは、家を出た後、私が拾った。今は、私の直属の配下として、働いてもらっている。といっても、王国の兵ではないがな……」
「それは……」

 イルファー様の言葉に、私は驚いた。
 王子の直属の配下。しかも、王国の兵ではない。
 要するに、ルヴィドは彼の私兵ということである。家出した後、そのようなことをしていたとは、かなり衝撃的なことだ。
 だが、同時に、どうして見つからなかったかも理解できた。王子の私兵として動いている彼を、普通の方法で見つけ出せるはずはない。

「今回の件にも、彼が絡んでいるのでしょうか?」
「その通りだ。ルヴィドの働きは、目に見張るものがあった。故に、何か褒美を取らせてやることにした。そこで、そいつが提案してきたのがお前と婚約することだったという訳だ」
「私と王子を婚約させる……?」

 やはり、今回の件もルヴィドから持ち掛けたようだ。
 しかし、その提案はあまり理解できないものである。
 どうして、私を王子を婚約させようという結論に達したのだろうか。それに乗ったイルファー様も中々だが、まずルヴィドに聞きたいものである。

「ルヴィド、あなたは一体何を考えていたの?」
「フォルフィス家を出て行った僕が、せめてできることだと思ったんだ。王子との婚約は、フォルフィス家の利益になるだろう?」
「それは、そうだけど……それなら、戻ってくればいいのに」

 ルヴィドは、未だにフォルフィス家の人間として役に立とうとしていた。
 その気持ちは、嬉しいものである。
 だが、その気持ちが残っているなら、家に帰って来て欲しい。そうすることが、フォルフィス家にとって、一番役に立つことである。

「僕は、家に戻るつもりはない。というよりも、もう戻れるような立場ではないんだ」
「どういうこと?」
「イルファー様の私兵として、僕は人に言えないようなことをやってきた。そんな僕は、フォルフィス家に戻れない。もう生きていく世界が違うんだよ」
「生きていく世界が……違う? そんな……」

 私の知らない内に、ルヴィドは違う世界の人間になっていた。
 これまで、この弟は何をしてきたのだろうか。それは、こちらの世界に戻れない程、ひどいことだったのだろうか。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。 二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。 それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。 しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。 調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。

まりぃべる
恋愛
私は公爵令嬢。 この国の高位貴族であるのだから身分に相応しい振る舞いをしないとね。 ちゃんと立場を理解できていない人には、私が教えて差し上げませんと。 え?口うるさい?婚約破棄!? そうですか…では私は修道院に行って皆様から離れますからどうぞお幸せに。 ☆ あくまでもまりぃべるの世界観です。王道のお話がお好みの方は、合わないかと思われますので、そこのところ理解いただき読んでいただけると幸いです。 ☆★ 全21話です。 出来上がってますので随時更新していきます。 途中、区切れず長い話もあってすみません。 読んで下さるとうれしいです。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?

satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません! ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。 憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。 お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。 しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。 お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。 婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。 そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。 いきなりビックネーム過ぎませんか?

処理中です...