2 / 54
2
しおりを挟む
私は、婚約者であるグランダ・オルキンスの元に来ていた。
グランダ様という人間は、あまり優れた人物ではない。少し思い込みが激しく、色々とうるさい人。それが、彼から受ける印象である。
だが、別に彼がどのような人間であろうと構わなかった。貴族として、婚約を結び、家同士を結び付ける使命を忠実に果たすだけ。そのように割り切っているからだ。
「君との婚約を、破棄したいんだ」
「はあ……」
しかし、そんな彼でも、このようなことを言ってくることは予想外だった。
どうやら、彼は思っていた以上に素っ頓狂な人間だったらしい。
よく考えてれみれば、私は彼のことをそこまで深く知っている訳でもなかった。表面上しか見ていなかったため、芯の部分がどういう人間なのかまでは理解していなかったのである。
そのため、このようなとんでもないことを言ってきても、驚くべきではないのかもしれない。彼は、表面上よりも優れた人間ではなかった。そのような評価を下すべきだろう。
「婚約破棄ですか? それは、また急にすごいことを言ってきましたね……」
「君に対して、申し訳ないという気持ちがない訳ではない。でも、僕のこの気持ちは止められないんだ」
「なんだか自分に酔っているみたいですけど、きちんと理由を話して頂けますか?」
彼が、どうしてそのようなことを言い出したのか、それは知っておきたかった。
このような馬鹿げた結論に達したまでの道筋は、純粋に興味がある。一体どうしてこのようなことを言い出したのだろうか。
「実は……君の妹であるレルミアが僕は好きなんだ」
「レルミアを?」
「だから、君と別れて、僕は彼女と一緒になる。彼女も、また僕のことが好きみたいだからね……」
グランダ様の言葉で、私はだんだんと事情が理解できてきた。
恐らく、あのわがままな妹はまた私のものが欲しくなってしまったのだろう。婚約者のいる私が羨ましい。大方、その程度の理由でこの男に告白したのではないだろうか。
結果的に、グランダ様は妹に惹かれたようだ。決定的に、見る目がない男である。
「彼女は、とても可愛い。言って悪いが、君よりもだ」
「あのわがままな妹が、ですか?」
「多少わがままなくらいが可愛いのではないか。君といるより、彼女といる方が楽しそうだ……」
グランダ様の言い分は、まったく理解できなかった。
あのわがままな妹が可愛いなら、もうそれでいい。二人で仲良く暮らしてくれるなら、私としても満足である。
恐らく、この婚約破棄は成立するだろう。わがままな妹が、彼を欲しいと言ったのなら、両親はそれを認めるはずだ。
私としても、この男とこれ以上婚約していたいと思わない。婚約破棄するというなら、喜んで受け入れよう。
グランダ様という人間は、あまり優れた人物ではない。少し思い込みが激しく、色々とうるさい人。それが、彼から受ける印象である。
だが、別に彼がどのような人間であろうと構わなかった。貴族として、婚約を結び、家同士を結び付ける使命を忠実に果たすだけ。そのように割り切っているからだ。
「君との婚約を、破棄したいんだ」
「はあ……」
しかし、そんな彼でも、このようなことを言ってくることは予想外だった。
どうやら、彼は思っていた以上に素っ頓狂な人間だったらしい。
よく考えてれみれば、私は彼のことをそこまで深く知っている訳でもなかった。表面上しか見ていなかったため、芯の部分がどういう人間なのかまでは理解していなかったのである。
そのため、このようなとんでもないことを言ってきても、驚くべきではないのかもしれない。彼は、表面上よりも優れた人間ではなかった。そのような評価を下すべきだろう。
「婚約破棄ですか? それは、また急にすごいことを言ってきましたね……」
「君に対して、申し訳ないという気持ちがない訳ではない。でも、僕のこの気持ちは止められないんだ」
「なんだか自分に酔っているみたいですけど、きちんと理由を話して頂けますか?」
彼が、どうしてそのようなことを言い出したのか、それは知っておきたかった。
このような馬鹿げた結論に達したまでの道筋は、純粋に興味がある。一体どうしてこのようなことを言い出したのだろうか。
「実は……君の妹であるレルミアが僕は好きなんだ」
「レルミアを?」
「だから、君と別れて、僕は彼女と一緒になる。彼女も、また僕のことが好きみたいだからね……」
グランダ様の言葉で、私はだんだんと事情が理解できてきた。
恐らく、あのわがままな妹はまた私のものが欲しくなってしまったのだろう。婚約者のいる私が羨ましい。大方、その程度の理由でこの男に告白したのではないだろうか。
結果的に、グランダ様は妹に惹かれたようだ。決定的に、見る目がない男である。
「彼女は、とても可愛い。言って悪いが、君よりもだ」
「あのわがままな妹が、ですか?」
「多少わがままなくらいが可愛いのではないか。君といるより、彼女といる方が楽しそうだ……」
グランダ様の言い分は、まったく理解できなかった。
あのわがままな妹が可愛いなら、もうそれでいい。二人で仲良く暮らしてくれるなら、私としても満足である。
恐らく、この婚約破棄は成立するだろう。わがままな妹が、彼を欲しいと言ったのなら、両親はそれを認めるはずだ。
私としても、この男とこれ以上婚約していたいと思わない。婚約破棄するというなら、喜んで受け入れよう。
24
お気に入りに追加
3,565
あなたにおすすめの小説

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。
ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」
書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。
今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、
5年経っても帰ってくることはなかった。
そして、10年後…
「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……

お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~
マルローネ
恋愛
サイドル王国の子爵家の次女であるテレーズは、長女のマリアに婚約者のラゴウ伯爵を奪われた。
その後、テレーズは辺境伯カインとの婚約が成立するが、マリアやラゴウは所詮は地方領主だとしてバカにし続ける。
しかし、無知な彼らは知らなかったのだ。西の国境線を領地としている辺境伯カインの地位の高さを……。
貴族としての基本的な知識が不足している二人にテレーズは失笑するのだった。
そしてその無知さは取り返しのつかない事態を招くことになる──。
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?

【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。

婚約破棄された私の結婚相手は殿下限定!?
satomi
恋愛
私は公爵家の末っ子です。お兄様にもお姉さまにも可愛がられて育ちました。我儘っこじゃありません!
ある日、いきなり「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されました。
憤慨したのが、お兄様とお姉さまです。
お兄様は今にも突撃しそうだったし、お姉さまは家門を潰そうと画策しているようです。
しかし、2人の議論は私の結婚相手に!お兄様はイケメンなので、イケメンを見て育った私は、かなりのメンクイです。
お姉さまはすごく賢くそのように賢い人でないと私は魅力を感じません。
婚約破棄されても痛くもかゆくもなかったのです。イケメンでもなければ、かしこくもなかったから。
そんなお兄様とお姉さまが導き出した私の結婚相手が殿下。
いきなりビックネーム過ぎませんか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる