心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
12 / 15

12

しおりを挟む
 ドルビン様と婚約破棄してから、私はしばらくゆっくりとしていた。
 そろそろ、お父様も私の婚約について考えている頃だろう。だから、私も行動を開始するべき時である。

「失礼します」
「む……入ってもいいぞ」
(カルミラか……何かあったのか?)

 私は、再びお父様の執務室を訪れていた。
 ここで、彼に色々と助言するのが私の目的なのである。

「お父様、私の婚約に関して少々話したいことがあるのです」
「話したいこと?」
(ほう? カルミラからそれを言ってくるとは……)
「私は、とある人物を婚約者にしたいと思っています。少し話を聞いてもらえますか?」
「……わかった。話してくれ」
(婚約者にしたい人物? まさか……)

 私の言葉に、お父様は少しだけ驚いていた。
 しかし、それは私が思っていた反応ではない。もっと、驚くと思っていたのである。
 もしかして、お父様は私が何を言い出すか察しているのだろうか。心の声が聞こえる訳でもないのに、そこまで予測していたなら、それはとてもすごいことである。

「ロウィードはどうでしょうか?」
「ロウィードか……」
(やはり、ロウィードか……)

 本当に、お父様は私の心を見抜いていたようだ。
 恐らく、前回のアピールからそう予想していたのだろう。だが、それは構わない。私も、ばれていいつもりでそう言ったからだ。

「彼は、私のことをいつも助けてくれました。そんな彼と、私は婚約したいと思っています」
「それは……」
(それは……)
「私は婚約破棄しました。複雑な立場にあります。そんな私の婚約者は、中々見つからないでしょう。ですが、ロウィードなら受け入れてくれます。彼の両親は、私と彼が結ばれるのを望んでいるようですから……」
「ふむ……」
(我が娘ながら、中々恐ろしいな……まさか、そこまで考えての提案とは……)

 お父様は、私の思考に感心していた。
 だが、私は別にすごいことをしている訳ではない。心の声が聞こえているから、この思考に至っているだけである。最も、この能力がすごいといえるのかもしれないが。

「確かに、お前の言っていることは正しい。その婚約の選択肢は、私も考えていたからだ」
(ふむ……ここは、話に乗ってもいいか。どうなるかはわからないが、そこまで悪くない選択だろう)
「そうですか」
「とりあえず、そういう風に話を進めておこう。近日中には、動きがあるはずだ」
(さて、これからどうなるか。まあ、進めてからだな……)
「はい、わかりました」

 お父様は、私の話を受け入れてくれた。
 とりあえず、話を進めてみるという感じだ。
 それなら、私も構わない。結局は、あちらの同意が得られなければならないので、それは望む所である。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった

神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》 「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」 婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。 全3話完結

婚約なんてするんじゃなかったが口癖の貴方なんて要りませんわ

神々廻
恋愛
「天使様...?」 初対面の時の婚約者様からは『天使様』などと言われた事もあった 「なんでお前はそんなに可愛げが無いんだろうな。昔のお前は可愛かったのに。そんなに細いから肉付きが悪く、頬も薄い。まぁ、お前が太ったらそれこそ醜すぎるがな。あーあ、婚約なんて結ぶんじゃなかった」 そうですか、なら婚約破棄しましょう。

私よりも姉を好きになった婚約者

神々廻
恋愛
「エミリー!お前とは婚約破棄し、お前の姉のティアと婚約する事にした!」 「ごめんなさい、エミリー.......私が悪いの、私は昔から家督を継ぐ様に言われて貴方が羨ましかったの。それでっ、私たら貴方の婚約者のアルに恋をしてしまったの.......」 「ティア、君は悪くないよ。今まで辛かったよな。だけど僕が居るからね。エミリーには僕の従兄弟でティアの元婚約者をあげるよ。それで、エミリーがティアの代わりに家督を継いで、僕の従兄と結婚する。なんて素敵なんだろう。ティアは僕のお嫁さんになって、2人で幸せな家庭を築くんだ!」 「まぁ、アルったら。家庭なんてまだ早いわよ!」 このバカップルは何を言っているの?

婚約破棄をしたいそうですが、却下します

神々廻
恋愛
私は公爵令嬢で一人娘。跡取りは私だけですので婿を貰わ無ければなりません。ですので、私のお母様の親友の伯爵夫人の息子と幼い時に婚約を結びました。 ですけれど、婚約者殿は私の事がお嫌いな様でドタキャンしたり、仮病を使ったりと私の事がお嫌いなご様子。 14歳で貴族の学校に通うことになりましたが婚約者殿は私と話して下さらない。 挙句の果てには婚約破棄を望まれるし....... 私は悲しいです

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

【完結】愛くるしい彼女。

たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。 2023.3.15 HOTランキング35位/24hランキング63位 ありがとうございました!

婚約者の座は譲って差し上げます、お幸せに

四季
恋愛
婚約者が見知らぬ女性と寄り添い合って歩いているところを目撃してしまった。

婚約して三日で白紙撤回されました。

Mayoi
恋愛
貴族家の子女は親が決めた相手と婚約するのが当然だった。 それが貴族社会の風習なのだから。 そして望まない婚約から三日目。 先方から婚約を白紙撤回すると連絡があったのだ。

処理中です...