心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗

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 私は、ロウィードとともに、レクント子爵家の屋敷の前まで来ていた。
 ドルビン様の心の声から聞いた時間的に、もうすぐ彼はここに来るはずだ。

「あっ……」
(あっ……来たのか)
「来たみたいね……」

 私が聞いていた通り、ドルビン様は屋敷までやって来ていた。
 ただ、ここで出て行っても、対して意味はない。彼が、何故この屋敷に来たのか今はまだ定かではないからだ。
 単純に、友達として会いに来たと言うなら、こちらはそれを咎めることではできない。なぜなら、私の隣にいるロウィードも友達として私に会いに来ているからだ。
 だが、私は知りたくもない事実を色々と知っている。だから、ここで待っていれば、あちらがわかりやすいことをすることもわかっているのだ。

「それじゃあ、行くか……」
(これで、現場を押さえられるな……)
「待って、ロウィード」
「え?」
(え?)

 もちろん、ロウィードはそんなことは理解してない。
 彼は真っ直ぐな人なので、この現場に出て行けばいいと思ってしまうのだ。
 こういう素直な所は、彼のいい所である。だが、今回はそれを止めなければならない。

「彼が、どうしてここに来たのか、まだわからないでしょう? だから、もう少し決定的な場面になるまで待っていた方がいいと思う」
「そういうものなのか?」
(そういうものなのか?)
「ええ、そういうものなのよ」
「なるほど……」
(よくわからないが、カルミラがそう言うならそうなんだろうな……)

 私の言葉に、ロウィードは納得してくれた。
 基本的に、彼は私の言葉をすぐに信じてくれる。それは、とても助かることだ。
 だが、時々、彼は詐欺か何かに引っかかったりしないか心配になる。素直で真っ直ぐな彼は、簡単に騙されそうで少し怖いのだ。

 最も、定期的に私と話していれば、その心配もないかもしれない。彼が変な人と話したりしたら、それが読み取れるからだ。
 いや、彼のことだ。私が読み取らなくても、自分で話してきそうである。それくらい、ロウィードは単純な男なのだ。

「それで、いつ出て行くんだ?」
(それで、一体いつ出て行けばいいんだ?)
「出て行くのは、二人がわかりやすいことをした時よ。例えば、抱き合ったりしていれば、浮気している証拠よね?」
「でも、中には入れないぜ?」
(中には入れないよな?)
「まあ、とりあえず待っておきましょう」
「ああ……」
(うん?)

 私は、ドルビン様がどういう風に浮気しているか大体知っている。
 そのため、ここで待っていれば、何れ確固たる証拠を見せてくれると知っているのだ。
 こういう時には、この力は本当に便利である。情報戦において、私はほぼ無敵といえるだろう。
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