わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

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 念願の暇は、残念ながら手に入らなかった。
 なぜなら、私の婚約が破棄された後、とある人物から呼び出されたからだ。
 その人物は、この国の中でも、とても偉い人物である。そんな人物が、私に何故用があるのだろうか。正直、まったく見当もつかない。

「今日は、わざわざこちらまで出向いてもらってすまなかったな」
「いえ……」

 目の前の人物、第二王子のイルファー様は、あまり表情を変えずにそう言ってきた。
 イルファー様とは、何度か会ったことがある。だが、呼び出される程、親しい関係ではない。
 王族からの呼び出しというのは、中々緊張するものだ。何か、無礼でもあったのかと思ってしまうのである。
 家には、妹という何かやらかしそうな人がいる。だから、とても怖いのだ。

「それで、今日はどうして私を?」
「お前の婚約が破棄されたと聞いたから、お前を呼び出したのだ。ある話を持ち掛けたくてな」
「ある話ですか?」

 この呼び出しは、何か無礼をしたからではないらしい。
 とりあえず、私はそのことに安心する。妹が、何かしたのではなくて、本当に良かった。
 しかし、それなら益々どうして呼び出されたかわからない。持ち掛けたい話とは、一体なんなのだろうか。

「単刀直入に言おう。私と婚約しないか?」
「え?」

 イルファー様の言葉に、私は頭が真っ白になった。
 彼が何を言っているか、まったくわからない。妹の話のように、頭から抜けていくのだ。

「えっと……」
「信じられないようだな。だが、私は事実を言っている。私は、お前に婚約を申し込んでいるのだ」

 二回目の言葉で、私はやっと状況が呑み込めてきた。
 彼は、私に婚約を申し込んできているのだ。
 それが理解できて、私はさらに混乱することになった。第二王子が、いきなり私に婚約を申し込んでくる。どうして、そのようなことになるのだろうか。

「一体、どうしてそのようなことを?」
「お前という人間……正確に言えば、フォルフィス家の人間を妻に迎え入れたかったのだ」
「何故?」
「厳しい教育を受けて育ったフォルフィス家の人間は、とても賢く優れた人間だ。そのような者を妻に欲しい。そのような血を受け継いだ人間を、作り上げたい。そのように思ったのだ」

 フォルフィス家は、厳しい教育をする家として、有名だった。
 それは、かつてのことである。だが、私はその教育を受けた一人だ。
 そういう人間が王家に欲しい。その考え方は、とても利己的な考え方である。
 大方、事情は理解することができた。後は、この婚約について、考えるだけである。
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