心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗

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 私は、ロウィードと屋敷に戻って来ていた。
 今から、父に対して婚約破棄したことなどを報告するのだ。

「失礼します……」
「ああ、入ってくれ……」
(来たか……)

 私は、父の執務室の戸を叩いた。
 すると、中から重苦しい声が聞こえてくる。
 ちなみに、父には事前に話を通してある。何も言わないより、話が早いと思ったからだ。
 だから、父の声は重苦しい。どのような結果になったか、とても気になっているのだろう。

「失礼します。お父様、ドルビン様との結果をお伝えに来ました」
「ああ……」
(ふう……一体、どうなったか)

 お父様は、とても緊張していた。
 そんな彼に、婚約破棄のことを告げなければならないのは、とても心苦しい。
 だが、事実として起こってしまったことなので、躊躇う理由もない。早く言って、存分に落ち込んでもらうことにしよう。

「ドルビン様は、浮気していました。エンリアという子爵令嬢と関係を持っていたのです。そんな彼との婚約は破棄させてもらいます。既に、彼には婚約破棄すると言いました」
「そうか……」
(まさか、本当に浮気していたとは……まったく、どういう神経をしているのだか……うう、これでまた色々と問題が……ああ……)

 お父様は、目を瞑りながらゆっくりと声を出していた。
 その心の声は、とても悲しそうである。ドルビン様への失望や、アルスーバ侯爵家との婚約がなくなったこと、色々と思う所があるのだろう。
 しかし、私の話はこれで終わりではない。お父様に対して、まだ色々と言わなければならないことがあるのだ。

「お父様、今回の事件ではこのロウィードが協力してくれました。彼は、とても頼りになる人です」
「む……ロウィード、娘がお世話になったようだな。私からも、礼を言っておこう。ありがとう」
(ロウィードか……いつも、娘が世話になっているな。本当に、彼には感謝しなければならない……ただ、その恩をどう返すべきか)
「いえ、俺はほとんど何もできていません……」
(俺は、あまり何もできなかったよな……)

 とりあえず、お父様にはロウィードが協力してくれたことを伝えておいた。
 それは、これからの布石である。今はまだ伝える時ではないが、これが後に繋がっていくはずである。

「さて、今後のことはまだわからない。まあ、とりあえず、お前も色々と落ち込んでいるだろうし、ゆっくりと休むといい」
(まあ、今後のことはゆっくりと決めていくか……)
「ええ、わかりました」

 お父様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 これで、計画はさらに一歩前進である。
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