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私は、セリクス様とともにシュタルド王国に向かっていた。
色々とわからないことは多いが、とにかくあちらの国まで行く必要があった。そうしなければ、私の命が危ないらしい。
「アムトゥーリ嬢は、どうやら禁断の魔法を使っていたようなのです」
「禁断の魔法?」
「ええ、シュタルド王国やバルメルト王国どころか、この辺りの国全てで禁じられている魔法というものがあるそうなのです」
馬車の中で、私はセリクス様がポールス先生から聞いたことについて聞いていた。
禁じられた魔法、そのようなものを私は知らない。聖女である私が一切聞いたことがない魔法があったという事実は、にわかには信じられないことだ。
「その禁じられた魔法が記された書物は、全て処分されているそうです。その使命を負った者達だけが、その存在を知っているとポールス先生はおっしゃっていました」
「それは……」
「代々、その任務は受け継がれているそうです。禁断の魔法を悪用しないと信用できる人物に……ポールス先生もその一人だった訳ですね」
セリクス様の表情には、焦りが見えた。
それは当たり前のことである。今彼が語っていることが本当であるなら、私達がその事実を知ったということには特別な意味があるからだ。
「……まさか、ポールス先生はその役割を私達に?」
「ええ、そう考えているようですね。だから、彼は私に話したのでしょうし、あなたに話すことを許したはずです」
「そうですよね……」
禁断の魔法の存在は知らなかったが、私から神器を操る才能を奪うことができるような魔法は普通ではない。とても強力で危険な魔法であるのだろう。
そのような魔法を抹消する。そこには、それなりの危険は伴うだろう。それだけではなく、細心の注意を払う必要もある。
その役割は、とても重要だ。国の垣根など越えて、人々の未来のために務めなければならない事柄である。
だからこそ恐ろしい。額から汗がゆっくりと流れていく。
「しかし、アムトゥーリは一体どこでそのような魔法を……」
「恐らく、個人の家に記録されていたのだろうと、ポールス先生は言っていました。偶々それを見つけて、アムトゥーリ嬢は利用したのだと」
「……彼女は、どうなるのでしょうか?」
「ポールス先生は、彼女の記憶を抹消したそうです。彼女が動き出したのは一年程前だったそうですから、念のために二年間の記憶は消したと言っていました」
「そうですか……」
ポールス先生の処置は、真っ当ではあるが恐ろしいものだった。
二年間の記憶がなくなるというのは、当然怖い。しかも、その間に犯した罪で裁かれることになるのだから、アムトゥーリ嬢にとってはかなり辛いだろう。
とはいえ、それは罰なのかもしれない。禁断の魔法に手を染めてしまった裁きが、彼女に下されたのだろう。
色々とわからないことは多いが、とにかくあちらの国まで行く必要があった。そうしなければ、私の命が危ないらしい。
「アムトゥーリ嬢は、どうやら禁断の魔法を使っていたようなのです」
「禁断の魔法?」
「ええ、シュタルド王国やバルメルト王国どころか、この辺りの国全てで禁じられている魔法というものがあるそうなのです」
馬車の中で、私はセリクス様がポールス先生から聞いたことについて聞いていた。
禁じられた魔法、そのようなものを私は知らない。聖女である私が一切聞いたことがない魔法があったという事実は、にわかには信じられないことだ。
「その禁じられた魔法が記された書物は、全て処分されているそうです。その使命を負った者達だけが、その存在を知っているとポールス先生はおっしゃっていました」
「それは……」
「代々、その任務は受け継がれているそうです。禁断の魔法を悪用しないと信用できる人物に……ポールス先生もその一人だった訳ですね」
セリクス様の表情には、焦りが見えた。
それは当たり前のことである。今彼が語っていることが本当であるなら、私達がその事実を知ったということには特別な意味があるからだ。
「……まさか、ポールス先生はその役割を私達に?」
「ええ、そう考えているようですね。だから、彼は私に話したのでしょうし、あなたに話すことを許したはずです」
「そうですよね……」
禁断の魔法の存在は知らなかったが、私から神器を操る才能を奪うことができるような魔法は普通ではない。とても強力で危険な魔法であるのだろう。
そのような魔法を抹消する。そこには、それなりの危険は伴うだろう。それだけではなく、細心の注意を払う必要もある。
その役割は、とても重要だ。国の垣根など越えて、人々の未来のために務めなければならない事柄である。
だからこそ恐ろしい。額から汗がゆっくりと流れていく。
「しかし、アムトゥーリは一体どこでそのような魔法を……」
「恐らく、個人の家に記録されていたのだろうと、ポールス先生は言っていました。偶々それを見つけて、アムトゥーリ嬢は利用したのだと」
「……彼女は、どうなるのでしょうか?」
「ポールス先生は、彼女の記憶を抹消したそうです。彼女が動き出したのは一年程前だったそうですから、念のために二年間の記憶は消したと言っていました」
「そうですか……」
ポールス先生の処置は、真っ当ではあるが恐ろしいものだった。
二年間の記憶がなくなるというのは、当然怖い。しかも、その間に犯した罪で裁かれることになるのだから、アムトゥーリ嬢にとってはかなり辛いだろう。
とはいえ、それは罰なのかもしれない。禁断の魔法に手を染めてしまった裁きが、彼女に下されたのだろう。
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