わがままな妹の方が可愛いと婚約破棄したではありませんか。今更、復縁したいなど言わないでください。

木山楽斗

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 家に帰ってきた私を迎えてくれたのは、うるさい妹だった。
 彼女は、とても嬉しそうである。私をグランダ様の婚約が破棄されたことを、喜んでいるのだろう。

「お姉様、残念でしたね。グランダ様も、私のものです」
「……そうね」

 レルミアに対して、私はゆっくりと頷いた。
 この妹に対して、反論をするのは簡単だ。だが、それは時間と労力の無駄である。
 だから、早く部屋に帰って休むことだけ考えることにした。肯定していれば、この妹は勝手に満足して帰ってくれるだろう。

「お姉様には、婚約者がいなくなってしまいました。これから、どうするのですか?」
「そうね……」
「どこかの貴族に婚約して欲しいと頼んでみればいいのではないでしょうか? 地位が低い貴族なら、喜んで婚約を受け入れてくれると思いますよ」
「ええ……」

 妹の言葉は、右から左に流れていった。
 そういえば、今日は一日いい天気だった。こういう日は、とても気持ちがいい日だ。
 予定がなければ、日向ぼっこしてゆっくりと体を休めたいものである。明日も、いい天気だったら、そのように過ごしてみようか。

「最も、それはお父様やお母様が認めてくれないでしょうね。自分より地位が低い貴族なんて、婚約する意味がないですもの」
「ええ」
「だから、お姉様はこれからとても大変でしょうね? でも、私はグランダ様とゆっくりさせてもらいます」
「そうね」

 最近は、少し忙しかったので疲れている。
 だが、グランダ様との婚約がなくなったということは、これからは少し暇ができるということだ。
 その暇に、ゆっくり休めるのがとても楽しみである。読みたかった本もあるし、色々なことができそうだ。

「お姉様は、右往左往していればいいのです。私は順風満帆に暮らしますからね」
「ええ」

 久し振りに、お兄様を誘ってお茶をするのもいいかもしれない。
 最も、それはお兄様が暇でなければできないことである。最近、お兄様はどうなのだろうか。後で、部屋を訪ねてみてもいいかもしれない。

「それでは、私はこれで失礼します。精々、頑張ってくださいね、お姉様」
「そうね」

 色々と考えている内に、妹は目の前から消えていた。
 一体、どのようなことを言っていたのだろうか。正直、グランダ様が自分のものだと言われてからの会話をまるで覚えていない。
 大方、私に対して優位に立ったとか、そういう話をしていたのではないだろうか。何故か知らないが、あの妹は私に対して優位に立ちたがる。こちらとしては、迷惑な話だ。
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