わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
4 / 54

しおりを挟む
 念願の暇は、残念ながら手に入らなかった。
 なぜなら、私の婚約が破棄された後、とある人物から呼び出されたからだ。
 その人物は、この国の中でも、とても偉い人物である。そんな人物が、私に何故用があるのだろうか。正直、まったく見当もつかない。

「今日は、わざわざこちらまで出向いてもらってすまなかったな」
「いえ……」

 目の前の人物、第二王子のイルファー様は、あまり表情を変えずにそう言ってきた。
 イルファー様とは、何度か会ったことがある。だが、呼び出される程、親しい関係ではない。
 王族からの呼び出しというのは、中々緊張するものだ。何か、無礼でもあったのかと思ってしまうのである。
 家には、妹という何かやらかしそうな人がいる。だから、とても怖いのだ。

「それで、今日はどうして私を?」
「お前の婚約が破棄されたと聞いたから、お前を呼び出したのだ。ある話を持ち掛けたくてな」
「ある話ですか?」

 この呼び出しは、何か無礼をしたからではないらしい。
 とりあえず、私はそのことに安心する。妹が、何かしたのではなくて、本当に良かった。
 しかし、それなら益々どうして呼び出されたかわからない。持ち掛けたい話とは、一体なんなのだろうか。

「単刀直入に言おう。私と婚約しないか?」
「え?」

 イルファー様の言葉に、私は頭が真っ白になった。
 彼が何を言っているか、まったくわからない。妹の話のように、頭から抜けていくのだ。

「えっと……」
「信じられないようだな。だが、私は事実を言っている。私は、お前に婚約を申し込んでいるのだ」

 二回目の言葉で、私はやっと状況が呑み込めてきた。
 彼は、私に婚約を申し込んできているのだ。
 それが理解できて、私はさらに混乱することになった。第二王子が、いきなり私に婚約を申し込んでくる。どうして、そのようなことになるのだろうか。

「一体、どうしてそのようなことを?」
「お前という人間……正確に言えば、フォルフィス家の人間を妻に迎え入れたかったのだ」
「何故?」
「厳しい教育を受けて育ったフォルフィス家の人間は、とても賢く優れた人間だ。そのような者を妻に欲しい。そのような血を受け継いだ人間を、作り上げたい。そのように思ったのだ」

 フォルフィス家は、厳しい教育をする家として、有名だった。
 それは、かつてのことである。だが、私はその教育を受けた一人だ。
 そういう人間が王家に欲しい。その考え方は、とても利己的な考え方である。
 大方、事情は理解することができた。後は、この婚約について、考えるだけである。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。 二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。 それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。 しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。 調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~

マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。 その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。 しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。 貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。 そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。

価値がないと言われた私を必要としてくれたのは、隣国の王太子殿下でした

風見ゆうみ
恋愛
「俺とルピノは愛し合ってるんだ。君にわかる様に何度も見せつけていただろう? そろそろ、婚約破棄してくれないか? そして、ルピノの代わりに隣国の王太子の元に嫁いでくれ」  トニア公爵家の長女である私、ルリの婚約者であるセイン王太子殿下は私の妹のルピノを抱き寄せて言った。 セイン殿下はデートしようといって私を城に呼びつけては、昔から自分の仕事を私に押し付けてきていたけれど、そんな事を仰るなら、もう手伝ったりしない。 仕事を手伝う事をやめた私に、セイン殿下は私の事を生きている価値はないと罵り、婚約破棄を言い渡してきた。 唯一の味方である父が領地巡回中で不在の為、婚約破棄された事をきっかけに、私の兄や継母、継母の子供である妹のルピノからいじめを受けるようになる。 生きている価値のない人間の居場所はここだと、屋敷内にある独房にいれられた私の前に現れたのは、私の幼馴染みであり、妹の初恋の人だった…。 ※8/15日に完結予定です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観ですのでご了承くださいませ。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

処理中です...