心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
15 / 15

15

しおりを挟む
 私は、ロウィードに告白した。
 その告白に、彼は応えてくれた。
 元々わかっていたことだが、私達は両想いだったのである。
 長年の思いは、やっと実ったのだ。ここまで、本当に長かった。だが、無事に私は彼と結ばれることができたのである。

「俺達、両想いだったんだな……」
(まさか、両想いだったとはな……」
「え、ええ……」

 ロウィードは、私の思いをまったくわかっていなかった。
 知っていたことであるのだが、改めてその事実には驚きである。
 私は、それなりに露骨な態度で接してきたつもりだ。それなのに、何も気づかなかった彼は、かなり鈍感なのではないだろうか。
 最も、それは私が心の声が聞こえるから、そう思うだけなのかもしれない。普通の人の感性はよくわからないので、私が色々と言うのは間違っているだろう。

「お前と出会って、ずっと一緒にいて、これからもずっと一緒にいられるなんて、夢みたいだな……」
(これからも、カルミラと一緒か……嬉しいな)
「ええ、そうね……」

 私達は、ずっと一緒に育ってきた。
 その間に、お互いに思うようになり、こうして結ばれたのだ。
 それは、とても幸福なことである。貴族が愛する相手と結ばれるなど、中々ないことだろう。

 これを成立させられたのは、心の声が聞こえる力のおかげだ。
 この力は、色々と困るものである。だが、役に立つ力でもあるのだ。

 私は、これからもこの力を有用に使っていくつもりである。色々と困らされた分、大いに利益は得させてもらう。
 私にとって、一番の利益とはロウィードと幸せな道を歩んで行くことだ。だから、私はそのためにこの力を使う。

 ロウィードは、とても素直な男だ。
 そんな彼が、貴族社会でひどい目に合ったりしないようにするためには、この力は絶対に役に立つはずである。
 私がいる限り、ロウィードは安泰だ。彼を騙そうとしてくる者など、私にはすぐにわかる。何かあっても、この力で彼を守っていくのだ。

 彼を守ることは、私自身を守ることである。
 ずっと隣にいて欲しい存在を支えることに、全力を尽くす。私は、そう決意するのだった。

「カルミラ、これからもよろしくな」
(よし……これから、楽しい毎日が続きそうだな)
「ええ、よろしく、ロウィード」
「ああ……」
(本当に、可愛いなこいつ……)

 私は、ロウィードにいつもの笑顔を向けた。
 すると、彼は私のことを褒めてくれる。その心の声を聞く度に、私は元気になれるのだ。
 こうして、私は自分が一番欲していた人を、手に入れることができたのだった。
しおりを挟む
感想 10

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(10件)

セライア(seraia)

両想いハッピーエンド🎉

もしかして、2人とも初恋❓😆

2021.04.25 木山楽斗

感想ありがとうございます。
初恋だと思います。

解除
セライア(seraia)

さて、心の声が聞こえることを明かさずに婚約しちゃったけど、どうするのかな❓😳
明かさない(一生隠す)方がいい場合も有るけれど。。。😔

2021.04.24 木山楽斗

感想ありがとうございます。
どういう選択をしたのかは、今後明かしていければと思っています。

解除
セライア(seraia)

ロウィ-ド・・・まっすぐすぎるからこそ色々とやらかすんじゃないかと 親戚のおばちゃん気分でハラハラしてしまう💦

2021.04.20 木山楽斗

感想ありがとうございます。
確かに、少し心配な人かもしれません。

解除

あなたにおすすめの小説

婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった

神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》 「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」 婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。 全3話完結

婚約なんてするんじゃなかったが口癖の貴方なんて要りませんわ

神々廻
恋愛
「天使様...?」 初対面の時の婚約者様からは『天使様』などと言われた事もあった 「なんでお前はそんなに可愛げが無いんだろうな。昔のお前は可愛かったのに。そんなに細いから肉付きが悪く、頬も薄い。まぁ、お前が太ったらそれこそ醜すぎるがな。あーあ、婚約なんて結ぶんじゃなかった」 そうですか、なら婚約破棄しましょう。

私よりも姉を好きになった婚約者

神々廻
恋愛
「エミリー!お前とは婚約破棄し、お前の姉のティアと婚約する事にした!」 「ごめんなさい、エミリー.......私が悪いの、私は昔から家督を継ぐ様に言われて貴方が羨ましかったの。それでっ、私たら貴方の婚約者のアルに恋をしてしまったの.......」 「ティア、君は悪くないよ。今まで辛かったよな。だけど僕が居るからね。エミリーには僕の従兄弟でティアの元婚約者をあげるよ。それで、エミリーがティアの代わりに家督を継いで、僕の従兄と結婚する。なんて素敵なんだろう。ティアは僕のお嫁さんになって、2人で幸せな家庭を築くんだ!」 「まぁ、アルったら。家庭なんてまだ早いわよ!」 このバカップルは何を言っているの?

婚約破棄をしたいそうですが、却下します

神々廻
恋愛
私は公爵令嬢で一人娘。跡取りは私だけですので婿を貰わ無ければなりません。ですので、私のお母様の親友の伯爵夫人の息子と幼い時に婚約を結びました。 ですけれど、婚約者殿は私の事がお嫌いな様でドタキャンしたり、仮病を使ったりと私の事がお嫌いなご様子。 14歳で貴族の学校に通うことになりましたが婚約者殿は私と話して下さらない。 挙句の果てには婚約破棄を望まれるし....... 私は悲しいです

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。 私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。 彼の姉でなく、私の姉なのにだ。 両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。 そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。 寄り添うデイリ様とお姉様。 幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。 その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。 そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。 ※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。 ※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。 ※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!

【完結】愛くるしい彼女。

たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。 2023.3.15 HOTランキング35位/24hランキング63位 ありがとうございました!

婚約者の座は譲って差し上げます、お幸せに

四季
恋愛
婚約者が見知らぬ女性と寄り添い合って歩いているところを目撃してしまった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。